実践編・応用編

キャリコンサルタント実践の要領 64 | テクノファ

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前回に続きキャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、スーパービジョンのモデル実施及びアンケート・実施報告書の分析の部分の、アンケート結果を用いたスーパービジョン事例報告から記述します。

④アンケート結果を用いたスーパービジョン事例報告
スーパービジョンに関する理解を深めるために、スーパービジョンに関係する三者 (相談者とキャリアコンサルタントとスーパーバイザー)のアンケート・報告書の結果を用い、 継続的な対応が行われた事例を一件報告する。

事例作成に際し、まずキャリアコンサルティングが2回行われたケースを抽出し、キャリアコンサルティングの効果に係るアンケートの「今回のコンサルティングに関する感想」の1回目と2回目の、それぞれの合計得点を計算した。この10項目は「今回のキャリアコンサルティングは自分の役に立った」「自分自身の事や今までの行動を振り返ってみることができた」など10項目から構成され、「1:そう思わない、2:あまりそう思わない、3:どちらでもない、4:ややそう思う、5:そう思う」の5件法で回答が求められた。つまり、得点が高いほど「そう思う」と認識している。1回目と2回目の得点差がプラス方向に最も大きく変化したケースを、キャリアコンサルティングの好事例として捉え事例対象とした。

次に、抽出したケースに関して、キャリアコンサルタントの対応とスーパーバイザーのかかわりに関して、アンケートや報告書に記載されたデータを用い、集約した。事例としてまとめるにあたり、個人特定ができないよう配慮し、多少の概念化や脚色をしたうえで作成した。以下で、事例のポイントを説明。
・相談者は女性20代、「スーパーバイジー(キャリアコンサルタント)」 は経験年数3年未満であり、組織内でのキャリアコンサルティングを担当している。
・相談者は、1回目の面談では職場の人間関係に関して相談した。その際に、キャリアコンサルタントに対し「自分の欠点、問題点を気づかせてくれた。それをどうやってクリアするか考えるようになった。」という感想を持った。この面談はこの時には一回で終了したが、半年後、相談者の様子や状況が気にかかったスーパーバイジーが相談者に声をかけ、2回目の面談が設定された。

・この2回目の面談直前に、1回目のスーパービジョンが行われた。スーパーバイザーとは対面での個別形式であり、ケース記録が使用された。キャリアコンサルタントの期待は「カウンセリングの方向性があっていたのか、対応はよかったのか、を確認したかった。承認してもらいたかった。どこが的確でなかったか、スーパーバイザーならどういう言葉をかけるかなど、具体的なアドバイスが欲しかった。」であった。

・1回目のスーパービジョンで、スーパーバイザーが考えたことや行ったことは、『ケース記録からは、バイジーの思い込みや表面的な理解で進めてしまう部分が見られた。ただし、記録の中で「~かもしれない」などの自身の振り返りが多く見られ、記録を作成することでバイジー自身の気づきは深まっている様子であった。相談者が主体的に動けているときとそうでないときのギャップなど、よく観察している部分もあることに気づいてもらった。課題や目標などを明確化していくプロセスを、共有することが重要であることを理解してもらった。コミュニケーションが上手くいかなかった例を話してもらい解決策をと考えているようであったが、うまくいった例などと比較していく方法も有効であることを理解してもらった。』であった。

・終了後のキャリアコンサルタントの感想は、「方向性は間違っていないことの確認ができ安心した。また、自身が気を付けるべきことが明確になり、次回面談への自信がついた。」であった。
・この後、2回目の面談が実施された。相談内容は、今後の生活設計、能力開発、キャリアプラン、メンタルヘルスに関する事と前回よりも広がりのあるテーマとなっていた。 相談者は終了後、「自分のこれからの方向性を明白にできた」との感想であった。また、1 回目から2回目の感想で、特に高まった項目は、「自分の考えを整理することができた、 自分に必要な情報やアドバイスが得られた」であった。

・2回目の面談後に、2回目のスーパービジョンが行われた。今回もスーパーバイザーとは対面での個別形式であり、ケース記録とキャリアシート等が使用された。スーパーバイジーの期待は「前回のアドバイスを心がけて面談をしたので、その評価。特に相談者とのかかわりと方向性。」であった。
・2回目のスーパービジョンで、スーパーバイザーが考えたことや行ったことは、『今までの経緯と今回の見立てを纏めてきてくれたので、これまでを共に確認していった。前半は相談者のペースで、前回での課題同様、分かったつもりになっている部分があった。キャリアコンサルタントが例をだして答えさせるような場合もあった。こうしたバイジーのかかわりかたの課題を、問いかけながらテーマとした。中盤からは、相談者と向きあい興味をもって深める質問を行えていた。後半にかけとても良いプロセスとなっていることを承認した。表面的な理解で進めてしまい深めることができず、流されてしまうこと、コンサルティング全体をマネジメントできていないこと、など現時点の課題を共有した。』であった。

・終了後のスーパーバイジーの感想は、「面談の流れについて承認してくれて自信を持てた。相談者に対する考え方や具体的対応の仕方について、今後に役立つアドバイスを頂けたのがよかった。また自分では気づかなかった点の指摘もあり気付きが多かった。」であった。
・本事例に関し、キャリアコンサルタントとしての課題認識をアンケート結果から確認すると、「意思決定支援、介入・介入評価、情緒的気づき、目標・方策の設定、プロセス構築」を選択していた。スーパーバイザー側の記録を確認したところ、そのなかの「目標・方策の設定、プロセス構築」に関しては、スーパーバイザー側も同様に課題認識として捉えていた。また、「問題把握、CL評価」 はスーパーバイザー側のみが課題認識として捉えていた。

・以上のように、本事例ではスーパービジョンに関する理解を深めるために、スーパービジョンにおける相談者とスーパーバイジーの関係、スーパーバイジーとスーパーバイザーの関係の一例が示された。スーパーバイジー側にとっての課題認識とキャリアコンサルタント 側から見た課題認識の両面があり、その両面性を意識することはスーパービジョンにとって重要な視点になると考えられる。

(つづく)木下 昭

-実践編・応用編

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