実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 112 | テクノファ 

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キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。

以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

日本におけるキャリア開発
キャリア開発とは会社のために人を大切にするのではなく、その人のためにその人を大切にすることである。自分が大切にされているのは所詮会社のため、とわかった途端気持ちは冷めてしまい、優秀な人ほど辞めてしまう。自分が本当に大切にされていると感じた者、本当に自分が必要とされていると感じた者は辞めないのである。

企業が「個と組織の共生」を目指す努力を継続することによって、一人ひとりが本当に大切にされているという実感を得ることができ、自分の人生の責任者は自分自身であり、キャリアは自分の問題であるという認識を持てるようになる。それが自己実現を目指すエネルギーとなり、個人と組織の活性化につながる。これがキャリア開発であり、そのために必要とされる種々の制度やプログラムがCDP(キャリア開発プログラム)である。

日本におけるキャリア開発を考えるとき、内的キャリアの自覚が欠落している点を重視せざるを得ない。内的キャリア自覚は内的な自己理解そのものである。アメリカの初等・中等教育では、“Who am I ?”“Where am I going ?”“How can I get there ?”という三つ問いを自分に投げかけ、自分でその答えを出していくことがキャリア開発のプロセスであるとしてキャリア教育を実施し、高校を卒業する際に進路を自分で決定できるようにしようとしている。この三つの問いの最初の“Who am I ?”は文字通り内的キャリアそのものである。キャリアは自分の問題という認識が社会通念になっているアメリカにおいてすら内的キャリアを重視しているのである。その自覚が不十分な日本においてはなおさら内的キャリアを重視しなければならない。

効果的なCDPを構築する際には、外的キャリアではなく内的キャリアを主たるテーマとした「キャリア開発ワークショップ(CDW)」のようなプログラムがコアとして位置づけられることが肝要である。CDWとは、参加者が様々な自己分析作業を真正面から自分自身と向き合う作業(自己コンサルティング)として行い、グループ・コンサルティングと個人コンサルティング(キャリアコンサルティング)を通してさらに自己理解を深める合宿形式のワークショップである。ファシリテーターはカウンセラーでもあり、参加者にとっては、自己決定をする場であり、自己決定をするための手がかりを探す場である。

さらに、キャリアコンサルティングがCDPの潤滑剤として位置づけられることによって、その効果は増大する。
(つづく)A.K

-実践編・応用編

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