実践編・応用編

キャリコンサルタント実践の要領 87 | テクノファ

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キャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、組織視点を組み込んだキャリアコンサルティングの役割り拡大に対応するスーパービジョンを説明します。

4.組織視点と新しい個の視点の調整
新たな個のキャリア開発と形成に向けたキャリアコンサルタントが対象とする、個人支援の対象領域の解説を行った。従来型のカウンセリングがカバーしていたコンテンツに加えて、個の自律の視点からみたキャリア開発と形成に向けた支援領域を検討した。次にこの個人視点に加えて、組織視点と個の視点の新たな調整を解説する。

(1) 何故組織の視点と新しい個の視点の調整か:個の自律・個性化を通した組織の活性化
組織の視点ともいえる組織の活性化とキャリア自律の視点からみた個人のキャリア形成の視点の調整は、おそらくキャリアコンサルタントの新しい活動、能力拡大の対象としては、従来のキャリアコンサルティングの対象テーマとしては異なるものである。それ故、この調整はキャリアコンサルタントのスーパービジョンとしても重要な学びの対象といえる。まずここで是非、問題提起をしたいのは、組織の視点、組織の活性化といっても、それは従来の組織の視点からみた生産性向上や、売り上げ・利益の拡大ということを意味しているわけではない。スーパービジョンにおいてもその組織視点の理解をまずしっかりと行うことが重要と考える。

キャリアコンサルタントが対応する組織の活性化とは、個々人が能動的、主体的に個人のキャリア開発を実践し、 一人ひとりの個の得意技や強みを活かしたうえでの組織の元気と活性化への貢献と寄与に他ならない。従来の生産性や売り上げ、あるいは利益の拡大とは一線を引いた組織の活性化である。キャリア充実を求め、仕事に向かって元気に活動し、キャリア開発を行うという総合的な活動プロセスが、個性化をベースとした組織の活性化につながる新組織活性化指標の構築と活用があって、初めて個の自律をベースとした組織の活性化が可能となる。

上記の関係をまとめると心の不安・悩みを対象としたキャリアコンサルタントの活動から始まり、 そこからとりあえずの第一歩の踏み出しへの準備、そして一歩の踏み出しをベースとして、それをキャリア開発・形成支援につなげ、さらにはそのベース、即ち職務・業務の把握と実践を通して、個性化が促される活動支援を想定する。そしてキャリアコンサルタントはとりわけ、一歩の踏み出しから、キャリア開発、そしてキャリア開発において個性化を発揮し、さらに個性化をベースに居場所を構築し、その居場所が徐々に不都合な現実によって居心地が悪くなることから新たな居場所・行き場所を構築し、その連続的な対応が生き場所となることを想定する。

この一連のプロセスは個人にとっての生き場所作りだけにとどまらず、個性化を通した組織の活性化にもつながると考えている。筆者は個々人の元気の度合をキャリア充実に対する納得度ととらえ、一人ひとりの従業員が個性化をベースに、自己の組織の中における心理的な居場所を確立することから、組織活性化が生み出されるという視点をベースにおいている。そしてこの組織活性化を生み出すプロセスに介入し結果を出すよう努力することがキャリアコンサルタントの役割りととらえている。いわば組織の視点から見た組織の活性化ではなく、個人の視点から見た組織の活性化の提起であり、その個人のキャリア充実度の拡大と納得度の向上に向けて、組織が多様な個に対する合理的配慮を組み込んだ仕組みを構築し、個人のモチベーション開発を促す支援がキャリアコンサルタントの新たな役割りとなるのである。このような新しい、個の視点から見た組織の活性化指標こそが、セルフ・キャリアドックで提起されている全体報告が求めている組織の在り方であり、この関係性をしっかりと学ぶことが、セルフ・キャリアドックにある全体報告の理解につながることになる。

(2)MBO-S、パフォーマンスマネジメント(開発)の展開の活用
個の成長・キャリア開発と組織の支援の調整の仕組み化は、これからのキャリアコンサルタントの重要な支援活動となろう。キャリアコンサルタントの効果的な支援の仕組み化とは、この個の視点と組織の視点の調整、融合に他ならない。第三節・第二項では、この調整をライフキャリアインティグレーションと概念化した。キャリアコンサルタントの活動で、従来はその活動対象とはいえなかった個々人の能動的・主体的な自分らしさの発揮・個性化を通したキャリア開発・形成と業務目標達成の調整が新たな支援活動として位置付けられるとともに、それがこれからのキャリアコンサルタントの重要な役割となる。既に述べたように、個々人の様々な活動を、プライベートライフと業務という二分化ではなく、組織目標達成にむけた業務において、どのように個々人の強みや得意技、あるいは自分らしさを発揮し、個性化を通して組織に貢献できるかに対する支援が個の元気・キャリア充実と組織の活性化の調整を果たすことになる。これからのキャリアコンサルタントにとっては、個人の成長・個人の「仕事作り」の支援を行い、それを現場の業務や職務を通して自分のキャリア充実に活かすという調整・融合・統合を通して、積極的な個人の主体的活動により、組織活性化を促すプロセスづくりが重要な活動役割となってくる。その調整・融合プロセスを「統合」という概念で包括しており、個性化の発揮による積極的な個人の主体的活動により組織の活性化を促す仕組みが作りと支援がキャリアコンサルタントの役割りということができる。
(つづく)A.K

-実践編・応用編

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