実践編・応用編

日常生活におけるオンラインの浸透

投稿日:2021年11月16日 更新日:

新型コロナウいますス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしましました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出しましたのか、今何が起きていますのか、これからどのような世界が待っていますのか、知っておく必要があります。

■ 日常生活におけるオンラインの浸透
(インターネット利用用途の変化、感染前後における他者とのコミュニケーションの仕方の変化)
外出自粛に伴いオンライン化が浸透し、SNSなどの新しいコミュニケーションツールの利用が増加しました。在宅勤務の増加や外出自粛による外出の減少により、日常生活においても、オンライン化、デジタル化が浸透し、ネットショッピングやネットバンキング、インターネットでの動画視聴の利用が増加しました。また、直接対面でのコミュニケーションが減少する中で、対人コミュニケーションのツールとしてSNSやテレビ電話等の利用が増加し、「オンライン飲み会」や「オンライン帰省」など、これまでの行動を補う新しい現象も見られました。

(高齢者のビデオ通話の経験、関心の程度)
内閣府の調査によれば、高齢者についても、2020(令和 2)年 5~6月の調査時点において、約5割がビデオ通話を利用しましたことがあると回答しています。

(オンライン教育(小・中学生)とオンライン授業の受講状況)
学校一斉休業に伴い、教育現場でもオンライン化が浸透しました。小・中学校、高校、大学等の臨時休業により、対面での授業が困難となりましたことから、 学習の場面においても、オンラインを活用しました授業などが実施されました。
2020年4~5月の緊急事態宣言直後に内閣府が実施しました調査では、オンライン教育を受けています小・中学生の割合が全国で45%となりました。

(臨時休館中の児童館の取組内容)
また、児童館も臨時休館となりましたが、半数以上の児童館は放課後児童クラブの支援を実施し、約2割の児童館は電話やSNS等での相談対応を行ったほか、オンラインでの遊び等の配信などの活動も行われました。

(オンライン利用率の引上げに向けた「基本計画」を策定しました厚生労働省関係の手続)
人と人との接触を減らすため、行政手続のオンライン利用率の引上げに取り組みました。新型コロナ感染拡大を受け、行政窓口等を含め、あらゆる場面において人と人との接触を減らすことが重要な課題となりました。行政手続の観点では、テレワークの実施を阻害する押印原則について見直しを行うとともに、既にオンラインによる手続が可能な行政手続についても、オンライン利用率の更なります引上げに向けた取組みを実施することとされました。「規制改革実施計画」(令和2年7月17日閣議決定)等も踏まえ各種手続について、目標オンライン利用率や取組内容を含む「基本計画」をそれぞれ策定し、厚生労働省ホームページにおいて公表しています。具体的には、厚生年金保険や雇用保険の関連手続、ハローワークの求人申込は、現状20~30%程度のオンライン利用率を50%に、また、2021(令和3)年6月にオンライン申請システムの運用開始を控える飲食営業等の許可等の手続は、オンライン利用率を20%に引き上げることを目標に、必要な取組みを実施していくこととしています。

(電話や情報通信機器を用いた診療を実施できるとして登録した医療機関数及び初診から実施登録した医療機関数、初診からの電話及びオンライン診療の件数)
必要な医療機関の受診を確保するために、オンライン診療、オンライン服薬指導の特例を実施しました。オンライン診療については、これまで、対面による診察を経た上で行うことを原則としてきました。しかしながら、新型コロナ感染拡大により、医療機関の受診が困難となりましたこと等を踏まえ、2020年2月以降、電話や情報通信機器を用いた診療等が可能な場合を拡大し、4月には、時限的・特例的な取扱いとして、医師が医学的に可能であると判断した範囲において、初診から電話やオンラインにより診断や処方を行うことが可能とされました。その結果、オンライン診療等を実施可能とする医療機関が全体の15%程度となっています。

(電話・情報通信機器による服薬指導の実施件数)
服薬指導についても、薬剤師が、患者や服薬状況等に関する情報を得た上で、電話や情報通信機器を用いて服薬指導等を適切に行うことが可能と判断した場合には、医療機関の診察が対面であった場合も含めて、電話や情報通信機器による服薬指導等を行うことが可能とされました
加えて、診療報酬についても、電話やオンラインによる初診について初診料として214 点が算定できるようになり、また、定期的に対面診療を受けていた慢性疾患を抱える患者に対し電話やオンラインによる診療を行った場合の管理料も100点から147点に引き上げられました。
これらの措置は、平時ではない状況を踏まえ、新型コロナウいますス感染症が収束するまでの時限的なものとして導入されましたが、現在、その恒久化に向けて、今般の時限的措置の検証結果を踏まえつつ、安全性・信頼性を確保する観点から、初診でオンライン診療を実施する際のルールについて検討が進められています。

(通いの場でのテレビ電話やアプリを活用しました取組み)
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、これまで地域の通いの場を利用していた者をはじめとして、多くの高齢者が、外出を控え、居宅で長い時間を過ごすようになりました。このような環境下においては、生活が不活発な状態が続くことにより、心身の機能が低下することが懸念されることから、感染のリスクには十分に留意しつつも、健康の維持に向けた取組みが重要となります。

(オンラインでの介護予防の取組み)
このため、高齢者が居宅において健康を維持するため、介護予防・見守り等の事業を実施する市町村に対して、
①人混みを避け少人数で散歩すること、家の中や庭等で体操を行うことや、家事や農作業等で身体を動かすことなど日頃からの運動が大切
②低栄養を予防し、免疫力を低下させないため、三食バランスよく食べて、規則正しい生活を心がけることが重要
③孤立を防ぎ、心身の健康を保つためには、家族や友人、近隣住民等の交流や助け合いが大切
の3点を留意事項として整理し、周知を図りました。またその際、全国各地での取組事例を収集・整理し、地域の通いの場等の再起動、つなぎ直しに向けた取組みの実施を求めました。具体的な取組事例としては、通いの場の運営者等が、テレビ電話を活用して、自宅にいる高齢者に声かけを行うほか、画面越しに体操等を行うというバーチャル通いの場の実施などが示されています。

〇 特に大きな影響を受けた人々・活動への対応
■ 仕事や収入が急減した人への対応
□ 就業が困難となった人への支援
(非正規雇用労働者数の増減)
特に非正規雇用労働者への影響が大きく、フリーランスなど雇用者以外にも影響が生じました。第1節で見たように、新型コロナ感染拡大防止のための営業時間短縮や外出自粛などの影響により、2020(令和2)年4月以降、男性・女性ともに非正規雇用労働者への影響が大きく現れたが、特に女性のパートやアルバイトが大幅な減少となっています。

(雇用や収入に関わる影響)
また、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行ったアンケート調査において、2020年8月までの間に新型コロナウイルス感染症に関連して雇用や収入に関わる影響があったかを尋ねたところ、「影響があった」(「大いに影響があった」と「ある程度影響があった」)と回答した者のうち、「勤務日数や労働時間の減少(休業含む)」や「収入の減少」を選択した割合は、非正規雇用者が正規雇用者を上回っています。

(自身の仕事や収入への影響)
こうした影響は、フリーランス等雇用以外の形態で就労する者にも及んでおり、同機構 が実施したアンケート調査によれば、2020年4月1日時点で「フリーランスで働く者」 に新型コロナウイルス感染症に関連した影響について尋ねたところ、約5割の者が「業績への影響(売上高・収入の減少)」を挙げており、さらに、同年12月現在も自営業・内職を続けている「フリーランスで働く者」に同月現在も継続している影響について尋ねたところ、4割超の者が「業績への影響(売上高・収入の減少)」と回答しています。

(雇用調整助成金の特例)
休業を余儀なくされた労働者のために、雇用調整助成金等により、かつてない規模の支 援が行われた。今般、労働者の雇用を維持するため、従来にない規模の対策が講じられました。労働者の雇用維持を図るため、事業主が労働者に支払った休業手当等の一部を助成する雇用調整助成金について、一週間の所定労働時間が20時間未満の労働者など雇用保険の被保険者でない者を助成対象とするなど(緊急雇用安定助成金の創設)、助成対象や内容を大幅に拡充するとともに申請手続きを簡素化しました。

(雇用調整助成金支給件数及び累計支給決定額の推移)
支給実績はこれまでにない未曾有の規模となっており、2020年3月24日から2021(令和3)年3月31日まで間の累計支給決定件数は2,967,401件、累計支給決定額は3兆1,555億円となっています。

(新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金)
新型コロナウイルス感染症等の影響により仕事を休まざるを得なくなった者について、 特例措置や新たな仕組みにより支援が行われました。新型コロナウイルス感染症等の影響により仕事が休みになる際、その期間の賃金に対する支援が受けられない場合があります。そこで、事業主の求めに応じて休業しても休業手当が支払われない場合や、臨時休業した小学校に通う子どもの保護者が休職した場合などに対し、新たな給付の仕組みが設けられることとなりました。
新型コロナウイルス感染症等の影響により休業を余儀なくされた中小企業の労働者や大企業のシフト労働者等のうち、休業手当の支払いを受けることができなかった労働者に対しては、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が設けられました。これは一週間の所定労働時間が20時間未満の労働者など、雇用保険被保険者でない者も対象とされました。

(小学校休業等対応助成金・支援金)
また、小学校等が臨時休業した場合や、新型コロナウイルス感染症に子どもが感染した場合に就業できなくなった労働者に対して、正規雇用・非正規雇用を問わず、有給の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた企業に対する助成が行われました(小学校休業等対応助成金)。加えて、当該助成金は、雇用労働者ではないフリーランスなどの個人で事業を行う者については対象とならないことから、新たにこれらの者が直接申請し支給を受ける仕組み(小学校休業等対応支援金)が設けられ、支援が行われました。
さらに、雇用されている企業の健康保険などに加入している者であれば、新型コロナウイルス感染症に感染し休職せざるを得なくなった場合には、傷病手当金が支給されます。一方、被用者保険の対象とならない被用者の場合には、新型コロナウイルス感染症に感染したり、発熱等の症状があり感染が疑われたりして、療養のため働くことができなかったときでも、加入している国民健康保険の保険者が任意給付として傷病手当金を支給する旨の条例や規約を定めていない限り、傷病手当金は支給されません。そこで、今般、感染拡大防止の観点から、こうした被用者に対し傷病手当金を支給する場合に、国が特例的に財政支援を行うこととされました。
(つづく)平林良人

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