キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について説明していますが、前回まではキャリアコンサルタントに関わりの深い「職業能力開発促進法」第5条第1項の規定に基づき、職業訓練や職業能力評価など、職業能力の開発に関する基本となるべき計画を策定する職業能力開発基本計画の第7次、第8次、第9次の職業能力開発基本計画について説明しました。今回は第10次職業能力開発基本計画(平成28年度から平成32年度(令和2年)までの5年間)について概要を説明します。
厚生労働省の資料
https://www.pref.chiba.lg.jp/sanjin/shingikai/kentoukai/dai10ji/documents/siryo04.pdf
より引用説明します。
第10次職業能力開発基本計画 - 生産性向上に向けた人材育成戦略-
人口減少社会、グローバル化の進展、AI、ビッグデータ等を背景として、ビジネス環境・就業環境が変化する中、人々が能力を高め、その能力を存分に発揮できる全員参加の社会と人材の最適配置を同時に実現し、我が国経済を量の拡大と質の向上の双方の観点から成長させる「生産性向上に向けた人材育成戦略」として、職業能力開発施策の基本的方向を定める。
● 今後の方向性
1. 生産性向上に向けた人材育成の強化
国、企業、民間教育訓練機関、学校等の教育訓練資源を効果的に活用し、国全体の人材育成の抜本的な強化を図る。
2. 「全員参加の社会の実現加速」に向けた職業能力底上げの推進
女性・若者・中高年齢者・障害者等、全ての人材が、その能力を存分に発揮できる「全員参加の社会」の実現加速に向け、個々の特性やニーズに応じた職業能力開発の機会を提供し、一人一人の能力の底上げを図る。
3. 産業界のニーズや地域の創意工夫を活かした人材育成の推進
様々な主体が有機的なネットワークでつながり、地域特性や、産業ニーズを反映した人材育成を、地域レベルで実施していく。
4. 人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開
人材の最適配置を図るとともに、個々の労働者の能力を最大限に活かすため、職業訓練制度や職業能力評価制度を車の両輪とした労働市場インフラの戦略的展開を図る。
●(上記の今後の方向性を実現するための)今後の職業能力開発の基本的施策の展開
1. 上記1の、生産性向上に向けた人材育成の強化を実現するために
○ 専門実践教育訓練給付制度等におけるIT分野の講座拡充検討、IT分野に関する職業訓練の推進等
○ 国家資格化されたキャリアコンサルタントの質の保証や専門性向上、セルフ・キャリアドックの導入の推進、教育訓練給付制度の周知・普及、等
○ グローバル人材育成等のためのキャリア形成促進助成金・キャリアアップ助成金による訓練機会の確保、教育訓練休暇制度等の導入に取り組む企業への支援、認定職業訓練制度の活用促進等
2. 上記2の「全員参加の社会の実現加速」に向けた職業能力底上げの推進を実現するために
○ 育児等と両立しやすい短時間訓練コースの設定、訓練受講の際の託児支援サービスの提供
○ 児童・生徒等への職場体験等の支援、就業経験の少ない若者に対する日本版デュアルシステムや雇用型訓練の推進、地域若者サポートステーションにおけるニートや高校中退者等への支援の強化
○ 中高年の在職中のキャリアアップや再就職に向けた支援
○ 障害者の特性やニーズに応じた訓練の実施
○ キャリアアップ助成金、雇用型訓練等による非正規雇用労働者の支援等
3. 上記3の、産業界のニーズや地域の創意工夫を活かした人材育成の推進を実現するために
○ 産学官が連携した地域コンソーシアムの構築、就職可能性を高める職業訓練コースの開発・検証
○ 企業や地域の多種多様なニーズに対応した新たな人材育成プログラムの開発等の支援
○ 地域訓練協議会における多様な産業のニーズの把握、産業界や地域のニーズを反映した職業訓練の実施分野及び規模の設定
○ 教育訓練機関への訓練指導員派遣等による連携の強化等
4. 上記4の、人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開を実現するために
○ 我が国の産業・職業構造の中長期的な変化を見据えた人材ニーズの把握
○ 総合的な訓練計画の策定、職業訓練におけるeラーニングの導入検討や、最先端の技術革新やグローバル化に対応した人材育成
○ 対人サービス分野を重点とした技能検定の整備、認定社内検定の普及促進等による職業能力
● 評価制度の構築
○ ジョブ・カードの活用促進
○ 企業における人材育成投資の促進
○ 地域の職業能力開発行政の拠点としての都道府県労働局の機能強化等
(つづく)A.K