実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 110 | テクノファ

投稿日:2021年9月21日 更新日:

キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。

以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

HRM・HRDにおける主な変化
HRM・HRDは、パッチワークであってはならない。基本的な人事の理念を明確にし、個々の制度はキャリア開発という観点から全体が有機的に統合されなければならない。現時点における変化を的確に把握しながら、それらの変化が何を意味しているのかを理解する必要がある。

採用:
経験者の採用が増加しつつあるのと同時に、従来の新卒一括採用という採用方式から通年採用もしくは定期採用と通年採用の併用へと変化しつつある。また、学歴重視も変わりつつあり、採用に際して学校名を問わない企業が増えつつある。さらに、採用の多様化は採用条件についても均一ではなく、個別に採用条件を決めることになるであろう。

賃金制度:
従来、賃金は生計費であり、勤続年数に応じて性別、学歴、勤務態度、能力、などを加味して支給されるものであった。そのための基準として設けられたのが職能資格制度である。しかし、この制度は一人歩きを始め、企業の賃金体系を硬直化させることになった。賃金体系も雇用の多様化に伴い一元的なものでなく、範囲職務給をベースにした柔軟性のある賃金体系となるべきであろう。

人事制度:
勤務形態にはフレックス・タイムの導入やみなし労働時間制が導入されたりして、個別化・多様化が進んでいる。また、キャリア・パスも従来のように担当者・主任・係長・課長・室長・部長・役員という単線的なものではなく、複線的なキャリア・パスが用意され、勤務形態や雇用形態の多様化に対応しなければならない。さらに、正規従業員と非正規従業員という区別もあまり意味の無いものになるであろう。

組織:
IT化は意思決定のスピード化を要請する。それに対応すべく組織のフラット化が進んでいる。しかし、フラット化は同時にそれぞれが重い責任と高い能力が求められることを忘れてはならない。求められる責任能力に対応できるような措置が講じられていなければ、フラット化しただけでは意思決定が迅速にならない場合がある。フラット化は個人の能力を引き出したり、高めたりする上では効果的であるが、これは能力を引き出したり高める訓練を同時に行なわれてこそ効果を発揮するものなのである。

教育訓練制度:
「研修=職務(業務)訓練」という認識は改めなければならない。教育訓練は教育と訓練とを区別し、個人のニーズと企業のニーズをすり合わせることにより、OJTやOff-JTをうまく組み合わせた教育訓練体系、自己啓発の援助などが用意されなければならない。また、派遣、出向、留学やプロジェクト・チーム、タスク・フォースなどもキャリア開発の一環としてとらえることにより、その効果は変わってくるであろう。なお、各職場で行なわれる職務訓練と人事部門が行なうべきコンセプチュアルなトレーニングやヒューマン・スキルのトレーニングは整合性のあるものとなるよう調整されなければならない。

福利厚生:
従来は社宅に代表されるように、福利厚生についても個人のニーズを満たすというより会社のニーズに沿った福利厚生制度であった。しかし、既に社宅などは歓迎されていない。各種の福利厚生制度は画一的なものから、各自が自分のニーズに合ったものを選べるようなカフェテリア・プランが一般的になり、日本においてはファミリー・フレンドリーやEAPなども福利厚生の一環として取り組むのが妥当であろう。
(つづく)平林

-実践編・応用編

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