実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 106 | テクノファ

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キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。

以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

3.集団主義から健全な個人主義へ
前述した変化は集団主義から個人主義への改革のニーズといえる。ただし、ここでいう個人主義は利己的な意味を含まない健全な個人主義である。

量的拡大と質的向上が命題であった時代は、集団主義一辺倒でも結果的によかった。その時代のキーワードは、同質、等質、平等であった。個人主義の時代には、異質、異能、公正がキーワードとなる。つまり、集団主義のもとでは同じであることが重要であり、個人主義においては違うことが重要になる。違うことが重要であるという意味は、人間はそもそも一人ひとり異なる存在であるという本質を重視するという意味である。いわば違って当たり前であり、違うことが個性なのである。違いを認め合う、違いを大切にするところから新たなものが生れてくる。それがシナジー効果であり、クリエイティビティである。

シナジー効果やクリエイティビティは同じであることを前提にしている限りは生れてこない。シナジー効果は異質や異能のせめぎ合いから生れるものであるし、クリエイティビティは個が生み出すものである。個の尊重が言われ始めた理由はここにある。

4.ナンバーワンまでのHRM・HRD
日本企業が企業としての体裁を本格的に整え始めたのは1960年代であろう。同時にこの時期から日本の本格的な成長期が始まる。それまでの期間は戦後処理の期間であり、いわば復興期である。日本の経済成長は欧米が具体的で現実的な目標となった。目標の中身は、前述したように物の量的拡大と質の向上である。そのために、生産現場ではF.テイラーの科学的管理法をはじめとする欧米の企業で実践された生産管理手法が次々と導入された。

人事面では新卒の一括採用をはじめとする年齢、性別、学歴、職歴などを管理基準とする集団管理が専らであった。その代表が職能資格制度であろう。集団管理が功を奏した背景には日本および日本の貿易相手国も含めた社会全体が右肩上がりの経済状態にあったからである。横を見て、他社を見て同じことをやっていればよかった。何かをやっていれば、よかった。言われたことさえやっていればよかった。モデルは絶えずアメリカでありヨーロッパの先進企業であり、日本はそれを真似ていればよかった。

60年代から70年代にかけての人事スタッフは、欧米の考え方や制度を導入すべく、制度の背景や考え方を懸命に学習した。しかし、70年代に入り経済の高度成長が始まると、企業の中では、そもそも人事管理とは何か、人材育成とは何か、という基本的なテーマについての本質的な議論は姿を消した。人事スタッフは制度の運用係をやっていれば事が足りるようになった。その結果、残念ながら自社の人事制度や賃金制度を自分たちでは作れない人事スタッフとなり、コンサルタントに丸投げするという事態となってしまったのである。
(つづく)平林

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