実践編・応用編

働き方の変化と家庭生活への影響

投稿日:2021年11月14日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。

■ 働き方の変化と家庭生活への影響
(テレワークの実施状況)
接触を減らすことが求められ、学校の臨時休業の影響も受け、就業者の約3分の1がテレワークを経験でした。2020(令和2)年4月の緊急事態宣言発出に伴い、人と人との接触減が求められる中で、政府や地方自治体から経済団体等にテレワークの要請が行われました。また、学校が臨時休業する中で、子どもの世話の必要性からも在宅勤務の需要が高まりました。こうした影響を 受け、テレワークが急速に広がりました。同年5月下旬から6月上旬に行われた内閣府による インターネット調査によれば、就業者の約3分の1がテレワークを経験しました。他方で、テレワークの実施状況は業種や雇用形態によって大きく異なっていました。業種について見ると、最もテレワーク実施率の高い教育、学習支援業については、テレワークを実施した者の割合は半数近くに及んだのに対して、業務の中心が対人サービスである医療・福祉・保育関係については1割弱であした。

(テレワークによる労働時間の変化)
雇用形態別に見ると、正規雇用ではテレワークを実施した者の割合は4割強であったのに対して、非正規雇用では2割弱でした。
テレワークの実施率が高い業種で労働時間の減少傾向が見られたが、仕事と生活の区別がつけづらいという課題もあります。テレワークの実施は、労働時間の減少などの面で、ワークライフバランスに好影響を与えています。教育、学習支援業をはじめ、テレワークの実施率が高い業種で労働時間が減少する傾向が見られました。

(テレワークのデメリットとして感じること)
他方で、テレワークを実施した者のうち、仕事と仕事以外の切り分けが難しいと回答した者の割合が30.1%(複数回答)に上るなど、テレワークの実施による課題も明らかとなりました。

(家事・育児に関する夫婦間の役割分担の変化)
男性が家事・育児の役割分担を増やす動きも見られたが、自粛生活で家事・育児負担の絶対量が増加し、相対的に女性の負担が増え、生活満足度がより低下しました。在宅勤務の増加や学校の臨時休業により、在宅時間が増加し、家事や育児に割かなければならない時間が増加する中で、家事・育児の夫婦間の分担について、変化が生じました。特に、勤務時間の短縮やテレワーク等、働き方が変化した男性が家事・育児の役割分担を増やす動きが見られました。家事・育児に関する夫婦間の役割分担について、子育て世帯のうち、夫の役割が増加したと回答した者の割合は26.4%、夫の働き方に変化ありと回答した女性の回答のみを集計すると31.7%と比較的高い割合でした。

(家事・育児時間の変化の推移)
他方、自粛生活により家事・育児負担の絶対量が増加したことにより、家事・育児時間自体を見ると、男性が増やした時間以上に女性が時間を増やしました。

(新型コロナ感染拡大前後の生活全体の満足度の変化)
このように男性に比べて女性の負担がより大きく増えたことも影響したためか、生活全体の満足度を見てみると、新型コロナ感染拡大前に比べ、男性、女性ともに低下したが、女性の低下幅は男性と比べて大きいものでした。

■ 外出自粛等が日常生活に与えた影響
(自宅での活動時間、外出率の増減)
接触減が求められたことで、外出頻度が減り、自宅にいる時間が長くなった。緊急事態宣言中は、人と人との接触を減らすことが求められ、不要不急の外出を避ける「ステイホーム」が呼びかけられました。実際に、2020(令和2)年4~5月の緊急事態宣言中の外出率を見ると、全国では18.8%ポイント、東京都市圏では21.3%ポイント減少し、自宅での活動時間が、全国では2時間24分、東京都市圏では2時間52分増加しました。緊急事態宣言解除後の7月末時点で見ても、新型コロナ感染拡大前と比べると、外出率は全国では1.4%ポイント、東京都市圏では3.6%ポイント減少しており、自宅での活動時間は全国では約40分、東京都市圏では約1時間増加しています。

(子どもの運動頻度、運動時間の変化)
学校休業やクラブ活動の停止、外出自粛等の影響で、子どもが身体を動かす機会が減少し生活リズムにも乱れが生じました。新型コロナ感染拡大を受けて、学校休業やクラブ活動の停止、外出自粛要請がなされました。こうした一連の措置が子どもに与えた影響について国立研究開発法人国立成育医療研究センターが実施した調査によれば、小学生・中学生・高校生では約9割で運動時間が減少し、高校生では一週間一度も運動しなかった者の割合が約3割にも上りました。

(子どもの就寝・起床時間の変化)
就寝・起床時間についても、「少しずれた(2時間以内)」又は「かなりずれた(2時間以上)」との回答は、年少以上で半数を超え、年齢が上がるにつれてこの割合は増加し、 中学生・高校生では7割以上に上りました。

(高齢者の1週間あたり身体活動時間(分)の変化)
高齢者においても、身体活動量の低下、交流機会の減少が見られ、認知機能の低下等が 懸念される。外出の自粛、人と人との接触を減らすことの影響は、高齢者にも及んでいます。高齢者の1週間当たりの身体活動時間は、2020年4~5月の緊急事態宣言下では真冬の同年1月と比較しても約60分(約3割)もの減少が見られました。

(高齢者の同居する人以外と会話する人数)
また、内閣府の調査において、60歳以上の者に、同居する人以外に何人と話している か(対面、電話、ビデオ通話等を含む。)を尋ねたところ、新型コロナ感染拡大前と比べ、 感染症影響下では1人以下の人としか会話をしていない人は増加し4割を超え、そのうち 「誰とも話さない」が2割を占め、同年12月時点においても、感染拡大前の水準には戻っていません。

(新型コロナウイルス感染症影響下における高齢者の心身への影響)
自治体のデータに基づき行われた調査の中間結果においては、高齢者の外出機会が減少し、認知機能が低下した者やうつ傾向が見られた者の割合が増加する傾向が見られます。

(持病を有している者の新型コロナ感染拡大前後の通院頻度の変化)
医療機関への受診控えのほか、健診・検診の受診状況や小児への予防接種の接種状況の低下も見られました。新型コロナウイルス感染症の影響によって、国民の受診動向にも変化が生じました。例えば、持病を有している者の通院頻度について見ると、18.3%の者が通院頻度を減らし、6.5%の者が通院自体を取りやめています。

(持病を有している者が通院を抑制した理由)
また、通院を抑制した理由としては、「医療機関で新型コロナウイルスに感染するかもしれないと思ったから」が69.2%と最多であり、「他の人に新型コロナウイルスを感染させるかもしれないと思ったから」との回答も19.1%を占めました。他にも外出自体の自粛に伴って通院を抑制したとの回答も見られるなど、国民の受診動向に、新型コロナウイルス感染症が強い影響を与えていたことがわかります。

(各種健診の実施状況)
健診・検診についても、新型コロナウイルス感染症の影響による減少が見られました。 2019(令和元)年と2020年の健診実施数を比較すると、各種健診において、緊急事態 宣言期間下の4~5月の実施状況が前年と比べて大きく落ち込んでいます。

(がん検診の実施状況)
特にがん検診については、公益財団法人日本対がん協会による調査によると、前年同月比で、4月に14.8%、5月には7.3%まで大きく落ち込みました。

(予防接種の実施状況)
予防接種については、全体としては、2020年3~4月に接種数が減少した後、緊急事態宣言解除後の5月以降に回復するといった傾向が見られました。中でも、9歳以降に接種するワクチン(日本脳炎Ⅱ期、二種混合Ⅱ期)について大きな減少が見られました。一方で0歳児に接種を開始するワクチン(B型肝炎、小児用肺炎球菌、4種混合等)については、あまり大きな増減は見られませんでした。
厚生労働省においては、こうした状況を踏まえ、適切な受診や健診・検診、予防接種の 接種等の必要性について、政府広報や「上手な医療のかかり方.jp」などで周知を行うと ともに、安心して受診ができるよう、医療機関等の感染防止対策についても各種の取組みを進めています。今般の新型コロナウイルス感染症が国民の受診動向に与える影響については、中長期的な受診動向の変容につながるものですが、国民の健康状況にどのような影響を及ぼすかを含め、引き続き注視が必要です。

(新型コロナウイルス感染症の介護保険サービス事業所運営への影響)
介護保険サービスの利用控えが見られ、ADLや認知機能の低下、家族の介護負担の増加が指摘されています。介護保険サービスについても、新型コロナ感染拡大の影響を受け、事業所単位での調査では、利用者・家族からの希望による介護保険サービスの利用控え、受入れやサービス提供の制限・縮小、さらには事業者の休業等の影響が見られました。

(新型コロナウイルス感染症の影響による利用者の状態悪化やそのリスクとして特に気になるもの)
これにより、利用者の日常生活動作(ADL)や認知機能の低下、家族の介護負担の増加等が指摘されているが、これらの影響が中長期的に継続するものであるか、引き続き注視が必要です。
(つづく)平林良人

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