実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 101 | テクノファ

投稿日:2021年8月31日 更新日:

キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提
キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。

以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

日本の労働市場における大きな変化
ニーズやウォンツの変化は社会環境の変化、生活様式の変化、経済体制の変化など様々な変化から引き起こされる。ここでは、働く人のキャリアと直接関連する労働市場の変化を取り上げる。

労働市場を管理するための制度やメカニズムは、長年のものがそのまま続いてきている。戦後における労働市場管理の命題はキャッチ・アップであり、その前提は少ない雇用機会と弱い立場の労働者であった。その結果、政府主導による労働市場管理となり、欧米に追いつくために量的拡大と質的向上を国の命題として掲げ、国全体が護送船団方式によって発展してきたといえる。

日本の産業界は好むと好まざるとにかかわらず世界的な大きなうねり(変化)の中でその影響をまともに受けながら今日に至っている。特に大きなうねり(変化)は以下の3つである。

1.経済成長の変化(急速な成長期から緩やかな成熟期へ…雇用保障の破綻)
大きなうねりの一つ目は経済成長の変化である。経済が大きく成長しているときには全体のパイも大きいので雇用の保障が可能である。採用時点では仕事がなくても、つまり仕事上のニーズが顕在していなくても先行きに大きな経済成長が期待されていれば、一括大量採用が可能となる。高度成長期においては、文字通り仕事は後からついてきていたのである。このような状態が長期間(20年以上)続いたため、あたかも雇用保障が制度であるが如く錯覚してしまった。しかし、経済成長が緩やかになってくると、仕事を保障することが難しくなる。仕事が保障されないと必然的に雇用も保障できなくなる。

しかし、高い成長率は欧米に追いつき追い越すまでの成長率であり、実際に追いついた時点で日本経済の伸びは止まってしまった。仕事は後からついてこなくなってしまったのである。雇用のあり方や採用のあり方も多様化、流動化せざるを得なくなった。
(つづく)平林

-実践編・応用編

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