基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 105 | テクノファ

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横山哲夫先生の思想の系譜

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。

今回はその中からキャリコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
DECでの診断と修正は,組織の全階層で広くオープンに行われる議論,討論の結果として生みだされるものだったが,実際には財務,マーケティング,購買よりも技術グループの意見が重んじられるのが常であった。議論,討論が終わったあとは,それぞれの問題について,それぞれの場所で,自主的に修正のアクションがとられた。したがってトップ・マネジメントが認可し,一連のアクションを発表するまでには大方の問題についての取り組みがすでにはじめられていた。但し,討議や提言がケン・オルセンの前提認識や洞察に反する場合は,彼自身が討論に加わり,影響を与えようとしたのだ。それがうまくいかない場合は別のグループを力づけて異なる方向づけを働きかけたりして,「安全運転」や「市場に任す」ことなどもあった。彼のこのやり方は気ままな思いつきのように見えたが,DECのおかれたダイナミックな市場のなかでは,ひとつのやり方として社内的に良き理解者,同意者が多かった。

チバ・ガイギーの治癒的アクションはできるだけ局所的にとられることになっていた。よくないことは上に任せようとすることを最小限にするためだが,問題が全社的なものだとわかったときは,トップ・マネジメントが形式上の一定期間の分析を行い,場合によってはタスクフォースの支援を求めるとか,特別な手段をとるなどした。分析が終り,結論が出ると,その決定は定例の会議,メモ,電話,その他の方法で広く告知された。

ゼネラルフーズの製品開発部門で生じた治癒的アクションのもっとも困難な一例があった。売り出し不成功とされた製品の生産企画を,製品開発部門が中止すべきか否かの問題であった。市場テストのデータではその品物を顧客は買わないと指摘されたが,彼らはテストのサンプル人口が不適当だったとか,僅かな仕様の変更で問題は解決するとか言い張ったのだ。テストデータが何を示そうと,開発チームは,遅かれ早かれその製品は売れるようになると言い続けた。マネジメントは厳しいルールとタイムリミットを設定し,事実上,開発チームの抵抗を排して企画の廃止を断行した。

「修正(corrective)」のプロセスは問題領域に限られたことではない。もし成功の信号が出ているのなら,その会社は成長を促進する手を打ってもよいのかも知れないし,あるいは,慎重な成長戦略を練らなくてはならないのか,リスクを抑えた利益の急伸を図ってよいのか。これらについてもコンセンサスが十分か否かは組織の有効性に関わる重要事であり,そのコンセンサスが会社の「スタイル」を決定する要因のひとつになる。定期的な生存問題の発生を経験していない会社には,これらの問題に対応する「スタイル」ができていない。しかし,生存の危機に曝されてきた組織は,その対応を考える過程で,自分達の真の前提認識とは何かをより深い意味合いでとらえていた。組織文化の重要な部分は紛れも無く奥の方に潜んでいる。対応が深刻な危機を救えるかどうかは誰にもわからないが,その対応の本質的な部分が組織文化の深い要素を表現していることは間違いない。

たとえば,ビジネスから撤退しようとしたが,従業員の高いレベルのモチベーションとコミットメントに驚いた,という組織が多くある。また,全く逆の話も戦時中の軍隊組織に関連して聞かれた。高レベルのコミットメントの期待どころか,戦意喪失,戦線離脱の言い訳探しから,味方の将校を背後から射殺する話まである。危機的な状況のなかで働く者の下位文化は発現する。生産性の縮減,発想の隠匿などだが,対比的に生産性のゴールを支持する下位文化もある。

治療的,修正的アクションがとられたあとは新たな情報が集められ,結果として改善があったかどうかが結論される。環境の変化への洞察,新情報の適切な部署への伝達,新情報の消化吸収,そして結論への反応をとりまとめることなどは,恒久的な学習サイクルを構成するものであり,究極的にその組織が有効性を保つ独自性作りとなるものだ。

本章の要約と結論
本章で筆者は,文化的な前提認識が,グループの外的環境との関係の全側面にわたって展開していることを検討した。グループの究極的ミッション,ゴール,ゴール達成の方法,業績の測定,治療的戦略のすべてが,グループの機能を有効に維持するために必要なのだ。サブカルチャーを形成する下位組織の間に対立があるとグループ全体の業績の土台をゆるがす。しかし,環境変化の視点からすると,そのような対立も,適応と新たな学習のための資源と考えることができる。

外的生存の課題への対応のありようはグループの内的統合に大きな影響を与える。究極的には社会技術的なシステムであって,外的適応と内的統合の課題は相互依存的であり,同時に相互拘束的である。これらについては,後章で順次取り上げていくが,外的・内的プロセスは,現実には同時に進行しているのだ。

この分析から導きだせるもっとも重要な結論は,文化とは,多次元的な,多面的現象であって,少数の主要な次元に還元することは容易でない。文化とは結局のところ,対応し,学習するグループの努力の反映だ。文化とは学習過程の最後の残留分と言ってもよいだろう。そして文化とは,現時点での安定性,意義,先見性を与える機能を果たすのみならず,グループが過去,機能的に有効な決定をかさねた結果でもある。

リーダーシップの意味するものはいくつかある。第1に,前述した外的な課題が通常,リーダーの正式な,主要な関心事となる。というのはグループを作りだすのも,引き継ぐのもリーダーであるからだ。成り立ちから言ってグループの存在がリーダーの前にあったとしても,グループは外的な問題への対応と,グループ自体の存続,成長のために,メンバーの誰かにリーダーシップをとってもらうことになる。第2に,リーダーシップとはこれらのいくつかの機能のマネジメントに成功することである。リーダーに対する評価はこのことを基盤とする。継続するグループを作りだせなければ,そのリーダーは失格とされる。内部的な不調和は許されることがあっても外的な失敗を冒したリーダーは通常,見放されるか,辞任を評決されるか,より厳しい方法で放逐される。
第5章は組織の外的適応に関する段階的な対応のサイクルと,グループが直面する課題についてのチェックリストとして,リーダーシップの現実の力を問うことに役立つであろう。
(つづく)平林良人

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