基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 104 | テクノファ

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横山哲夫先生の思想の系譜

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。

今回はその中からキャリコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
測定の方法に関するコンセンサス
コンセンサスは測定の基準と情報を集める方法の両方に求められなくてはならない。たとえば,DECの初期の頃,きわめてオープンなコミュニケーションのシステムで,高レベルの知悉度と信頼感が社内にみなぎった。システムの構成は,コンピューターによる電子メール,絶え間ない電話のやりとり,頻繁な訪問,公式/非公式な調査や打診のためのミーティング,2,3日の社外での委員会会議など。これらからマネジャーは独自の測定方法を考え,進捗状況を正確に報告した。DECは強力な前提認識に立脚して運営されていた。情報と真実は組織の活力源であり,会社は充実したコミュニケーションを社内に確保するため,公式/非公式なメカニズムを試行した。エンジニアの個室をドア無しにしたなども初期の頃の一例である。自ら体を運ぼうと,世界規模の電子ネットワークを利用しようと,要はお互いに便利な方法でのコミュニケーションを意図したものであった。
ケン・オルセンは歩き回り,地位にとらわれず話しかけ,職場の気配でモラールを洞察するなどして物事を「測った」。非公式な見積もりは公式な財務評価より遥かに重要とされ,「われわれは常にオープンでお互いに誠実であろう」とするコンセンサスはそれが重なりあって前提認識に進化したものだ。

対照的にチバ・ガイギ一には固く構造化された報告システムがあった。各週の電話報告,本社への月例財務報告,半年ごとの本社チームによる本社各部への訪問,本社方針伝達の年次会議兼セミナーなどである。チバ・ガイギーは主要な前提認識として,情報はまず指定されたチャンネルを通して流されること。非公式なシステムは排除されること。その理由はそうでなければ信頼できないことにある。化学情報の信頼性をめぐってサブカルチャー間の問題が起こった。とくに薬剤についてである。チバ・ガイギーは米国と欧州に研究所があり,そのいずれの研究所においても有効とされた情報があった。チバ・ガイギーの化学者たちは他研究所のデータを必ずしも全面的に信用していないということをしばしば報告してきた。そのデータは何か異なった基準に準拠しているようだという理由からである。

要するに,組織がその活動や業績を測る方法を決定することは,測定基準の選択や情報システムの決定を含む行為であり,組織文化の中心的要素の展開でもあって,コンセンサスを必須とする。もしコンセンサスが得られないようなら,強力なサブカルチャーが異なった前提認識を形成していくことになり,組織は対立状態に陥って外的環境変化に対応できなくなることが危惧される。

矯正と修正の戦略に関する共有された前提認識
もしコンセンサスの変更が必要になった場合,その変更をどう進めるか。これが対外適応に不可欠なコンセンサスに関する最終課題である。もしグループが目標から外れていることが誰の目にも明らかになったとき――セールスの不調,マーケットシェアの下降,利益の減少,製品の導入の遅延,品質への苦情、中心スタッフや管理者の退職など――問題の診断と解決はどう進めればよいか。2009年のトヨタ車の大規模なリコールは会社とそのマクロ文化がどのような対応を示したかの例示になる。まずはそのメンツからして,お定まりの,問題発生の否定発言から始まり,次いで問題解決のための会社の損失コストの最小化の試みがあり,一連の謝罪会見が続き,最終的には車の欠陥の解明,修正のための全コストの受けいれとなって終った。会社のメンツを守ろうとするコンセンサスがあったことは明らかだが,欠陥の修正の方法についてのコンセンサスに欠けていたこともまた明らかであった。

効果的な修正のアクションは情報の収集,集めた情報の適切な部署への伝達,新情報と生産変更の有無・是正の措置の方法についてのコンセンサスを必要とする。情報の収集,活用のサイクルに不備があれば組織は効率を落とす(Schein,1980)。事例として,ゼネラルフーズでは,プロダクト・マネジャーがマーケットリサーチを使って製品の販売,品質の合否についての判断をしていた。一方,セールス・マネジャーはスーパーマーケットで,売り棚の良し悪しと品物の種類との関係について店長の示す反応を情報として得ていた。棚と売り上げとの相関が高いことは一般常識でもあった。セールス・マネジャーはその情報をプロダクト・マネジャーにいつも伝えたが,プロダクト・マネジャーは「より科学的手法で処理された情報」であるマーケットリサーチには及ばぬとして拒否し,結果として自分自身の業績を下げることになった。同様にDECの初期の頃,競合会社の情報に非常に明るい人物が購買部長をやっていた。彼はもともと競争会社から部品を購入する仕事をしていた人だったのだ。それにもかかわらず,その彼の知識が無視されることが多かった。それはエンジニアたちが彼の情報より自分たちの判断を信じていたからだ。 情報が適切な部署に伝えられ,よく理解・活用されたとしても,なお,どのようなアクションに結びつけるかについてコンセンサスを成立させることが必要である。たとえば,製品が市場で受け入れられず,失敗だとされたら,プロダクト・マネジャーを辞任させるのか,マーケティング戦略を再検討するのか,研究開発の実質を再評価するのか,他部門から審査チームを編成して失敗から何を学べるかを検討するのか,それとも失敗をことさらに取り上げず,メンバーを静かに他部門に再配置するのか。
(つづく)平林良人

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