テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス- サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースとなっているISO9001に沿って行われています。厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。
以下、厚労省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン(以下ガイドライン)」を紹介していきます。
(つづき)
3.3.3 訓練環境の整備
【指針】
民間教育訓練機関は、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の提供に当たり、職業訓練を実施する環境を、以下の項目に留意して整備する。
(1)安全衛生管理
(2)職業訓練の受講支援策の整備
(3)民間教育訓練機関外の人的及び物的資源の活用
(注記) 職業訓練を実施する環境には施設、設備及び機器、教材等が含まれる。
【指針の補足説明】
1.安全衛生管理
職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を提供する訓練環境として安全衛生を第一とし、労働安全衛生法等の安全衛生に関する法令に基づき安全衛生対策を講じます。また、同法令に定める検査等の結果を記録するとともに、受講者はもとより、講師及びスタッフ等にとって安心で安全な環境づくりに努めます。
そのために、安全衛生管理に係る実施計画及び実施結果に伴う改善を定期的に行います。
また、事故又は災害等の発生時の再発防止に向けた取り組みの手順(原因の調査、問題点の把握、是正処置及び予防処置等)を明確にします。
2.職業訓練の受講支援策の整備
受講者が安心で安全に受講できるよう、以下の例を参考にして職業訓練を実施する環境を整備するとともに、訓練効果を高めるための環境の整備に努め、常に工夫及び改善するための方策を講じます。
また、受講者等からの苦情や提案に応じるために相談窓口を設置し、手紙、電話、電子メールによる受理の仕組みや処理方針等を定めます。
(職業訓練を実施する環境を改善する手順及び方策の例)
① 物品管理台帳、ソフトウェア管理台帳等による訓練環境の管理(現況調査、使用状況調査等を含む)
② 関係者による安全衛生活動及び関係者間での活動記録の共有化
③ 施設、設備及び機器等の整備基準(相談室、男女別の更衣室及びトイレ、喫煙場所等の設置、安全装置、安全通路の確保、段差等の解消(バリアフリー) 等の障がい者への配慮等)
④ 苦情相談窓口の設置
⑤ カリキュラムに沿った講師による指導案や進捗管理表の作成
⑥ 訓練日誌への記録
⑦ 受講者へのアンケート等
(訓練効果を高める環境の整備の例)
① 受講者一人当たりの人的及び物的資源の割り当て数(教室及び実習場の面積、講師及びスタッフ等)の調整
② プロジェクター、資料提示装置等の活用による受講者の見やすい環境の整備
③ 受講者の机の配置の工夫
④ 支援ツール(自習のための講義ビデオの貸出、ワイヤレス音響装置の導入等) の整備
(受講者に対する個別支援の例)
① キャリア・コンサルティングの実施
② メンタルヘルス相談の実施
③ ハラスメント相談の実施 等
3.民間教育訓練機関外の人的及び物的資源の活用
民間教育訓練機関の管理外にある人的及び物的資源を活用する場合は、以下の例を参考にして、職業訓練を実施する環境に関する最小限の要件を明確にし、この要件を満たす人的及び物的資源を準備することができるよう、当該資源を管理する機関と調整します。
(要件の例)
① 学習歴、保有資格、実務経験等
② 教室又は実習場の面積、照明、空調、トイレ、更衣室、洗面所、喫煙場所、休憩室、昼食場所、相談室、機器等への配線設備、マイク等の音響設備等
③ 機器等の台数又は個数、機能、性能等
④ 机、椅子、ホワイトボード、プロジェクター等
⑤IT 教育、通信教育、遠隔教育を実施するための要求仕様(インターネット接続、ブロードバンド環境、パソコンの性能、学習に必要なソフトウェア等)
⑥ ソフトウェアの使用許諾契約、ソフトウェアの種類及びバージョン
⑦ 安全衛生管理活動の手順、事故又は災害等発生時の対応方法等の確認
⑧ 障がい者への配慮等
【公的職業訓練等受託等に向けた質保証の取組例】
・訓練を適切に実施するために必要な施設を設けること
(例)床面積:受講者 1 人当たり 1.65 ㎡以上(教室の場合)
受講者が快適に受講できる照明、空調及び換気、トイレ(男女別)、洗面所等禁煙又は分煙対策が施されている
・訓練を適切に実施するために必要な設備を用意すること
3.3.4 職業訓練の実施
【指針】
民間教育訓練機関は、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の提供に当たり、準備した人的及び物的資源を活用して、訓練コースごとの目標を達成できるよう、以下の点に留意して訓練期間中の運営を行う。
- 職業訓練の運営体制
- 職業訓練の実施状況のモニタリング及びその評価を踏まえた受講者への支援
- 講師及びスタッフの行動規範
- 受講に際してのオリエンテーション
- 修了証等の発行等
- 帳簿等の保管及び管理
【指針の補足説明】
1.職業訓練の運営体制
安心して受講できる環境を提供するため、訓練期間中の運営体制を以下の例を参考にして定めます。
(運営体制の例)
① 職業訓練の実施状況を的確に把握し、職業訓練が正常に行われるように管理するため、訓練期間中の責任者を配置する。なお、責任者が訓練実施施設に常駐しない場合は、訓練実施施設に事務を担当するスタッフ(事務担当者)を配置し、緊密な連絡報告体制を整備する。
② 事務担当者は、訓練期間中に訓練実施施設に常駐し、職業訓練の進捗管理や受講状況の確認等を行う。また、訓練期間中の手続き等に関する問い合わせに応じる。
③ 受講者の相談窓口(キャリア形成相談、就職相談、苦情相談等)、相談方法を明確にし、周知する。
④ カリキュラム、訓練内容、受講者数を考慮し講師等を配置する。
2.職業訓練の実施状況のモニタリング及びその評価を踏まえた受講者への支援
職業訓練の実施状況のモニタリング及びその評価を行い、その結果を踏まえた支援を行います。
具体的には、「3.4 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)のモニタリング」及び「3.5 職業訓練サービスの評価」を参照してモニタリング及びその評価を実施します。
さらに、評価の結果に対して、受講者個々の特性、習得状況に応じ、以下の例を参考にして、適切かつ継続的な支援(情報提供や相談援助等)を実施します。
(受講者に対する支援の例)
① 必要に応じて、補習又は補講等を行う。
② 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の提供期間中又は訓練終了後において、当該職業訓練サービス又はその他の職業訓練サービスのカリキュラム、資格等、訓練課題による評価事例、資格取得者数等、職業訓練に関する情報提供を行う。
3.講師及びスタッフの行動規範
訓練コースの運営に当たり、以下の例を参考にして講師及びスタッフの行動規範を定めます。
(留意事項の例)
① カリキュラムどおりに職業訓練を実施する。
② 個々の受講者が協調性を持ち、訓練目標の達成に向けて職業訓練に集中できる環境づくりに努める。
③ 受講者からの意見や要望に真摯に対応する。
④ 受講者の個人情報の取扱いには厳正を期す。
⑤ 人権を尊重し、ハラスメント等の行為を厳に慎む。 等
(つづく)平林