実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 115 | テクノファ

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キャリアコンサルティングの社会的意義
キャリアコンサルティングを学ぶ前提

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解しておかなければならない。

以上のような点を踏まえながら、キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぶということはどういうことかについて概論的に述べる。

MBOとキャリア開発
ところで、「個と組織の共生」を支えるもう一つの重要な要素にMBO(目標による管理)がある。これは、成果主義の成否とも大いに関連がある。日本の企業ではMBOが単なる評価制度と誤解されている面がある。MBOはD.マグレガーのいうY理論的人間観に基づいて企業の中で仕事と人を統合して考え、仕事を通して一人ひとりが成長できるような経営を目指そうという経営のコンセプトであり、単なる評価制度ではない。一人ひとりが自分にとっての仕事の意味・価値を考え、成果とは何かを考え、自分の役割は何かを的確に把握することで仕事と自分の距離が縮まり、自分の仕事を主体的に受け止められるようにしようとするトータルなマネジメント・プロセスである。つまり、MBOというのは各自の仕事が各自にとって意味のあるものであるべきだとする経営のコンセプトそのものである。この文脈において、MBOも「個と組織の共生」を目指すものなのである。評価制度は、成果・結果をその企業としてどのように評価していくか、その方法を体系化したものである。

成果主義を唱えながら長期的な視野に立った目標設定ができなかったり、社員一人ひとりの納得性が得られなかったりするのは、MBOの本質を理解できていない証左である。ちなみに、MBOの本質を理解できている企業においては、上司と部下との間で評価についてもめることは無い。なぜなら、目標においてお互いが合意・納得し合っているからである。

個人のニーズと組織のニーズを丁寧にすり合わせることは、キャリア開発においてもMBOにおいても、基本中の基本である。お互いが納得いくまで話し合いをやっていないと、キャリア開発もMBOもうまくいかない。お互いが納得のいく話し合いができるためには、ヒューマン・スキルを身につける必要がある。十分なヒューマン・スキルの訓練が行なわれていないとまともな話し合いにはならないので、制度が形骸化してしまうことが多い。

このようなすり合わせの際に、組織の側には長期・中期・短期の計画があるように、個人の側にも長期・中期・短期の計画、すなわちキャリア・プランが必要である。これがなければ、すり合わせにならないからである。MBOとキャリア開発で異なるのは、MBOが比較的短期でとらえるのに対してキャリア開発は長期でとらえるという点である。MBOにおいては成果・結果を評価して処遇や配置に反映させようとするためである。評価の対象期間が最長でも1年となっているのは、企業の会計年度が1年となっているからに他ならない。したがって、目標の設定が1年の仕事を対象とするものでないことはいうまでもない。
(つづく)A.K

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