基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 49 | テクノファ

投稿日:2021年3月24日 更新日:

テクノファで行っているキャリアコンサルタント養成講座は、民間教育訓練機関におけるサービスの質の向上のガイドラインである「ISO29990(非公式教育・訓練のための学習サービス- サービス事業者向け基本的要求事項)」のベースとなっているISO9001に沿って行われています。厚労省はISO29990を踏まえ、民間教育訓練機関が職業訓練サービスの質の向上を図るために取り組むべき事項を具体的に提示したガイドラインを発表しています。

以下、厚労省「民間教育訓練機関における職業訓練サービスガイドライン(以下ガイドライン)」を紹介していきます。
(つづき)
第4章 民間教育訓練機関のマネジメント
本章では、3 章で示した職業訓練サービスの質の向上を目指すための基盤となる「民間教育訓練機関のマネジメント」について具体的な取り組みを示します。
4.1 マネジメントシステムの確立
【指針】
民間教育訓練機関は、受講者や関係者からの信頼を得て、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の質を向上させるために、以下のことを実施する。
マネジメントシステムのためのPDCAサイクルの導入
マネジメントシステムに関する責任者の任命
マネジメントシステムの確立

【指針の補足説明】
(1) マネジメントシステムのためのPDCAサイクルの導入
このガイドラインのマネジメントシステムの適正な管理と運営の基本ルールとして、PDCAサイクル(計画(plan)、実行(do)、評価(check)、改善(act))を導入し、職業訓練サービスに関する訓練コースの設計から実施、評価に至る業務プロセスへの適用関係を明確にします。また、必要に応じてプロセスごとに、PDC Aサイクルを適用します。

(2) マネジメントシステムに関する責任者の任命
経営陣の中からマネジメントシステムを適切に運用する責任者を 1 名任命します。責任者は、マネジメントシステムの構築及び実施並びにその有効性を担保するため の継続的な改善に係る責務とともに、マネジメントシステムが有効に機能している 証拠を示す責務を負います。

(3) マネジメントシステムの確立
(2)の責任者は以下について取り組み、マネジメントシステムを確立します。
① 業務プロセスの運用及び管理のいずれもが効果的かつ効率的であることを確認するために必要な判断基準、取組方法を示します。
② 業務プロセス間の相互関係と相互作用を分かりやすく図示して、運営構造を明確にするとともに、相互作用に関する記録を行います。
③ 業務プロセスの運用及び点検のために必要な事業資源(人、物、情報)を利用できる環境を整えます。
④ 業務プロセスの検証に必要な測定、分析を行います。
⑤ 事業計画及び品質目標を達成するために、必要な改善処置をとります。
⑥ 確立したマネジメントシステムの運用状況を文書により記録するとともに、その記録を民間教育訓練機関の講師及びスタッフがいつでも閲覧できる手順を確立します。
⑦ 民間教育訓練機関の関係者に対して、当該マネジメントシステムが理解されるよう部内説明会又は部内研修等による必要な周知を行います。

(運営に関わる関係者の例)
ア 民間教育訓練機関の管理者
イ 講師
ウ カリキュラムやテスト等の設計者
エ 組織内の関係スタッフ 等

4.2 事業戦略及び計画
【指針】
民間教育訓練機関は、マネジメントシステムを運用するに当たり、事業計画を策定し、文書により記録する。事業計画には、経営理念と経営方針及び経営目標、経営組織の説明、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を提供する上で重要な民間教育訓練機関の品質方針を記述する。

【指針の補足説明】
事業計画を作成するに当たり、以下の項目を参考とし、事業計画の内容を検討します。
(項目の例)
① 提供する職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の信頼性と品質を向上させるための経営理念と経営方針及び経営目標
② 経営理念と経営方針及び経営目標を具現化するために策定された品質方針

(品質方針策定の視点例)
ア 職業訓練サービスを利用する受講者、事業所側からの視点
イ 蓄積された知識やノウハウ等を組織全体で共有、活用するナレッジマネジメント(※)の視点
ウ 講師及びスタッフの人材育成の視点エ 業務プロセスの視点
オ 財務及び収支の健全性との均衡等の視点     等
※ ナレッジマネジメント:知識を共有して活用することで、新たな知識を創造しながら経営を実践すること。

③ 経営理念と経営方針を達成するための経営戦略の策定とその見直し期間(見直し間隔)、職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)の品質方針を担保するための見直しや改善の実施状況の公表
④ 定期的な市場分析を踏まえた職業訓練サービスの動向に対応した事業分野の特定等

(市場分析の例)
ア 産業又は業種ごとの職務と仕事の実態及び訓練ニーズ
イ 地域の雇用失業情勢
ウ   他の民間教育訓練機関の同一職業訓練サービスへの参入又は撤退等の状況等
エ 職業訓練サービスを提供するための組織及び運営構造
オ ニーズ分析、事業企画、職業訓練サービスの提供、評価等を含む、職業訓練サービスを提供する上での重要なプロセスとその指標
カ 職業訓練サービスに関する関係者と協力するためのネットワークの構築
キ 職業訓練サービス(キャリアコンサルタント養成講座)を提供するための業務委託計画     等

4.3 マネジメントシステムに関する情報の共有等
【指針】
民間教育訓練機関は、講師及びスタッフ(協力者を含む)に対して確立したマネジメントシステムを説明し、その運用の改善に関する意見を求めるための仕組みと手順を明確にする。

【指針の補足説明】
マネジメントシステムについて、講師及びスタッフ(協力者を含む)にその内容を説明するとともに、その運用の改善に関する意見を求めるための手順を、以下の項目を参考にして確立します。
(1) 意見提出の機会の設定
職業訓練を円滑に進めるために、内部及び外部に対して、定期的及び必要に応じて会議等を開催する等、情報の共有や改善に関する意見の提出の促進を図ります。会議は、開催ごとに目的及び目標を明確にした上で、単なる報告会とならないように留意し、議論する事項の整理や絞り込みを行います。緊急を要する場合を除き、事前に議題の案内と関係資料の情報提供を行います。
提供した情報を補完して業務の効率化を図るために、関係者が容易に確認することができる掲示板や予定表等を活用して確実に連絡できる仕組みを準備します。

(2) 意見提出の効率化及び円滑化
必要に応じて、相互に情報を交換できる通信ネットワーク等を構築し活用する等、マネジメントシステムに関する円滑な情報交換を可能とする環境整備に努めます。

(3) 公平かつ平等な意見提出の機会の提供
意見提出の機会は、組織内の講師及びスタッフ等の関係者に公平かつ平等に提供します。性別等による差別を排除し、関係者の間で差別感がないよう配慮します。

(つづく)平林良人

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