実践編・応用編

新型コロナを契機に国民生活はどう変わったか

投稿日:2021年11月11日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。

〇 新型コロナウイルス感染症を契機に国民生活はどう変わったか
■ 雇用・収入への影響
(実質GDP成長率の推移)
ウイルスの特性がよくわからなかった最初の感染拡大期においては、経済活動全般を止めることで感染拡大を防止しましたが、経済には大きな影響がありました。
新型コロナウイルスの感染は、2020(令和2)年1月15日に国内で最初の感染者が確 認されて以降、急速に拡大しました。感染拡大を防止するため、4月7日には7都府県を対象に緊急事態宣言が発出(16日には対象が全国に拡大)され、外出自粛要請と飲食店等に対する休業要請が行われました。
ウイルスの特性がよくわからなかった最初の感染拡大期においては、このように人の動きを止め、人と人との接触を極力減らす対策がとられました。これにより感染は5月に入ると一旦収束し、緊急事態宣言も同月中に段階的に解除されましたが、経済活動の多くを止める措置をとったことで、経済や雇用、人々の生活に大きな影響が生じました。2020年4-6月期 の実質国内総生産(GDP)成長率は、前期比で-8.1%(年率換算-28.6%)と大きな 落ち込みとなりました。

(休業者数の推移)
2020年4月には休業者数が急増し、就業者数も大幅に減少しました。足下では、感染拡大前と比べ、完全失業率は高い水準、有効求人倍率も大きく低下等、雇用情勢に厳しさが見られました。

(就業者数の増減)
2020年4月の緊急事態宣言下の経済活動の停止に伴い、企業は従業員の雇用維持に積極的に取り組んだことから、休業者数は男女ともに急増しました。しかしながら、離職を余儀なくされた者もおり、これまで増加傾向にあった就業者数は、同月に大幅に減少した。同時に、非労働力人口は急増しており、離職者の多くが、感染症への罹患防止のために求職活動を控える動きがあり、完全失業率の上昇は限定的となりました。
その後、社会経済活動が再開され、求職者が増加する中で、完全失業率は緩やかな上昇 が続きましたが、就業者数は、女性を中心に持ち直しの動きが見られました。ただし、詳細は後述するが、雇用形態別に見れば、非正規の職員・従業員では、前年差で大きな減少幅が続いており、厳しい状況が続いています。

(完全失業率、有効求人倍率の推移)
さらに、2021(令和3)年1月に緊急事態宣言が再度発出されましたが、措置内容や実施区域が限定的であったこともあり、発出前の12月からの変動幅で見ると、前回のような急激な動きは見られず、2021年3月の完全失業率は2.6%、同月の有効求人倍率は1.10 倍となっています。しかしながら、完全失業率は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大 前と比較すると高い水準であり、有効求人倍率 も1倍を上回っているものの、大きく低下している状況にある等、雇用情勢には厳しさが見られます。

(雇用者数の増減)
雇用者数の減少は、女性の非正規雇用で、また、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業等の特定の業種の非正規雇用で大きくなっています。雇用者数の減少を男女別、雇用形態別に見ると、2020年4月の緊急事態宣言下の社会 経済活動の停滞に伴い、特に女性の非正規雇用が大きく減少しました。その後、新型コロナ感 染拡大前から増加傾向で推移していた女性の正規雇用を中心に、雇用者数は徐々に持ち直しの動きが見られているが、非正規雇用においては、依然、新型コロナ感染拡大前の水準から大きく減少した状況が続いています。また、産業別、雇用形態別に見ると、「宿泊業、 飲食サービス業」については雇用形態を問わず減少が続いており、引き続き厳しさが見られ、また、「卸売業、小売業」、「製造業」、「生活関連サービス業、娯楽業」などで非正規 雇用の減少が続いています。

(現金給与総額)
雇用が維持されている一般労働者、パートタイム労働者とも所定外給与が大きく落ち込み、現金給与総額が減少しています。賃金の動向を見ると、一般労働者、パートタイム労働者とも、2020年4月の緊急事態宣言以降に所定外給与が大きく減少し、宣言解除後もその水準は戻っておらず、一般労働者の現金給与総額は前年同月と比べてマイナスの水準で推移しています。

(新型コロナウイルス感染症に関連した自身の雇用や収入にかかわる影響)
独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施したアンケート調査からは、2020年12月時点の調査で新型コロナウイルス感染症の影響が「大いに」「ある程度」あったと回答した者の6割超が収入の減少の影響があるとしており、収入の減少は、仕事を失った者だけでなく、雇用が維持されている者にも少なからず及んでいることがわかります。
(つづく)平林良人

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