キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う上で係りがある、働きかた改革を推進する多様で柔軟な働きかたを可能にする制度・施策を説明してきました。前回は様々な事情を抱えて、多様で柔軟な働きかたを必要としている、これまで説明してきた制度・施策の対象者である働く人たち、その人たちを具体的に支援する立場にある支援者やキャリアコンサルタントなどに対して必要な情報を提供している厚生労働省のサイトのひとつ「治療と仕事の両立支援ナビ」について説明し、そのサイト内の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」について厚生労働省資料
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/dl/guideline.pdfに沿って説明しました。
今回はその続きから説明します。
(3)事業場等における現状と課題
健康診断に基づき健康確保に向けた取組が行われてきた。近年では、労働者の健康確保や疾病・障害を抱える労働者の活用に関する取組が推進されているが、支援方法や産業保健スタッフ・医療機関との連携について悩む担当者も少なくないことから、労働者の治療と仕事の両立支援に取り組む企業に対する支援や医療機関等における両立支援対策の強化も必要な状況にある。
2 治療と仕事の両立支援の位置づけと意義
(1)事業者による両立支援の取組の位置づけ
労働安全衛生法の労働者の健康確保対策に関する規定の具体的措置としての健康診断の実施及び医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは就業上の措置の実施を義務付けるとともに、日常生活面での指導、受診勧奨等を行うよう努める。これは、労働者が、業務に従事することによって、疾病を発症したり、疾病が増悪したりすることを防止するための措置などを事業者に求めているものである。
労働安全衛生法では、事業者は「心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者」については、就業を禁止するとあるが産業医等の意見を勘案して必要な措置を講ずることによって、就業の機会を失わせないように慎重に判断する。
同法では、中高年齢者等の特に配慮を必要とする者については、適正な配置を行うように努めなければならないとされている。
事業者が疾病を抱える労働者を就労させると判断した場合は、業務により疾病が増悪しないよう、治療と仕事の両立のために必要となる一定の就業上の措置や治療に対する配慮を行うことは、労働者の健康確保対策等として位置づけられる。
(2)事業者による両立支援の意義
事業者による取組は、労働者の健康確保という意義とともに、継続的な人材の確保、労働者の安心感やモチベーションの向上による人材の定着・生産性の向上、健康経営の実現、多様な人材の活用による組織や事業の活性化、組織としての社会的責任の実現、労働者のワーク・ライフ・バランスの実現といった意義をキャリアコンサルタントは知っているとよい。
(つづく)A.K