実践編・応用編

キャリコンサルタント実践の要領 80 | テクノファ

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前回に続き、キャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、組織視点を組み込んだキャリアコンサルティングの役割り拡大に対応するスーパービジョンについて説明します。

これに対してキャリア自律の時代、個性化を通したキャリア開発・キャリア形成に向けた支援がキャリア支援の中心に変化してきている。多様な個人を雇用し、活用し、多様な個人が相互に啓発し合うことを通した組織活力の拡大が新しい組織開発に変わり、その組織開発のコーディネートを行う役割をキャリアコンサルタントが担うようになってきている。またモチベーション管理から、個々の従業員のキャリア充実や成長に向け、個人が当事者意識をもち、キャリア充実を通して、組織の活性化に貢献できるよう、個の支援を行うことがモチベーション開発としてキャリアコンサルタントの重要な役割になってきてもいる。

このような組織の支援はモチベーション管理という組織視点から、個々の従業員のキャリア充実支援と個性化を通した組織の活性化への貢献というモチベーション開発を促す個人視点に変化してきている。筆者はこのような個の支援を中心とした組織の支援をエンプロイメンタビリティ、多様で自律的な、個性化を通した組織への貢献に意欲と意識をもつ社員を雇い続けることのできる組織の力と提起してきた。従来からも人事は一人ひとりの従業員が能動的・主体的にキャリア自律を目指して活躍できる仕組みを構築してきている。社内公募、社内応募、自己申告、キャリア面談等であり、セルフ・キャリアドックにあるその他の援助もまた、キャリア自律、キャリア充実に向けた組織の支援のメカニズムの構築と活用に他ならない。

これらが、キャリア支援、キャリア充実に向けて、どのように総合的な取り組みと仕組みとして体系化され、運用されるかが今後のキャリアコンサルタントの重要な役割であり、花田のキャリアアドバイザー活動の7段階モデルの第6段階、第7段階のステージに該当する活動である。キャリアコンサルタントの活動の①カウンセリング的な対応、②キャリア開発・形成のレベルでの対応、③組織レベルへの介入と協業、④組織の活性化と変革という4ステージがこの7段階を構成している。

2.企業組織における個人支援の新たな展開
この流れで明らかなように、キャリアコンサルティングの学びにおいては組織視点という領域を組み込んだ新たなスーパービジョンが必要となってきている。従来型のキャリアカウンセリング活動に加えて、キャリアコンサルティングには、働き方改革の対応支援、ライフキャリアの長期化に伴う業務・職務の陳腐化に対応するリカレント教育支援、職業能力開発の経営・組織視点に対応する提言や具体的インフラ作りと運営の支援、面談実施だけにとどまらない教育研修の実践やそのフオローといった支援、人事や教育部門との協業の実施などの各種支援活動が求められ、その学びの場としてのスーパービジョンを構築する必要が生じてきている。

キャリアコンサルティングの重要な役割は、長いライフキャリアを通した、働く人たちのキャリア開発・形成支援に他ならない。働くことに悩みを持ち、これからの職業生活の先行きなどに不安を感じておられる方々に対する寄り添い、ラポール、傾聴重視の面談は勿論重要であるし、キャリアコンサルティングの基礎をなしている。2015年に改正された職業能力開発促進法では、キャリアコンサルティングを「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」と定義し、事業主に対し、その組織で働く人たちに対して、キャリアコンサルティングの提供を、努力義務として課している。この改正法により、企業組織で働く人たちに対しては、悩み不安に対応する支援にとどまらず、組織の中でのキャリア開発に係る相談・支援・指導の支援提供が組織に対して努力義務として課せられ、さらに組織の活性化につながる、個々人の特性を活かした、職場の仲間や、組織への貢献の道筋をつけることが、キャリアコンサルタントに求められる時代になってきている。それ故、その対応に関する学びをスーパービジョンの中に組み込むことが必要とされているのである。それでは次に、一人ひとりの従業員の悩みや不安といったカウンセリングアプローチが対応していた個への対応に加えて、どのような新しい個支援の動きが出てきているかを検討してみよう。

(1)カウンセリングに加えたキャリア開発と形成への支援の重要性
キャリアコンサルティングの役割り拡大に関して、第一節では組織の活性化などへの影響の重要性を強調した。しかしながら個人視点への対応に関しても、キャリアコンサルタントは従来の心の不安、悩みに寄り添う、よろず悩み事相談といった視点をベースに置く面談に加えて、より具体的なキャリア開発、キャリア形成への支援を行うことが求められるようになってきた。日常業務を通して、具体的に職務・業務を通して職場の中での役割を獲得し、中長期的な視点で個々人のキャリア形成を構築できるかが重要なキャリア開発・形成のテーマとなり、それに対する支援が必要となってきている。それを可能にするには、現場における業務の流れ、業務間の関連性、業務をまわしていくにあたっての基礎的なスキルや知識といった現場の理解とその支援が重要である。現場における0JTのメカニズム、職務・業務の発揮に必要なスキルや知識、職務・業務がどのように関連し、それらを理解することが重要である。キャリアカウンセリングに加えた、このような業務を中心としたキャリア開発の流れの理解とそれを基にした支援はこれからのキャリアコンサルタントの基本支援サポートであり、それに対するスーパービジョンの提供は重要である。
(つづく)A.K

-実践編・応用編

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