実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 132 | テクノファ

投稿日:2021年11月30日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。

□ 配偶者からの暴力の増加の懸念
(家族と過ごす時間の変化)
自宅で家族と過ごす時間が増加する中で、配偶者からの暴力の増加が懸念されます。長期間にわたる外出自粛等により、自宅で過ごす時間が増加し、家族 と過ごす時間も増加しました。このような状況下において、配偶者からの暴力(DV)の増加が懸念されます。

(DV相談件数の推移)
自治体が運営する配偶者暴力相談支援センターと内閣府 が運営する「DV相談プラス」に寄せられた相談件数(合計)の推移を見ると、2020(令 和 2)年 4月から 2021(令和 3)年 3月の相談件数は、19万0,030件であり、2019年度全体の相談件数の約1.6倍となっています。

(感染防止に配慮した児童虐待・DV等相談支援体制強化事業)
このように配偶者からの暴力が懸念される中、相談支援を担う民間団体等に対し、テレビ電話を活用した相談支援や、24時間365日対応を含めたSNSなどを活用した相談窓口の開設の支援が行われています。

□ 女性の心の不調と自殺動向
(新型コロナウイルス感染症の影響下において深刻化した様々な要因が女性の自殺の増加 に影響を与えている可能性がある)
これまで見てきたように、新型コロナ感染拡大の影響は、就労と家庭生活の両面で女性 に集中的に負荷がかかることとなり、その結果、女性の精神面にも大きな影響を及ぼして いることがうかがえます。 例えば、新型コロナウイルス感染症に関する心の健康相談について、都道府県・指定都市の精神保健福祉センターが電話相談を受けた件数を見ると、いずれの月も女性の相談件数の方が男性の倍近くとなっています。

(自殺者の原因・動機別比較)
自殺者の動向を見ても、2020(令和 2)年 7月以降、女性の増加が顕著となっています。警察庁「自殺統計」によれば、女性自殺者の原因・動機について、2019(令和元)年と 2020年を比較すると、健康問題が大幅に増加しているほか、家庭問題や勤務問題などが増加しています。

(2020年各月の自殺増減における寄与度)
さらに、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターの分析*17では、「同居人のいる女性」と「無職の女性」の自殺が自殺率を押し上げており、こうした女性の自殺の背景として、経済生活問題、DV被害、育児の悩みなど自殺の要因となりかねない様々な問題が新型コロナウイルス感染症の影響下において深刻化し、自殺者数の増加に影響を与えている可能性等が指摘されています。
こうした女性の心の不調が課題となる中で、女性を取り巻く様々な問題を支援するため、ひとり親世帯臨時特別給付金などの経済的支援、ハローワークにおける非正規雇用労 働者等に対する相談支援体制の強化などの就労支援、DV等に関する新たな相談窓口の開 設などが行われているが、そもそも対象者がこれらの情報にアクセスできていないとの指 摘もあることから、厚生労働副大臣をチームリーダーとする「コロナ禍の雇用・女性支援 プロジェクトチーム~もっとあなたを支えたい~」を開催し、困難な問題を抱える方々に 必要な支援が十分に行き渡るよう議論が行われています。

□ 妊娠・出産への影響
(婚姻件数と出生数の推移)
2020年の年間婚姻件数は大幅に減少。妊娠届数も5~7月に大幅な減少が見られました。2019(令和元)年 5月に平成から令和への改元が行われたことの影響(いわゆる「令和婚」)にも留意が必要であるが、人口動態統計速報によれば、2020(令和 2)年 5月以降、毎月の婚姻件数が前年同月に比べ減少傾向にあります。また、2020年の年間婚姻件数は、前年に比べて12.3%の減少となっており、1950(昭和 25)年の15.1%の減少以来の大幅な減少となったほか、2020年の年間出生数は 2019年を約 2万4千人下回っています。

(月別妊娠届出数の推移)
加えて、妊娠届出数は、2020年5月に対前年同月比で 17.6%減少するなど、2020年 5月から7月の3か月の累積では対前年比で10%を超える大幅な減少が見られたが、同年8月から2021(令和3)年1月にかけて、下げ幅はやや小さくなっています。 新型コロナ感染拡大が出生数に及ぼす影響については、感染拡大期の妊娠動向が出生に現れる2021年以降の推移を観察する必要があり、現時点での明確な判断は困難であるが、同様の現象は他の先進国でも観察されています。

(新型コロナウイルス感染症流行期の妊産婦の支援)
新型コロナウイルス感染症の流行が続く中で、妊婦は日常生活等が制約され、自身のみ ならず胎児の健康等について、強い不安を抱えて生活をしている状況にあります。

(新型コロナウイルス流行下における妊産婦総合対策事業)
こうした中、妊娠中の女性労働者の母性健康管理措置が適正に講じられるよう、男女雇用機会均等法に基づき、「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置」が設けられるとともに、当該措置により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者のために有給の休暇制度を設け、当該休暇を取得させた事業主を支援する助成制度が設けられました。また、感染拡大防止のため、予定していた里帰り出産が困難となり、家族等による支援を得られず孤独の中で産褥期を過ごすことに不安を抱える場合もあります。2020年 9月に妊娠中又は同年に出産し育児中の女性を対象に実施したアンケ―ト調査では、妊婦は新型コロナウイルスの感染の不安を感じ、出産後の鬱(うつ)のリスクが高かった可能性があるとされています。このような妊産婦の出産前後の不安をできる限り軽減するため、分娩前の新型コロナウイルス検査の実施、オンラインによる保健指導等の実施、里帰り出産が困難な妊産婦に対する育児等支援サービスの提供など総合的な支援が行われています。

■ 子ども
□ 生活の変化
(学校等の臨時休業が実施され、子ども達は在宅生活を余儀なくされた一方、在宅困難な 児童のために居場所確保が行われた)
新型コロナ感染拡大に伴って、家族以外の者との接触を極力回避することが求められる 中で、その影響は子どもにも大きく及ぶこととなりました。
2020(令和 2)年4月の緊急事態宣言等を受け、全国9割を超える幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等が臨時休業を実施し、これらの学校等に対しては、人の集まる場所等への外出を避け、基本的に自宅で過ごすよう指導することが要請された*20。 また、保育所等については、原則として事業が継続されたものの*21、必要な者に保育が提供されないことがないように十分検討した上で、感染の防止のため、仕事を休んで家にいることが可能な保護者に対して、市区町村の要請に基づき、園児の登園を控えるようお願いすることとされました*22。こうした事態を受けて、通常の生活ならば登校、登園している時 間帯に子ども達は主に在宅で過ごすこととなりました。

(小学校の臨時休業期間中における子供の居場所確保の取組状況)
一方、両親の就労などにより、学校の臨時休業期間中に在宅が困難な子どもについては、その居場所確保に向けた取組みが併せて行われました。公立学校では、約5割の自治体において課業時間内の学校受入れが行われたほか、特別な配慮が必要な子どもについても課業時間内の学校受入れや放課後等デイサービスの利用継続が図られた自治体もありまし*23。

(特別支援学校等の臨時休業に伴う放課後デイサービスへの支援等事業)
加えて、特別支援学校等の臨時休業に伴う放課後等デイサービスの利用にあたっては、追加的に生じた利用者負担の軽減や、休業中の放課後等デイサービス職員による障害児家庭への訪問などの支援が行われました。
*20 「新型コロナウイルス感染症対策のための小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業について(通知)」(令和2年2月28日)
*21 最も多いときには全国で100か所を超える保育所等が休園となった。
*22 厚生労働省子ども家庭局総務課少子化総合対策室・保育課・子育て支援課事務連絡「緊急事態宣言後の保育所等の対応について」(令和2年4月7日)
*23 2020年3月10日時点において教育委員会が把握している情報に基づく任意のアンケート調査(「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業実施状況(子供の居場所の確保等)アンケート調査」)に基づくもの。

(運動の機会が減り、テレビやスマホ、ゲームなどの時間が増加)
在宅時間が大きく増加し、他者との直接的な交流が絶たれたことに伴い、勉強時間を除き子どもがテレビやスマートフォン、ゲームなどを見ている時間(スクリーンタイム)が 増加しました。

(子どものスクリーンタイムの変化)
国立研究開発法人国立成育医療研究センターが実施したアンケート調査(以下、この項において「子どもアンケート調査」という。)によれば、2020年1月時点と比べ同年4~5月調査では、小学生・中学生・高校生のいずれも8割程度でスクリーンタイムが増加したほか、一日のうち4時間以上テレビやスマートフォン、ゲームなどを見ている割合は、小学生は約3割、中学生・高校生では5割を超えました(保護者回答)。

(子どもの学習時間の変化)
一方、自宅での学習時間については、小学生・中学生・高校生ともに去年よりも「ふえた」と回答した割合が最も多いが、「へった」も 2~3割となっており、年齢が高くなるほど「へった」の割合が増加しています(子ども回答)。また、運動時間について 2020年 1月時点と比較すると、小学生・中学生・高校生いずれも9割程度が「今のほうが短い」と回答しており、特に高校生は一週間「一度も運動しなかった」との回答が3割を超えています(保護者回答)。

(ストレス反応があったと答えた子どもは7割超)
子どもアンケート調査によれば、「最近集中できない」や「すぐにイライラする」など、 いずれか 1つ以上のストレス反応を選択した子ども(小学生・中学生・高校生)は、2020年4~5月の調査では全体の75%、同年6~7月の調査では全体の72%、同年9~10月の調査では全体の73%と、高い割合のまま推移しているほか、同年11~12月の調査では、回答した小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に、中等度以上のうつ症状が見られました。新型コロナウイルス感染症の影響下における生活の変化や、そこから副次的に発生する様々な要因が、子どものメンタルヘルスに大きな影響をもたらしている可能性があります。
(つづく)平林良人

-実践編・応用編

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