実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 128 | テクノファ

投稿日:2021年11月22日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。

□ 生活に困った人への支援
(勤労世帯の実収入の対前年・同期 実質増減率の推移)
各種給付金等に加え、緊急的な生活費などのための貸付等が前例のない規模で実施されました。 第1節で見たとおり、新型コロナ感染拡大の影響により、特定の業種を中心に雇用が減少し、雇用が継続されている者も休業等により収入減に見舞われている。こうした世帯への支援を行うため、2020(令和2)年4月の経済対策において、1人につき10万円の特別定額給付金が支給されることとなりました*4。また、子育て世帯の生活を支援するため、子育て世帯への臨時特別給付金の支給が行われたほか*5、子育てと仕事を一人で担う低所得のひとり親世帯に対しては、学校休業等による子育て負担の増加や収入の減少に対する支援として臨時特別給付金*6が支給されました。2020年の家計調査における勤労者世帯(総世帯)の実収入を見ると、こうした特別収入の大幅な伸びにより、対前年比で名目、実質とも3.4%増となっており、これらの給付が家計の下支えとなったことがうかがえます。

(緊急小口資金、総合支援資金の申請件数の推移)
また、緊急かつ一時的な生計維持のための生活費を貸し付ける緊急小口資金や、日常生 活の立て直しまでの一定期間、生活費を貸し付ける総合支援資金について、貸付対象者の範囲や貸付上限額などの特例措置が設けられるとともに、手続きを簡素化することにより、休業や失業等により収入が減少し生活が困窮した世帯の支援が行われました。2020年4月1日から2021(令和3)年3月31日までの間に、緊急小口資金の累計支給決定件数は1,106,735件、累計支給決定額は2,051.6億円、総合支援資金の累計支給決定件数は651,517件、累計支給決定額は4,940.7億円となっています。さらに、同年2月からは総合支援資金の再貸付も実施され、3月31日までの累計支給決定件数は133,929件、累計支給決定額は701.0億円となっています。
*4  給付額は1人につき1万2千円(18歳以下及び 65歳以上は8千円加算)
*5  対象児童(児童手当(本則給付)の同年4月分の対象となる 児童)1人につき、1万円の支給
*6 世帯当たり5万円、第2子以降1人につき3万円の基本給付が実施された。また、同年12月からは、基本給付対象の ①又は②に該当する者のうち、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて家計が急変し、収入が減少した者を対象に、1世帯当たり5万 円の追加給付が実施された。加えて、「非正規雇用労働者等に対する緊急支援策」(令和3年3月16日新型コロナに影響を受けた非正規 雇用労働者等に対する緊急対策関係閣僚会議)に基づき、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化する中で、低所得の子育て世帯 に対し、その実情を踏まえた生活の支援を行う観点から、低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金が支給されることとなった。

(生活保護の申請件数の推移)
生活保護の申請件数は、2020年4月の大幅増の後は落ち着いた状況となっているが、 注視が必要です。生活保護の申請件数について見ると、同4月に対前年同月比24.9%と急増したが、5 月には対前年同月比マイナスとなるなど比較的落ち着いた状況となっています。また、後述するように、被保護世帯数についても、2021年2月までの間に対前年同月比で見て大きな増加は見られませんでした。

経済が大きくマイナスとなったにもかかわらず、生活保護の申請件数等が急増していない背景には、雇用調整助成金等による大規模な支援を通じ労働者の雇用維持が図られたことに加え、前述の特別定額給付金や臨時特別給付金による家計支援、さらに、緊急小口資金や総合支援資金の貸付、住居確保給付金などの支援策が集中的に講じられた影響もあると考えられます。しかしながら、新型コロナ感染拡大の影響が長期化する中で、完全失業率も増加傾向にあり、9月以降、生活保護の申請件数も対前年比で増加傾向に転じていることから、今後、注視が必要となっています。

(緊急小口資金と総合支援資金の特例)
こうした中で12月には、低所得のひとり親世帯に対する臨時特別給付金の追加支給が行われたほか、2021年2月には、前述のように総合支援資金について、貸付を終了した世帯でも、新たに再貸付を受けることが可能となり、緊急小口資金とあわせて最大200万円までの貸付を行うこととされました。

□ 住まいに困っている人への支援
(住居を失うおそれのある困窮者への住居確保給付金の支給)
住居を失うおそれが生じている者に対して、住居確保給付金の支給とともに、入居から定着までの一貫した支援を制度化しました。離職等により経済的に困窮し、住居を失うおそれがある生活困窮者に対しては、求職活 動等を要件として、原則3か月間、家賃相当額を支給する住居確保給付金の仕組みがあります。今般、新型コロナ感染拡大の影響を踏まえ、離職や廃業には至っていないが、休業等に伴う収入減少によりこうした状況と同程度の状況にあり、住居を失うおそれが生じている者に対しても支給可能としています。加えて、感染拡大の影響が長期化する中での特例措置として、2020(令和2)年度の新規申請者については、最長9か月の支給期間を12か月まで延長可能とし、受給期間を終了した後に2021(令和3)年2月から同年6月末までの間に申請した者については、3か月間の再支給を可能にしました。

(住居確保給付金の申請・決定件数の推移)
2020年4月から2021年3月までの支給実績は、累計支給決定件数が139,761件、累 計支給決定額が306億円となっています。

(生活困窮者等の住まい対策の推進)
また、シェルター等を退所した者等に対しては、従前より生活困窮者自立支援制度による居住支援が行われてきたが、新型コロナ感染拡大の影響等により、住居が不安定になる者や、生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の制度間を行き来する者の増加が見込まれたことから、令和2年度第二次補正予算により盛り込まれた居宅生活移行緊急支援事業により、生活困窮者と生活保護受給者の居住支援を一体的かつ一貫的に実施することとされました。こうした取組みが広がることにより、住居確保が困難となった者の安定的な居住生活が可能となることが期待されます。

□ 外国人・障害者への支援
(ハローワークにおける外国人労働者に係る相談支援体制等の強化)
新型コロナウイルス感染症の影響により、外国人労働者の相談が増加していることか ら、都道府県労働局等に設置している外国人労働者相談コーナーや外国人労働者向け相談ダイヤルの体制強化を図るとともに、平日夜間及び土日に電話相談を行う労働条件相談ほっとラインを拡充しました。また、ハローワークにおいては、外国人を雇用する事業主に対する雇用維持のための相談支援や、外国人求職者に対する相談支援対応のための体制強化を行ったほか、外国人労働者に対し雇用等に係る情報を迅速かつ正確に提供するため、多言語での情報発信体制を整備しました。

(外国人労働者向けリーフレット)
加えて、会社に雇用されている外国人に対しては、外国人であることを理由として、外 国人の労働者を、日本人より不利に扱うことは許されないことについて、
1.会社の都合で労働者を休ませた場合に会社が支払う休業手当は、日本人の労働者と同じように、外国人の労働者にも支払わなければならないこと
2.労働者の雇用を守るために国が会社に支払う助成金は、日本人の労働者と同じように、外国人の労働者のためにも使えること
3.会社を休みたいときは、日本人の労働者と同じように、年次有給休暇を使うことができること
4.子どもの学校が休校になったために会社を休むときは、年次有給休暇のほかに、会社に特別な休暇制度があれば、その休暇を使うことができること
5.解雇は、会社が自由に行えるものではなく、会社が外国人の労働者を解雇する

ときは、日本人の労働者と同じルールを守らなければならないこと、を記載したリーフレットを作成し、やさしい日本語や外国語(14言語)に翻訳して周知を行っています。

技能実習生については、認可法人外国人技能実習機構において、「母国語相談」として主要な言語により電話やメール等で相談対応を行うほか、新型コロナウイルス感染症による影響により解雇された場合等の各種支援策などについて同機構ホームページやSNSにより、母国語等で発信を行っています。また、実習実施者等には雇用維持のための支援策を案内するとともに、実習実施が困難になった場合には、監理団体及び実習実施者に対して新たな実習先を確保するよう指導した上で、外国人技能実習機構が新たな受け入れ先となり得る監理団体の情報を提供するなどの支援を行っています。

一方、出入国在留管理庁においては、新型コロナ感染拡大の影響により解雇等となり、 実習が継続困難となった技能実習生等に対し、一定の要件の下で特定産業分野(特定技能制度の分野)において在留資格「特定活動」を付与するとともに、自力で再就職先を探すことが困難な外国人に対しては、再就職のためのマッチング支援を行うなど、雇用を維持するための支援を行っています。

(障害者の職業紹介等の状況)
障害者の就業に関しては、特に、就労移行支援事業において在宅雇用への移行が増加している。新型コロナ感染拡大により、障害者雇用にも影響が生じています。障害者の職業紹介等の状況について見ると、解雇者数は前年同月に比べ、2020(令和2)年7月に一時的に大幅に増加した後、落ち着いていた。2021(令和3)年1月に再び増加したが、足下では落ち着きの兆しが見られます。専用求人数は対前年同月比でマイナスが続いていたが、 2021年3月にプラスに転じたほか、就職件数は2020年5月に大幅に減少した後、減少幅は縮小しています。

(就労継続支援A型・B型事業所における平均月額賃金・工賃の状況)
就労継続支援事業所における生産活動の状況を見ると、就労継続支援A型*8では、 2020年4~7月の賃金は、5月を除き前年同月を上回ったが、就労継続支援B型*9では、 前年同月の工賃を下回った。このため、就労継続支援事業所の生産活動の存続、再起に必要となる費用の支援、障害者就業・生活支援センターの支援体制の強化など、障害者の就労を維持・確保するための機能強化が図られました。

(就労移行支援事業所における就職活動支援の状況)
また、就労移行支援*10事業所における就職活動支援の状況を見ると、一般就労への移行者数は前年度に比べて約1割の減少となり、特に2020年5~6月は前年同月比2割超の減少となりました。また、一般就労への移行者のうち在宅雇用者数は、前年から大きく増加しました。

さらに、感染拡大防止の観点から、就労系障害福祉サービス事業所を利用する障害者の 在宅就労・在宅訓練を促進するため、テレワークのシステム導入経費等を補助することに加え、「導入に向けた個別コンサルティング」や「在宅での作業受注に係る営業活動」に係る経費補助などの支援も行われました。

*8 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち適切な支援により雇用契約等に基づき就労する者につき、生産活動その他の活動の 機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。

*9 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者のうち通常の事業所に雇用されていた障害者であってその年齢、心身の状態その他の事情 により引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行う。

*10 就労を希望する障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれるものにつき、生産活動、職場体験その他の活 動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、 就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援を行う。
(つづく)平林良人

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