基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 125 | テクノファ

投稿日:2021年11月9日 更新日:

横山哲夫先生の思想の系譜

私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。 当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認証を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしたのです。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。
今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャイン博士が2006年来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた日本人でありました。
横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
事例を挙げると,DECの個人的貢献者とマネジャーは会社が何度か危機的状態に陥ったとき,その会社をトラブルから脱却させるためのあるグループを作っていた。「その行動」のある部分はほとんど迷信的と見えるものだった。その一部はこうだ。マネジャーのひとりがリーダーシップをとってタスクフォースを立ち上げた。問題解決のためのこのタスクフォースは,一定時間,完全な自由を与えられた。DECの理念の「成長」はさまざまないま・ここでの自動的な問題解決のひとつの手法となった。少数の特別参加者としての顧客からの積極的,肯定的なフィードバックはほかのいかなるマーケット情報より優先,重視された。ときにはコンサルタントに同席してもらうこともあったが,それは外部者に同席してもらうだけで,建設的な意見が出やすくなるからであった。それでもそのような外部者には誠意を持っての同席をお願いした。

病院の放射線部門へのコンピューター断層写真の導入時,バーリー(Barley,1984a,1984b)のメモから引用しよう。もしもコンピューターがとんでもないときに,たとえば患者のスキャンの最中に止まってしまったらどうする。放射線技師はあらゆる種類の応急措置を試みた。諺に出てくる蹴飛ばしも含めてやってみたところ,コンピューターが動き出した。やがてコンピューターエンジニアが到着し,放射線技師の行ったことは一切コンピューターが動きだしたことと「関係のない」ことが明らかになった。それでも技師は自分のやったことをすべて注意深くノートブックに記録し,この「知識」と経験を後任の同僚のための訓練の資料とした。論理的な説明が可能であり,重んじられる場所,場面での迷信的な行動とも言える。

物語,神話は説明困難だと説明するだけではなく,それらは組織自体の実情,物事の処理の仕方,組織内部の関係性のありようを確認することに役立つ(Hatch & Schultz,2004;Pettigrew;1979;Wilkins,1983)。たとえば,ヒューレット・パカード(HP)について言われる話は,厳しい不況の間,誰もレイオフされなかったが,それはマネジメントから時間給の従業員まで一様に進んで労働時間を減らし,減給したから,人員をカットせず,コストのカットができたのだ。HPから学べることは人をめぐる強い価値観の確認である(Ouchi,1981)。DECでの同様な話はエンジニアの「リハビリテーション」だ。彼はいくつかの大きなプロジェクトに失敗した。この会社の前提認識はもし誰かが失敗したら,それはジョブとのミスマッチ,だ。彼にはさらに別のジョブがまわって来たときは見事に成功してヒーローになっている。この話の底辺にあるもうひとつのDECの前提認識は一人ひとりに価値がある。会社はそういう人を採用した,はずであった。

さらにもうひとつ,DECの初期の頃のひとりのエンジニアの話。彼は西海岸へ急遽,器具の修理に向かった。深夜便をつかまえたが衣類をパックする時間がなかった。仕事は1週間かかる。彼は現地で衣服を買って,代金を会社に請求した。経理部は支払いを拒否した。彼は退社する,とおどかした。ケン・オルセンがそれを聞いて,経理部をきびしく罰した。技術的な価値と意欲の高い技術者を重視,重用する会社方針をオルセンが再確認したのだ。

本章の要約と結論
グループにはグループになるための学びが必要だ。学びのプロセスは自動的ではない。複雑で多岐にわたる。まず新しいグループを構成する人間ができなくてはならないことは,一連の限られた,わかり易い事柄に対応できることだ。まず,初等的なレベルで物事の意味をわかり易く示すことのできる,共通の言葉とその分類を開発しなくてはならない。形式的な言語を並べるだけでは不十分であり,不正確である。ワーク,チームワーク,尊敬,質など,など。グループはその境界線についてのコンセンサスを持たなくてはならない。誰が外,誰が内か。グループは影響力や権力をうまく配分し,侵犯行為には建設的に対応できるように本来の状態を正確に維持しなくてはならない。グループは同僚関係と親密関係を定義し,愛情と恋愛感情を適切に区分できるようなルール作りをしなくてはならない。重要な関係性は職務の遂行に影響することについてのコンセンサスを持たなくてはならない。

グループは報賞と罰則についても明白な前提認識を築き上げなくてはならない。メンバーはそれによって自分たちの行為がなぜ賞罰に該当するかを解読することができる。そして最終的には,メンバーが予想も説明も困難な出来事機能的には宗教や神話・伝説に等しいと言える)への対応についても有効な説明を提供できなくてはならない。これらの問題をめぐっての物語は組織の独自性感覚を肯定する意味や素材を提供してくれているのだ。

組織の内的課題をめぐって形成されていく前提認識は,ミッション,ゴール,方法,結果診断,修正メカニズムなどの外的要素と連動し,われわれが分析し,記述している一連の文化次元の問題の構成要素となってくる。但し,これらは次元の問題だけにとどまらず,グループ研究の全体に関連させて考えることができるし,文化のダイナミックスに関わるセンスを得ることのはじまりにもなる。文化的前提認識の出動でもあり,その進化でもある。また,われわれの観察する文化データの分別に資する概念的グリッドを提供してくれる。

リーダーシップの問題がここで再登場する。リーダーシップは,グループのアイディアの最初の出所,行動様式のはじまりであるとともに,そのありようは内的・外的条件のテストを受けることにもなるからである。リーダーシップはグループのどこから発生してもよいが,第12章でも述べるように,要はグループとして賛成や反対の行動が起こる前に,誰かが,何かについて,イニシアティブをとらなくてはならない。組織の多文化傾向が強まるにつれて,リーダーシップの特別な役割が国家,民族,職業の各レベルで台頭してくるであろう。
(つづく)平林良人

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