基礎編・理論編

キャリコンサルタント養成講座 115 | テクノファ

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横山哲夫先生の思想の系譜

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。

今回はその中からキャリコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006,7年頃(記憶があいまいですみません)来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。
<ここより翻訳:2010年シャイン著>
パワーと権威/権限と地位の振り当て
新しいグループにとって,影響力,権力,権限の振り当て,及び「服従と振る舞い」の規則作りは難事である(Goffman,1967)。人間システムにおける階層化は動物の世界におけるような露骨な支配者決めのようにはいかないが,機能的には動物的な攻撃や支配を,人間らしく,有効な,進化的ルール作りにするということだ。ひな烏にも餌の順番があるだろうが,人間社会ではそのプロセスや仕上がりが非常に多様で複雑だ。第12章で触れるが,新しいグループでは誰が誰の上に立ち,誰が誰に影響を与えるかなど,甚だ複雑で予想もできない。しかし,大方の組織は創立者とリーダーによって立ち上げられており,これらについても彼らの予見があれば,それに従って当初の権限の取得,行き過ぎ行動への対応などのルール化が決定される。

DECとチバ・ガイギーは権力の配分と過剰な権限指向への対応の進め方が顕著に異なっていた。DECでは個人的な高い業績と支持勢力の獲得が権力の原動力となった。公式的な序列,経験年数,職務記述書などよりも,個人的特徴,実績のほうが重んじられた。個人的特徴としては,交渉力,説得力,周辺から認められた権利などが強調された。しかし,地位の公式なシステムについては,意図的に,ことさらな強調はなされなかった。意図的にというのは,地位に関係なく,誰でも参加する権利,意見を言う権利,聴いてもらう権利があり,よいアイデアはどこからでも,という同社の前提認識の支持への反映であった。しかし,自分のアイデアの値打ちを本当に自分自身で間違いなく評価できる者がいるはずはなく,ましてや,自分以外にそのアイデアの実施に関わり,利害を共にする可能性があるときには,そのアイデアを「売り込む(buy-in)」ことも必要になるとされた。過大な要求はこのように通常の取り扱いに収められたが,それはアイデアについてであって人に対してではなかった。DECのさらなる前提認識は,組織のメンバーは「家族」であり,たとえ家族のアイディアは受けいれられないことがあっても,そのメンバーシップは失われないのであった。

一方,チバ・ガイギーは,個人的経歴,学位,年功,忠誠心,勤務成績などを基本にし,上級権限者から権力配分される公式的なシステムを堅持した。ある年月を経て従業員はあるランク(資格)を獲得したが,このランクは軍隊や公共機関での昇進に相当するランクであって,具体的な職務への異動とは別物であった。地位と特権はこのランクとともにあり,もし職務責任が減じたとしても没収されることは無い。組織風土としては礼儀正しさ,形式を重んずること,理由が明確であることが強調された。攻撃的に見えることはタブーであった。しかし,攻撃封じ込めの結果として,陰に回っての苦情,悪口,策略があるのはやむを得ないことだった。

両組織とも強い家族感情と,リーダー,権威者への情緒的依存を打ち出していた点などから,等しく「父権的(paternalistic)」のレッテルが貼られるかも知れない。しかし,このふたつの組織は,組織における権力配分の問題について,対比的に全く異なったルール作りを進めている点での示唆をわれわれに与えてくれている。つまり,「専制的」とか「父権的」のような,広く,曖昧な言葉では,現実の,特定の組織の特徴を考えるのに役立たないということだ。再度注意を促したい。一方にミッション,タスクという外的課題があり,別の一方に権力の分配という内的課題があり,その緊密な相互関係をどう考えるか。それぞれの組織にとって,科学技術の種類と達成すべきタスクは権力配分に直接的な影響を及ぼしていた。科学のなかの独自の化学分野に専念する組織としての専制的な前提認識と,台頭する科学技術のなかでの電気工学的な共同社会での平等的な前提認識は,それぞれの組織文化に強力な影響を与えていた。

権限システムの機能を理解するには言葉のニュアンスについての敏感さが必要になる。1980年代にブリティッシュ・ぺトロリアム社(BP)の会議に参加したときのことだ。世界中から集まったシニア・マネジャーの3日間の会議であって,私のクライアントであった次期会長(その当時すでに取締役会によって選任されていた)からの依頼は,特に3日目は文化的側面からの観察と,文化についての話し合いのファシリテーションを,とのことだった。この会議では大きな組織変更の発表と,討議が予定されていた。変更前,各国支社は全プロダクトラインをかなり自主的に管理していたが,新組織では,主要プロダクトラインごとに世界的ビジネスユニットが創設されて直接ロンドンから管理されることになった。この変更の意味するところは,各国のマネジメントが大幅に自主性と権力を失い,本社とビジネスユニットが権力を獲得することになることだった。
(つづく)平林良人

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