実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 111 | テクノファ

投稿日:2021年9月22日 更新日:

キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。

以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

これからのキャリア開発
キャリアとは
キャリアとは「その人の人生(Life)において、報酬の有無に関わらず何らかのかたちで働くということに関わっている部分(Working Life)であり、それは意識・意味・価値などの内的なもの(内的キャリア)と属性などの外的なもの(外的キャリア)がある」というのが多くの学者・研究者に共通している解釈である。ただし、これは自然科学におけるような厳密な意味での定義ではない。社会科学では自然科学ほど厳密な定義にはこだわらない。学者・研究者によってそれぞれ説が少しずつ異なるのもそのためである。
日本の社会では、キャリアについての一般的認識が外的キャリアに偏っている点に注意を要する。

キャリア開発とは
さらに、キャリア開発とはCareer Developmentの実務領域における邦訳であり、学術領域においてはキャリア発達と訳されている。また、キャリア開発と似ている日本語の表現にキャリア形成がある。キャリア開発とキャリア形成は違うのか、違わないのか。概ね似たような意味であるが、厳密にはことなる。ことばとして使われるときのニュアンスから、キャリア形成は外的キャリアを意味しているようである。すなわち、どのような仕事、どのような会社、どのような立場など目に見える部分をキャリアとしてとらえている場合、キャリア形成と表現しているようである。

一方、キャリア開発という場合には内的キャリアを重視する。しかしながら、外的キャリアを無視するものではない。内的キャリアを重視しながら、内的キャリアと外的キャリアを統合しようとするプロセスを意味する。つまり、キャリアをどのように認識し、ワーキング・ライフをどのようなものにしようとするのか、それを考えるプロセスでもあり、具体的な取り組みでもある。換言すれば、内的キャリアと外的キャリアを統合するプロセスであり、働くということを通してなりたい自分になろうとすること、つまり仕事を通して自己実現を目指すこと、ととらえることができる。

しかも、組織との関係の中でキャリア開発を考える場合は、個人にとってのキャリア開発と組織にとってのキャリア開発と二つの側面からとらえなければならない。つまり、組織の中で働いている場合には、個人にとってのキャリア開発は組織との関係の中でのキャリア開発となるため、個人も組織にとってのキャリア開発を理解しておかなければならないのである。しかしながら、それはキャリア開発を組織という枠を前提にして考えるということではない。

個人にとってのキャリア開発は前述のように仕事を通して自己実現を目指すことであり、自己ゴールの達成を目指すことである。換言すれば、個人にとってのキャリア開発は、仕事を通してなりたい自分になろうとすることにほかならない。一方、組織にとってのキャリア開発とは、長期的な企業戦略に基づく人事戦略であり、適材適所の追及であり、人と仕事の最適化を図ることであり、一人ひとりのキャリア開発を支援するための制度やプログラムを実践することである。当然のことながら、後継者育成も含まれる。そして、個人と組織にとって共通して言えることは「個と組織の共生」を目指すことである。キャリア開発は仕事を通して自己実現を目指すことである。そして、一人ひとりの違いを尊重することから始まるのである。一人ひとりが自分らしさ、つまり個性と創造性、を発揮することが許されたとき、それは組織としての創造性となる。
(つづく)平林

-実践編・応用編

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