基礎編・理論編

キャリコンサルタント養成講座 114 | テクノファ

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横山哲夫先生の思想の系譜

私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認証を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしたのです。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。

今回はその中からキャリコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。
本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。
<ここより翻訳:2010年シャイン著>
DECも,チバ・ガイギーも,MBAの採用と導入に熱心でなかった。両社では,MBAは確固とした技術軌 科学的な背景を持たない全目的のゼネラリストであり,組織の技術的な仕事に貢献するよりも,個人的な,野心的な昇進などに関心が強すぎる,と思われていた。このような認識の背後には,両社に共通して,ゼネラルマネジメントの職位が成功の中心ではないとする,さらなる前提認識があったからである。科学的,技術的な高度のノウハウが成功の真髄だったのだ。これらの前提認識は後年DECに大きな打撃を与えることになった。経験豊かなゼネラルマネジャーが恒久的に不足し,組織として多方向に進化する能力,分社化する能力を失ったためである。

誰が中の人,誰が外の人,を決めることは,新規採用だけでなく,一人ひとりが組織のなかで成長していくときに,重要な象徴的な意味を持ち続ける。誰が中,誰が外 が決まった直後から,異なった取り扱いのルールが適用される。内部者(正規雇用)には別格の福利,より深い信用,より高い報酬,そして何よりも,配属先の職場を通じての組織との独自な一体感が得られる。契約社員のような外部者は福利厚生や給与所得が格下であるだけでなく独自の一体感が得られない。「外部者(非正規)」のラベルで一括され,マスの一部とされ,ステロタイプ視され,関心を持たれず,非友好的な対応をされがちである。

組織内でのキャリア異動は3つの次元で考えられる。(1)ひとつの機能またはタスクからの横方向異動,(2)上下への垂直異動,(3)部外者から部内者への転入異動の3つである(Schein,1978,2006)。(1)と(3)についてはコンセンサスが必要になる。「内部者」のなかでさらに「なかに」進む者はグループの前提認識を堅く信奉する人たちとの絆を強めるプライビー(関与者)となることがある。これらの人たちのなかでは,言葉やしきたりに特別な意味が託されており,それがグループのメンバーシップの証しともなる。そのグループのなかでの地位,役割はグループの存在と非公開性を保てるかどうかにもかかっている。実態をつかみ難いこのグループは会社発展上の過去から現在までの出来事に深い関わりを持っている。ある伝えられる出来事の真偽,背景,誰が主役かなど。あるいは公開されていない組織の機能,活動などに関してもである。ところで,チバ・ガイギーのシニア・マネジメントに「バーゼル貴族」がいた。社会的地位と優秀な技術を背景に役員や,上級幹部の地位にいた人たちだが,本当はどういう人たちだったのか。それを本当に知りたければ本物の内部者になるしかないだろう。

組織は年月を重ねるとともに複雑になり,外的,内的な境界線も複雑になる。セールス,購買,販売代理店,特約店,取締役会役員,コンサルタントなど,どの分野においても境界線の明確化にこだわる人が増えてきた。産業によっては,会社の経済的な理由で労働力のサイズを縮小することを余儀なくされ,レイオフを行い易い臨時社員,契約社員の雇用が増えてきている。そこで規約的な観点からの続出する質問に応えるに当たって,文化的前提認識のありようがはっきりと見えてくる。「臨時」とは何か。いつまで臨時にしておけるのか。福利厚生の適用はどうなるか。文化的エッセンスに早くなじませるためにはどうするか。正規社員化への圧力にどう対応するか(Kunda,1992;Barley& Kunda,2001)。

複雑化した社会においては,個人は多くの組織に属している。彼らの独自性はひとつの組織に制約されない。個人にとってのある特定の文化的単位のありようを見定めることは困難である。ひとつの組織には多くのサブカルチャーがあり,そのサブカルチャーは他の組織のメンバーシップや,職業的独自性やマクロ文化を反映しているからである。米国海軍では一時期,食事のサービスの担当船員は全部フィリピン人だということが言い広められたことがある。とにかく,メンバーシップの基準の追求は,あるグループに特有の文化単位があるかどうかを知るひとつの方法であり,さらに,それらの文化単位にコンセンサスを求める行為は,ほかのグループから自分のグループを識別するための前提条件になる。バッジや制服を身に着けることはわかり易いグループの独自性の表示である。コミュニケーションのセット,つまり頭文字の羅列による特殊な略語(アクロニム)や,特殊用語(jargon)の使用も新しくなった文化のなかでの「われわれ」と「彼ら」を大変わかりやすく識別する。

要するに,誰が内,誰が外かを,その下位ユニットまで含めて,見分ける基準を明確にすることは,組織文化の分析を進めるうえで大変有効である。そしてそれ以上に重要なことは,そのような文化形成と維持のプロセスそのものが,組織の外的生存と内的統合の課題に貢献するということである。
(つづく)平林良人

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