実践編・応用編

キャリコンサルタント実践の要領 111 | テクノファ

投稿日:

キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。

以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

これからのキャリア開発
キャリアとは
キャリアとは「その人の人生(Life)において、報酬の有無に関わらず何らかのかたちで働くということに関わっている部分(Working Life)であり、それは意識・意味・価値などの内的なもの(内的キャリア)と属性などの外的なもの(外的キャリア)がある」というのが多くの学者・研究者に共通している解釈である。ただし、これは自然科学におけるような厳密な意味での定義ではない。社会科学では自然科学ほど厳密な定義にはこだわらない。学者・研究者によってそれぞれ説が少しずつ異なるのもそのためである。
日本の社会では、キャリアについての一般的認識が外的キャリアに偏っている点に注意を要する。

キャリア開発とは
さらに、キャリア開発とはCareer Developmentの実務領域における邦訳であり、学術領域においてはキャリア発達と訳されている。また、キャリア開発と似ている日本語の表現にキャリア形成がある。キャリア開発とキャリア形成は違うのか、違わないのか。概ね似たような意味であるが、厳密にはことなる。ことばとして使われるときのニュアンスから、キャリア形成は外的キャリアを意味しているようである。すなわち、どのような仕事、どのような会社、どのような立場など目に見える部分をキャリアとしてとらえている場合、キャリア形成と表現しているようである。

一方、キャリア開発という場合には内的キャリアを重視する。しかしながら、外的キャリアを無視するものではない。内的キャリアを重視しながら、内的キャリアと外的キャリアを統合しようとするプロセスを意味する。つまり、キャリアをどのように認識し、ワーキング・ライフをどのようなものにしようとするのか、それを考えるプロセスでもあり、具体的な取り組みでもある。換言すれば、内的キャリアと外的キャリアを統合するプロセスであり、働くということを通してなりたい自分になろうとすること、つまり仕事を通して自己実現を目指すこと、ととらえることができる。

しかも、組織との関係の中でキャリア開発を考える場合は、個人にとってのキャリア開発と組織にとってのキャリア開発と二つの側面からとらえなければならない。つまり、組織の中で働いている場合には、個人にとってのキャリア開発は組織との関係の中でのキャリア開発となるため、個人も組織にとってのキャリア開発を理解しておかなければならないのである。しかしながら、それはキャリア開発を組織という枠を前提にして考えるということではない。

個人にとってのキャリア開発は前述のように仕事を通して自己実現を目指すことであり、自己ゴールの達成を目指すことである。換言すれば、個人にとってのキャリア開発は、仕事を通してなりたい自分になろうとすることにほかならない。一方、組織にとってのキャリア開発とは、長期的な企業戦略に基づく人事戦略であり、適材適所の追及であり、人と仕事の最適化を図ることであり、一人ひとりのキャリア開発を支援するための制度やプログラムを実践することである。当然のことながら、後継者育成も含まれる。そして、個人と組織にとって共通して言えることは「個と組織の共生」を目指すことである。キャリア開発は仕事を通して自己実現を目指すことである。そして、一人ひとりの違いを尊重することから始まるのである。一人ひとりが自分らしさ、つまり個性と創造性、を発揮することが許されたとき、それは組織としての創造性となる。
(つづく)平林

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタント実践の要領 116 | テクノファ

◆このコーナーは、テクノファの養成コースを卒業して活躍している「キャリアコンサルタント」からの近況や情報などを発信いたします。今回はキャリアコンサルタントT.Fさんです。◆ 私が現在生活保護受給者の就労支援の現場にいること・・・これはまさに自分が好きで、何が何でもこの仕事がしたいと正直希望したわけではありません。 私は1984年4月にある半導体商社の人事労務にてメンタル不全者対応、社員相談室を運営してきました。時代の背景もありますが、企業が景気悪くなるとともに人員整理が始まり、同僚に早期退職を進める側として、仕事をしてきました。 メンタル不全者の職場復帰をサポートする一方で、あるとき手のひらを …

キャリコンサルタント実践の要領 65 | テクノファ

このコーナーは、テクノファキャリアコンサルタント養成講座を卒業され、現在日本全国各地で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報などを発信しています。今回はS.Sさんからの発信です。 「生涯発達から捉える”人生の午後”」 一昨年前、フェイスブック上で高校時代の同級生と再会した。彼は、大学を卒業した後に某一流企業に就職が決まり、これまで誰もが羨む順風満帆な人生を送ってきた。 しかし、5年前に重い病に侵され入院して以来、彼にとって人生そのものであった仕事に就けない体となってしまった。さらに、そこに追い打ちをかけるように、一流企業の社員としての彼を選んだ妻が再起不 …

キャリアコンサルタント養成講座1 I テクノファ

初めまして、 私がテクノファのキャリアコンサルタント養成講座を卒業してから14年が経ちました。 当時、大手企業の有望な若年層の受講者が多い中、私のような50代の中年女性が何とか無我夢中で講座を受け、無事卒業できたことは多くの先生方のお陰だと思っております。主任講師であられた今野先生(故人)には、各種アセスメントの演習が仕上がるまで「皆さん、待ちましょう」と、私の遅いペースに合わせていただき、恐縮したことを思い出します。出来の悪い受講生でしたが、客観的な自己特性や対人関係のスキル、習得能力などを無意識から意識レベルに引き出していただきました。   この講座を受講しようと思ったのは、20 …

キャリアコンサルタント実践の要領 26 I テクノファ

前回の相談過程の6ステップの4番目、「意思決定」支援について引き続き説明します。 ■能力開発に関する支援 キャリアコンサルタントが行う最後の支援は、設定した目標を達成するための方策を考える支援となります。来談者の設定した短期目標(3年後の自分)を実現するためにやらなければならないこと、つまり短期目標を達成するために必要な自己学習や訓練(研修)などの能力開発に関するリストを作成することができるよう支援します。 ただし、キャリアコンサルタントはここでの能力開発はあまり厳密にとらえる必要はありません。必要とする技能や知識あるいはスキルなどは獲得しなければなりませんが、自分のクセを直すこと、生活習慣を …

キャリアコンサルタント実践の要領 12 I テクノファ

キャリアコンサルタントの知識の実践 前回までは、キャリアコンサルタント基礎編・理論編としてカウンセリングの基本を説明してきましたが、今回はジャンルを変え、キャリアコンサルタント実践編・応用編としてアサーション、グループワークなどカウンセリングの基礎的スキルに関して説明をします。 ■アサーション キャリアコンサルティングの相談において、キャリアコンサルタントは的確なフイードバックができることに加えて、適切な助言や提言ができることも求められる場合があります。そのためには、積極的傾聴のスキルに加えてアサーションも必要となります。 アサーションとは、アサーティブの動詞ですが、いわゆる日本語の自己主張と …

2021年10月
« 9月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31