基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 100 | テクノファ

投稿日:2021年8月29日 更新日:

横山哲夫先生の思想の系譜
横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。
今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。
本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
チバ・ガイギーの創業者たちは諸問題の解決は,堅実な考え,科学的な調査研究と慎重なマーケティング・リサーチの結果として得られると信じていた。創業当初からリサーチの役割が明示され,ほかのマネジャー職務とは別格扱いされた。リサーチ担当者はその担当分野については絶対に誰にも負けない専門性を確保していること,という規範(norm)のようなものができ上がっていた。それは会社運営の基盤となる科学的モデルに関する前提認識に由来していることは明らかであった。歴史的に,この科学文化へのつながりが,組織の前提認識作りに貢献してきたと言えるが,リサーチャーたちはその専門領域を彼ら自身のための資産化 あるいは縄張り作りとするようになった。他者からの助言は専門性に対する侮辱と受け取られかねない。この縄張りはリサーチャーたちの部下,予算,物理的空間,その他彼らに割り当てられているものすべてを含む。このような感情的自律性と公的な関係性がグループ・メンバーの中で合成され,それが仕事を達成する彼らの方法となってきた。また階層別の職務権限がよく機能していることは,チバ・ガイギーの中核技術への信頼感とともに,スイス・ドイツのマクロカルチャーの影響でもある。化学と化学工学はそれ自体が階層的な分野から成るところが多く,階層経験豊かなエキスパートが重大な事故や爆発を防ぐことに役立つとされる。
一方,DECでは誰かに本当の縄張りが持てるとすれば,それは何かの案件達成に関するアカウンタビリテイ(結果責任)を意味する。予算,場所のスペースなどは全くのところ,組織内での共通使用であって,個人が持てるのは使用上の便宜ぐらいのものである。責任者か,その部下に直接影響を与えて有利な利用を図る者もいるかも知れないが,決まった限度があるわけでもなく,便宜の「壁」のようなものがあるわけでもない。使用可能の社内スペースは共用とされているが,共用のための知恵の「共有」は大変結構なことだ。他者への入れ知恵は,チバ・ガイギーでは危険な行為となるが,DECでは本当に必要ならその行為はやむをえないとされた。電気技術と回路設計の中心的テクノロジーは組織生存のため多くの実験と革新に自ら身を投じてきた。ミステイクは時間と資源の浪費を伴ったが,組織の生存を危うくするような過ちは冒さなかった。
DECでは誰が何を「占有」するかについてのコンセンサスが不十分のときには,それが大きな葛藤の種になることがあった。DECでは珍しいことだが,設計図の作成とか,モデル製作工場の使用のような重要な技術サービスを得るためのルールについてのコンセンサスが不足していたことがあった。申し込みの順序通りに処理されると信じていたエンジニアたちがいる一方,仕事の重要度を優先すべきだとする者があり,事実,サービス・マネジャーに順番の割り込みを何度も認めさせることがあった。このことは辛抱強く順番を待っていた者たちを激昂させることになり,サービス・マネジャーを甚だしく悩ませることになった。
技術グループが全体としての共通のルール作りに取り組むことになったが,面白いことに,その結果は,現行の曖昧処理を肯定し,それを文書化することになったのである。技術グループとサービス・マネジャーの双方が「思慮分別」をもって事に当たり,もし叶わぬときは上級マネジメントに判断を求める,というものであった。ポリシーに関する議論は,誰にも事をさばく「公式」等を見いだすことはできないこと,つねに持てる限りの知性と良識をもって事にあたるしかないことという前提認識が再確認された。つまり曖昧であることが現実であり,曖昧さとともに生き,曖昧さは「良識」によって管理することと結論されたのであった。
以上を要約すれば,ゴール達成のための手段・方法をめぐって組織文化の前提認識が形作られていくにつれて,組織内の身分・地位とか独自性などの問題が絡んでくることは避けることができない。ゴール達成の手段方法の分析と,その方法の改善努力の両方に複雑な問題が表面化してくる。そして,これらの方法をめぐる問題についてのコンセンサスは新たな行動上の規則性と,多くの人工の産物,目に見える組織文化のマニフェスト,を生みだすことになる。これらの規則性や形式が受けいれられるとメンバーの安定性のもとになり,安定性が増せばより強くそのルールがメンバーに受けいれられるようになる。
(つづく)平林良人

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