実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 108 | テクノファ

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キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉の概念は、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。
以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

従来のキャリア開発
日本の産業界がキャリア開発に取り組み始めたのは1970年代になってからである。当時は、それまでの日本の企業には無かった新しい考え方としてCDP(Career Development Programs)が紹介され、注目された。CDPとは、キャリア開発という考え方に基づいて人材育成や人材開発を行なうための制度や施策やプログラムのことである。自己申告、ジョブ・ローテーション、キャリア・パス、社内公募、派遣、留学などはその例としてよく知られている。

ところが、当時CDPを導入した企業のほとんどはキャリア開発の基本的な考え方や理念である個人主導という点には目を向けず、キャリア開発を単に会社にとって都合のよい制度として誤解してしまった。その結果、日本の企業におけるCDPは双方向的なものではなく、極めて一方通行的な、組織の都合だけを優先させたものとなってしまった。一人ひとりに目を向け、一人ひとりのキャリアを個別に考えるシステムではなく、機械的な人事異動を行なうだけのジョブ・ローテーション、形骸化した自己申告、会社の都合だけに合わせたキャリア・パス、応募者の無い社内公募になってしまっている。そして、仕事とは与えられるもの、自分の将来は会社の都合で決まるもの、という認識が一般化し、「金太郎アメ」とか「社畜」という表現に端的に表れているように、個性や独創性・創造性は育たなくなってしまった。

また、人材育成・人材開発は全て会社のためであった。教育・訓練はいうにおよばず、福利厚生も全て会社のために充実を図ろうとした。人と組織の関係についての認識が、全ての面において初めに会社ありきであった。CDPということばをあまり好意的には受け止めていない方がいるとすれば、それはまさに形骸化したCDPのせいであろう。
欧米に追いつき追い越せとスローガンの下、経済が右肩上がりという時代には、均質、同質、等質、平等を重視していたので集団管理をベースにした“会社のために人を大切にする”という形だけのキャリア開発でも何とかやれていた。しかし、バブルが崩壊し、急速にグローバル化が進み、文字通り社会の価値観も社員の価値観・人生観も多様化しつつある現在、形だけのキャリア開発では通用しなくなっている。年功序列が崩壊し、新しい人事管理・人材育成を模索する中で、今ようやく日本の企業とそこで働く個人は、本来のキャリア開発に取り組まなければならない時期を迎えようとしている。
そもそも、HRM・HRDには二つの側面がある。一つは集団管理という側面であり、もう一つは個別管理という側面である。にもかかわらず、多くの日本企業では集団管理としてとらえられ、実践されてきた。個人が個人として組織の中で存在することは非常に困難であった。これは集団主義・個人主義と対をなすものといってもよい。
(つづく)平林

-実践編・応用編

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