基礎編・理論編

キャリコンサルタント養成講座 118 | テクノファ

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横山哲夫先生の思想の系譜

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。

今回はその中からキャリコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャインが2006年来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた唯一の日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
DEC内部の関係性に関する内在的な前提認識は逆説的であった。一方では「pushing back(押し返せ)」,「doing the right thing(正しいことを実行せよ)」,「getting buy-in(納得させよ)」で個人主義的で自由競争的な風土を標榜するかと思えば,他方では行動を起こす前のコンセンサスを重視して,共有された前提認識の念入りな確認を繰り返し,その間に個人的親密感を高度に醸成してしまうこともあった。数多い社外での会議は,ときには数日間に及び,森林のなかでの家族的なDECグループの親密感を激しく全員で盛り上げるということすらあった。

チームワークはDECでは強く信奉されてきたが,その概念の意味付けはユニークであった。良きチームプレーヤーとは,たとえ会議が混乱しようと,プロジェクトの進捗が遅れようと,押し返すことができるプレーヤーなのだった。このDECでは当たり前とされたことが,ヒューレット・パッカード社(HP)では反対だった。HPの前提認識では,良きチームプレーヤーとはグループが進もうとしている方向を察知して視野に収め,その方向性に大きく反対しないことであった。DECのある洞察力に富んだ社内コンサルタントが,DECというのはどういうチームなのかがやっとつかめたと,私にこう言った。「陸上競技のチームか体操チームなのだ。トータル・スコアが高くなることを欲している。その高いトータル・スコアを大勢の,そしてその一人ひとりの,すぐれた努力で達成しようとしている」と。

チバ・ガイギーでは,関係性への対応はあっさりと形式的に処理されていた。創業以来のマクロの企業文化と,現在に至る大部分のリーダーのパーソナリティを反映している。しかし,チバ・ガイギーは普段の堅苦しさを年1回の非形式的な,くだけた行事で補っている。その行事とは40~50人のトップマネジメントのグループによる年次定例総会で,3日間の日程のある午後と夕刻のすべてがユニークな企画に費やされる。オーガナイザーは全員がバスに乗り込むまですべてを秘密にする。企画の一部にはスポーツゲームが織り込まれ,そのスポーツは誰もうまくやれないような種類のものが準備され,したがって誰の目にも,誰もが不器用で,ぶざまに見えて,誰もが吹き出してしまうことになる。たとえば昔ながらのクロスボウ(crossbow)を射るなど。地位,役割などのすべてが平準化される。からかったり,こき下ろしたりが続き,日頃の形式張りはどこにも見当たらない。スポーツイベントの後は全員が非公式な夕食に集まり,ユーモラスなスピーチとお互いのからかいやひやかし合いが織り混ざる。アルコールの大量消費も進み,誰もかれもの頭髪も垂れ下がり,お互いのしゃべりようは仕事のときの話しぶりのかけらもない。毎年の企画はそのときがくるまで秘密が保たれ,すべての関係者の好奇心と期待を高める。その様子はクリスマスのギフトを待ち望む子供たちの如くであり,総じてこの組織は定期的な子供返り(regression)儀式によって親密関係を成就させていると言えるのかも知れない。

関係性に関するルールは,新しい組織においては,職務遂行のルールと強力に相関する。とくにマクロ文化が多様に共存する多文化組織において顕著である。具体的に問題となるのは,職務に取り組む前に同僚とある程度の親密関係を成立させておかなくてはならないか。あるいは,関係性を気遣うことなく,即座に仕事に取り組んでよいか。このテーマでの話題は豊富にある。たとえば,あるひとつの文化のメンバー(通常,米国人を指す)は早速仕事の話に取り組みたいと言うが,ほかのメンバー(多いのはアジア人か,ラテン系)はその前に,「仕事外でお互いをよく知り合いたい」,と希望する。ここでまた繰り返すが,リーダーシップとはまず自身がこのような相違をわきまえていることであり,会合などを提起してメンバーがこの問題に対面し,対応する機会を作ることである。

要するに,お互いがうまくやっていけるようなルールを作ることは,組織やグループが機能するためには決定的に重要である。米国の文化を一例にとってみても,仕事との関係の有無も含め,組織にとっての適切なレベルの親密性をどう考えるかは,組織によって異なっている。しかし,将来的に組織の多文化傾向が国家,民族,職業の次元でさらに進むと,お互いの誤解や排斥が激増する可能性が高まってくる。ルール作りのための「文化の島」の発想は組織の進化のための方法としての不可欠な要素となるのではないか。
(つづく)平林良人

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