基礎編・理論編

キャリコンサルタント養成講座 124 | テクノファ

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横山哲夫先生の思想の系譜

私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。 当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認証を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしたのです。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。
今回はその中からキャリコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャイン博士が2006年来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた日本人でありました。
横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
人が褒められたとき,あるいは罰を受けたとき,その本当の意味を解読することは,その組織への新参加者にとってもっとも至難の業のひとつとなる。賞罰のシグナルが曖昧であるためである。上司に怒鳴られることは,無視されることに比べれば,罰ではないどころか,認められ 褒められているのかも知れない。事実よくやっている新人(他社経験者も含め)に怒鳴ることの良し悪しを言えるのは,その組織の文化理解に年季の入っている者に限られるのかも知れない。すでに述べたように,昇進にも関わるほど重要だとして,チームワークをやたらに強調することがあるが,チームワークとは何かの定義は,地図のどこにでも書き入れることができるほどの多様な位置づけが可能なのだ。

報奨と懲罰の位置づけは組織の階層レベルと関係する。ジュニア従業員には昇給か興味ある仕事が主な報奨であろうが,シニアマネジャーには大きな昇進,あるいはジェネラルマネジメントの方向へ進むことが意味を持つことになる。また会社の機密事項を知らされることは大きな報奨を意味するであろう。逆に機密事項の外におかれることは罰則であり,いずれは退職の方向を示すシグナルであろう。「仲間に入っている」状態でなくなったとすれば,何かまずいことをしでかした報いであり,辞めるか辞めさせられるかの退職シグナルがはっきりと出ている。

要約すれば,組織の賞罰システムは,権限と親密性に関する前提認識のもとに,メンバー同士の相互関係のありよう,メンバー自身の悩みごとのマネージ,及び人と組織の日常的相互関係などを通じて,従業員が組織のメンバーであることの意義の自覚を促進するための十分条件である。上司とどう対応するか,同僚とお互いにどう対応するか。その対応が正しいか,どうか。これらは組織文化のDNAを支える基盤とも言える。もう一度繰り返すと,組織が多文化になればなるほど相異なるシステムがぶつかり合って,お互いに傷つき,悩み,攻め,責めるという行為が続く。文化の島のような状況作りが進んで,深いレベルでの相互理解と新たなコンセンサスが形成されるまで混乱が続く。

マネジメント困難をマネジし,説明困難を説明するどのグループにも,よく管理統制できていない問題や,複雑で,不可思議で,予想困難で,気持ちをおびやかされるような出来事を抱えることがある。物理的レベルでは,自然災害や天候は合理的説明を必要とする。生理的,社会的レベルでは,出生,成長,青春期,病気,死亡などについてはその発生,順序などに関する理論があり,意味が説明され,怖れ,悩みへの対応がなされる。 マクロ文化では理由と科学が重視されるあまり,何事も説明可能とする傾向が強く,不可思議な現象もいずれ説明可能になると期待される。しかし科学が統制,理解困難な不可思議な出来事を説明してくれるようになるまでの間,そのような現象をとりあえずわれわれの文脈のなかで受けいれ可能なところまで,代案的な説明が欲しい。宗教的な信仰はそのような期待に応えてくれるし,不可解な出来事の説明に役立ってくれる。迷信と言われるものも,説明困難と言われる出来事を説明する役割をとってくれるし,曖昧で不確かで恐怖心をそそるような出来事への対応のガイドラインを提供してくれる。

迷信や神話はその組織の歴史としては危機的な状況のなかで創立されていることが多い。代表的な事例もあるが説明は難しい。組織的な統制は存在せず,母体に等しいような信仰やイデオロギーの形式と,中心的な行事の進め方を共有する新たな組織が形成されていく。神話・伝説は基礎集団が随時樹立,開始する。集団に近い人たちが生存のための危機的状況のなかで発足させる。あるいは何らかの理由で,関わる人が急増した。共有されていた原則,教義へのチャレンジが起こり,それらが改善された。原則,教義そのものが転換し,一新された。
(つづく)平林良人

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