基礎編・理論編

キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリング3 I テクノファ

投稿日:2020年3月30日 更新日:

本項を記している2020年3月末は、世の中全部が新型コロナウィルスの猛威に席捲されていて、この土日については東京では都知事が不要不急の外出を控えるように呼び掛けています。キャリアコンサルタントは先達の研究者や実践家が遺してくれた理論・思想や技法を学び、そして実践していますが、誰もが自由に動き回ることさえできないこのようなときにキャリアコンサルティングはどのような意味を成して、どんなことができるのかを考えることはとても大切だと思います。それぞれのキャリアコンサルタントが考えられたことを、このホームページを利用して発表していただきたい。経済活動はもとより普通の生活さえままならない危機的状況の中でキャリアコンサルタントが貢献できること。これをしっかりとらえてこそのキャリアコンサルティングではないでしょうか。

さて、これまで2回にわたってキャリアコンサルティングとキャリアカウンセリングの違い、そして、キャリアコンサルティングとここで用いられるカウンセリング技法との関係性について記してきましたが、ここからはカウンセリング技法について概説します。なお、ここに記す内容は、1995年大学院での國分教授カウンセリング概論講義の私ノートと國分康孝1996年「カウンセリングの原理」誠信書房を参考にしました。また、カウンセリング技法の捉え方は同書に記される次の解説をそのまま用いています。『面接目標達成のために、カウンセラーがクライエントにどういう反応を重ねていくか。これがカウンセリングの技法論である』『カウンセリングの技法は理論・哲学・パーソナリティが三位一体になって具象化した反応のことである』

1.技法概説のまとめ

今回、これまで学んできたキャリアコンサルティングに用いる各種カウンセリング技法について振り返ってみましたが、私自身は、キャリアコンサルティングには25年前に学んだカーカフ(Robert Carkhuff)のヘルピング技法(カーカフは自身のカウンセリングをこのように称した。そして、カウンセラーをヘルパー、クライエントをヘルピーと呼んだ。)が比較的適用しやすいと考えています。これは、次の理由からです。

ヘルピングではヘルパーとヘルピーについて固定的ではなく助けたり助けられたりする関係として捉えていること。最近でこそカウンセリングでは関係性をその中心概念に据え、さらに、その関係性についても社会構成主義的な観点からカウンセラーとクライエントの対等性を重んじるようになってきています。しかし、関係性対等性重視という点において両者は共通していますが、カウンセリングでは心理療法やカウンセリングにおける専門性ということがキーファクターとされていることに対して、ヘルピングでは上司部下、教師生徒、看護師患者等の人への援助が必要な場面への適用を意図しているところに違いがみられます。このような観点から、私はヘルピング技法がキャリアコンサルティングには適用しやすいと考えています。

また、一般的にカウンセリングの理論や技法ではカウンセラーの行うことがテーマとされていますが、クライエントの行うことについて語られることはありません。一方、ヘルピング技法ではヘルパーの行うことだけでなくヘルピーにおいてもヘルパーの行う技法に対してヘルピーがなす反応を示しめしています。言い換えると、ヘルピングでは、援助を一方通行のものとしてではなく、ヘルパーとヘルピーの相互の関わり過程として、しかも段階的に示しているところに特徴があります。この援助段階は、キャリアコンサルタントが担当しているキャリアコンサルティングの段階と、そこで用いる望ましい技法のヒントを得るための手がかりとして活用できるので有益と思われます。下記に「カウンセリングの原理」P125に掲載される「ヘルピング技法における援助段階表」を引用するので是非ご参照いただきたい。

援助過程の段階
(事前段階) (第1段階) (第2段階) (第3段階)
ヘルパー かかわり技法 応答技法 意識化技法 手ほどき技法
ヘルピー 参 入 自己探索 自己理解 行動化

2.技法概説

キャリアコンサルティングとキャリアカウンセリング1に示した各技法を前述のヘルピング援助過程の段階にあてはめて概説します。なお、ここに記す各技法はアレン・アイビーのマイクロ技法の階層表に示されるものを用いています。

これは、ヘルピング技法とマイクロ技法はともに折衷主義に立つものですが、前者は現存の理論技法をカーカフが融合再構成したもの、後者はアイビーが能動的に並べかえたものなので、ヘルピング援助過程の段階の概説にはマイクロ技法の各技法を当てはめる方が分かりやすいと考えたからです。

(1)事前段階 かかわり技法

ヘルパーとヘルピーのリレーションづくりに用いる。ヘルピングでは、かかわりへの準備、親身なかかわり、観察、傾聴の4つの技法が示されますが、これらは下記のマイクロ技法にあてはめられると考えられます。なお、③~⑥についてはマイクロ技法では「基本的傾聴の連鎖」としてくくっています。

①・かかわり技法 クライエントとどのようにしてリレーションを作っていくのか。

(例)「よく来られましたね」「どうぞ、どうぞ」

②・観察技法:非言語からヘルピーの心の状態を探る。

(例)「手を解く」「上着を脱ぐ」「近くに座る」「目線」「表情」「声の調子」「座り方」「服装」などを観察することで、「櫛を入れないほど落ち込んでいる。」を推し量る。

③・閉ざされた質問:ヘルピーとのリレーションを作り、情報を収捨する。

(例)「学校は面白いですか」

・開かれた質問 :ヘルピーとのリレーションを作り、情報を収捨する。イエス、ノーでは応えられない質問なので口のおもい人には通用しないので、ヘルピーの状況や目的とするところに焦点を当てて尋ねる。

(例)「学校はどう?」

④・励まし技法:ヘルピーのキーワードを繰り返す。

(例)「それで―」「例えば―」

⑤・言い換え技法:ヘルピーの発話のエッセンス(ポイント)を感性と論理性の両面から推し

量る。

(例)それは、—–ということでしょうか」

⑥・感情の反射: ヘルピーのことばに潜む感情や意味をつかむ。

(例)「今、お忙しいですか」というヘルピーの発話からヘルパーは「ぼくに何か相談したいの?」と推し量る。

⑦・意味の反射:ヘルピーの言葉に潜む価値観に気づく。

(例)「離婚したんです」というヘルピーの発話から「あなたにとっては子供が大切なんですね」と推し量る。

(続く)                キャリアコンサルタント 1級技能士 上脇 貴

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