実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 130 | テクノファ

投稿日:2021年11月26日 更新日:

このコーナーは、活躍している「キャリアコンサルタント」からの近況やキャリアコンサルタントからの近況や情報などを発信いたします。今回はS.Sさんからの発信です。

よく耳にする話だが、なぜか歳を取るほど時間の流れが速く感じられるようになるという。僕は、この10月に誕生日を迎えて59歳となった。「ああ、もう50代だよ~まいったねえ」・・と言って笑っていたのがつい最近のことのように思えるのだが、あっと言う間に10年が過ぎ、いわゆる「アラ還」にさしかかろうとしている。小中学生相手の仕事をしていると、子どもたちが感じている時間と僕が実感している時間が同じではないことに気づかされる。

僕にとって一日の勤務としての6時間~7時間の中に、彼らは比較にならないほど多くの体験過程を過ごしているのだ。
たとえば、大人にとって「泣く」という行為は、よほどの事情があってのことである。「成人」と呼ばれる年齢に達している者にとっては、久しく泣いたことがないという方が大半であろう。だが、子どもは登校してから下校までの短い時間帯に、幾度も泣き叫び、ちょっとしたことで怒り、そうかと思えばすぐに笑い、思い通りにならないだけで拗ねてしまうといった具合だ。おそらく僕ら成人した者たちが、一ヶ月ほどかけても体験できないほど多くの事柄を、彼らは一日の中において見出しているのである。

以前、「ゾウの時間とネズミの時間」という話を聞いたことがある。ゾウとネズミの寿命には大きな開きがあると思いきや、じつは生まれてから死ぬまでの心拍数や呼吸の回数がほぼ同じであり、それぞれの世界感や体感的な意味で寿命は同じ長さであるそうだ。なるほどリスやネズミの動きはとても早く、巨体のゾウや鯨はスローモーである。ならば、個々に感じる時間の速さとは、凝縮された密度と比例するのではないか・・という仮説を立ててみたくなる。

一人称的な意味で、本人にとっての世界観は人それぞれであり、もちろん画一化されているわけではない。それゆえ、一概に普遍化や比較はできないものの、喜怒哀楽の起伏が大きい幼少期には長く感じられ、日常がマンネリ化かつ平穏な状態と化している高齢の者たちにとっては短く感じられたりもする・・

また、年齢に関係なく、楽しいことをやっていたり、夢中で何かに取り組んでいる時間は速く感じられる気がするし、歓迎したくない状況下における苦痛の時間はとても長く感じられるようにも思う。そう考えると、単に密度だけの問題ではなく、精神的な影響も大きいと思われ、自分が状況や事象をどのように捉え、感じているかに拠って時間が伸びたり縮んだりするものだと捉えるべきかもしれない。

「少年老い易く学成り難し」と言うが、幾多の先人たちもまた、同じ感慨に耽ったのだろうか。ところで、キャリアコンサルタントがキャリアを語るときに欠かせないのは、いつか必ず訪れる「人生終焉の時」について、いかに実感的にそれを自覚し認識しているかである。生きて活動できる時間には限りがあり、充実した人生を送る者もいれば、流れに身を任せるだけで反応的かつ無自覚的に行動し、時間だけが通り過ぎゆく者もいる。

僕は、自分の人生はこれでよいのだろうか?という不安や疑問が湧くことが多いが、それは漠然とした焦燥感と伴に高まっていき、就寝前になると「今日は無駄な時間の過ごし方をしてしまったのではないか・・」という後悔の念に苛まれることがある。こういった想いが、無駄にしてしまった時間と、その速さとが相まって重い気持ちとして顕在化されるのだ。

ところで、ひとつの理想として掲げられる言葉としての「自己実現」だが、これは単なる欲求不満の充足を意味する言葉ではない。多くの者が「夢」と「欲求の解消」とを混同し、欠乏的な欲求を埋めることだけに躍起になりながら人生を終えていくのではないか・・と思う。自己というからには、未だ自覚していない潜在的(無自覚)な領域をも含むはずである。この本質的な自己について理解することなくして自己実現などあり得ない。なぜなら、自分が本当はどうしたいかが分からないまま夢など語れるはずがないからである。

だが、自己を理解することは言うほど容易くはなく、一生を要しても解明できないほどの深さを持っている。生涯に渡って為される継続的発達とは、際限なき自己発見と、未だ見ぬ自分の内面的開発の連続と言ってもよいだろう。その意味で、時間とは自己発見の旅に費やされることが理想ではないだろうか。もちろん欲求に呑み込まれ、自我だけが拡大してしまった者にとっての人生は、短いとか長いとか言う以前の問題であることは言うまでもない。

古代ローマの哲学者であったセネカは、「人生は短い。しかし、その短い人生を選んでいるのは他でもない自分自身なのだ」という言葉を残している。この言葉については、いろんな解釈ができるだろうが、自らの発達や進化にどれだけコミットするかによって、人生の質や体感的な長さは違ってくるという意味に取ることもできる。時間が速く感じられる・・というのは、じつはそう感じている今の自分は無自覚的に選択しているだけなのかもしれない。

次はキャリアコンサルタントのT.Fさんから活躍している「キャリアコンサルタント」からの近況や情報などを発信いたします。
今回からキャリアコンサルタントコラムを担当させて頂くT.Fです。今回は初回ですので自己紹介も兼ねて私が関わるキャリアカウンセリングの領域と私がカウンセリングを行う対象者について書かせて頂きます。
私のキャリアコンサルタントとの出会いは9年近く前になります。当時は企業で人事・労務の仕事をしていましたが、仕事に悩む社員と接する自分の対応に何となく不全感をもっていました。

そんなときに知ったのがキャリアコンサルタントというものでした。そして紆余曲折を経て、現在は自治体の委託を受けてキャリアコンサルタントと精神保健福祉士として主に生活保護受給者の就労支援に携わっています。主な仕事の領域は福祉事務所でのカウンセリングと研修センターで行う就労に向けたトレーニングですが、私の接する人たちは以前勤めていた企業での悩む人たちとは全く趣を異にします。

当初はそのギャップに戸惑う毎日でした。現在、私が接する人達は自分から進んで面談に来られる方は殆どいません。市のケースワーカーに背中を押されて”しぶしぶ”やってくる人ばかりです。夫々が様々な事情で生活保護を受けることになり、今の生活を脱したいとは思いながらも、自信を失い前に進むことが出来ない人達です。現在に至る事情や就労を阻害する要因も長期の持病や怪我、精神疾患などを抱えた方、母子、刑余者、障がい 等いろいろで、就労には程遠いと思えてくる方も珍しくありません。

そのような相談者とのカウンセリングは一筋縄では行かないケースが大半になりますし、就労までを支援するとなるとカウンセリングだけでは就労というゴールまでたどり着けません。骨を折って就労まで支援する前に支援者自身の心が折れそうになることも、また、怒りに感情に支配されそうなこともしばしばです。通勤するお金が無い、携帯電話が無い、やる気も無い、仕事してないブランク10年! 、 おまけに腰痛で仕事に制限が・・・・、そんな方をどうやって意欲を持ってもらい、就労まで支援していけばよいのでしょうか。

今年の4月から生活保護に陥る前に自立した生活に戻れるよう、生活困窮者自立支援法が施行され、各自治体で温度差はあるにせよ支援が動き出しました。これまでの社会問題となっている生活保護の受給者対応と合わせますと多くのキャリアコンサルタントがこのような人達の就労支援に携わるようになってきました。キャリアコンサルタントの活躍する領域が拡大することは大変喜ばしいことではありますが、現場では私と同じような体験をしながら戸惑っている方が多いのではないでしょうか。

次回からは私の企業でのカウンセリングも含め、就労支援でのカウンセリング体験をお伝えしていきたいと思います。皆さんのカウンセリングのお仕事の参考になれば幸いです。
(つづく)K.I

-実践編・応用編

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