新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。
<新型コロナウイルス感染症と社会保障>
2020(令和2)年、世界は「新型コロナウイルス感染症」一色でした。我が国でも、1月に国内初の患者が確認され、2月にはクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応、大規模イベントの中止、延期等の要請が行われるとともに、3月に入ると小・中学校、高校等に臨時休業が要請されました。4月には初めて「緊急事態宣言」が発出され、社会・経済活動は大きく制約されることとなしました。こうした感染拡大防止のための措置とあわせて、「医療を守る」、「雇用を守る」、「生活を守る」の観点から、前例なき対策を含め様々な措置が講じられました。その後も感染状況は刻々と変化し、感染症との闘いは今なお続いています。
こうした厳しい状況下で、国民生活は大きな変化を強いられました。外出自粛をはじめ人と人との接触機会の減少が要請される中、仕事の面では、女性や非正規雇用労働者を中心に休業等を余儀なくされる者が多数生じたほか、テレワーク等がこれまで以上に広く実施されることとなしました。家庭が「職場」になり、休校により家庭が「学校」となったことにより、家庭生活の面では男女を問わず在宅時間が増加しました。その中にあって女性の家事・育児負担が相対的に大きくなり、若者とともに女性の自殺、DV相談件数が増えるという事態が生じました。一方、日常生活におけるオンライン化が浸透し、高齢者等の通いの場や子ども食 堂などの活動が制約を受ける中で、個別訪問やフードパントリーといった形での支援や、オンライン・SNS等を活用した新たなつながりを模索する動きも見られるようになりました。
今回の令和3年版厚生労働白書の第1部は、「新型コロナウイルス感染症と社会保障」と題し、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による国民生活への影響とその対応につい て、リーマンショック時との対比や国際比較を交えつつ、分析を行い、社会的危機における社会保障の役割について検討を行ったものです。
ここでは、感染拡大が与えた影響について、
①仕事や収入が急減した人への対応
②孤立の深刻化
③女性への影響
④子どもへの影響
⑤医療・福祉現場への影響
という5つのテーマに沿って分析しています。
続く2章では、社会的危機における社会保障の役割について、今般の感染拡大への対応を通じて見えてきた以下の5つの課題について論じ、今後これらの課題への対応により セーフティネットの重層化を図ることの重要性を指摘しています。
① 危機に強い医療・福祉現場
② 社会保障におけるデジタル技術の実装化
③ 多様な働き方を支えるセーフティネット
④ 性差によって負担に偏りが生じない社会づくり
⑤ 孤独・孤立を防ぎ、つながり・支え合うための新たなアプローチ
我が国は、過去30年の間でも、阪神・淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災など幾度となく社会的危機に襲われ、その度に、国民の暮らしと仕事を守るため、既存の制度・事業をフル活用しつつ、不足があるときは新たな仕組みを構築し事態に対処してきました。今般の感染拡大という事態においても、これまでにない新たな措置を含め、様々な対応を行ってきていますが、新たに浮き彫りとなった課題もあります。危機はなお続いているが、今後の社会的危機への備えはいかにあるべきかを考えるためにも、以下、現時点までの経過を振り返っていくこととしたいと思います。
(つづく)平林良人