実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 137 | テクノファ

投稿日:2021年12月28日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。

〇 海外の取組み
ここまでも国内のコロナウイルスに関する影響についてお話をしてきましたが、世界各国も日本に劣らず大きな影響を各方面に受けております。ここからは海外の様子についてデータに基づき話を展開していきたいと思います。
■ 経済への影響
(各国の実質GDP成長率の推移)
各国ではロックダウン等により経済活動が縮小・停止したことに伴い、実質GDPは大きく落ち込みました。 新型コロナウイルスの感染は、世界各国においても2020(令和2)年3月頃から急速に拡大しました。爆発的な感染者の急増が起きた国々では、都市封鎖、強制的な外出禁止、生活必需品以外の店舗閉鎖など、我が国でとられた緊急事態宣言と比べてもより強硬な感染防止のための措置(いわゆる「ロックダウン」)が講じられました。
このように経済活動の多くを止める措置を講じたことで、各国においても、経済や雇 用、人々の生活に大きな影響が生じました。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツにおける2020年4-6月期の実質GDP成長率は、より強硬な措置が講じられたことも影響し、前期比年率換算で3割近い落ち込みとなった我が国を超える規模の落ち込みとなっており、イギリスでは5割を超える規模となったとみられます。

その後、2020年5~6月に入るとアメリカを除き感染は一旦収束し、各国のロックダ ウンも段階的に解除されました。停止していた経済活動も再開され、7-9月期には各国でプ ラスに転じ、前期の落ち込みを一部取り戻しました。しかし、10-12月期には、感染が再拡大し、ヨーロッパ諸国では再び経済活動が抑制されるなどしたため、回復の動きは弱く なりました。これにより、2020年の実質GDP成長率は各国で前年比マイナスという結果となり、景気は依然として厳しい状況が続いています。

(各国の新型コロナウイルス感染症に対する経済対策支出のGDP比)
経済活動の停止の影響に対応するため、各国とも巨額の経済対策を実施しました。このような経済活動の停止による強い感染防止の措置を講じたことに伴って、社会・経済活動に生ずる大きな影響に対応するため、各国とも大規模な経済対策を実施した。2020年12月末時点のIMFの推計値によれば、主要国においては、政府支出と融資等を併せてGDP比で約2~4割に及ぶ巨額の経済対策支出が行われました。これによれば、GDPの4割を超える規模となった我が国の経済対策は、主要国の中でも大きなものとなっています。

■ 各国における雇用・労働分野の特別措置
(雇用・労働分野で実施された特別措置)
各国は、雇用労働者への経済的支援のための様々な特別措置を実施しました。企業の事業活動の縮小に伴い、雇用労働者は就業の機会が失われ、失業の危機にさらされることとなったため、各国では、雇用労働者への経済的支援のための様々な特別措置が実施されました。
イギリスでは、2020年4月に労働者を休業させ、その雇用を維持した事業主に休業時の賃金を支援する制度が時限措置として新設されたほか、ドイツやフランスにおいては、一時的な操業時間の短縮に伴い賃金減少があった場合に、事業主に対する短縮分の賃金支援を実施することなどにより、労働者の雇用維持が図られました。

また、アメリカでは、連邦パンデミック失業補償(FPUC)が新設され、失業給付の受 給者に対し、給付額を上乗せする制度が新設されました。この上乗せの対象には、通常の失業保険の失業給付受給者に限らず、パンデミック失業支援(PUA)、パンデミック緊急失業補償(PEUC)、時間短縮補償*10など連邦法で定められた失業給付の受給者が広く対象とされました。
*10 事業主がレイオフに代わり従業員の全員又は一部について労働時間を短縮する旨、州政府に届出を行った場合、医療・退職給付を維持することを条件に、労働時間を短縮した割合に応じて失業給付を一部支払う制度。

(失業給付の対象外の労働者や個人事業主に対する支援や、学校休業に伴う保護者への支援などは、通常の制度では対象外となっている者へも実施された)
今般の新型コロナウイルス感染症による経済活動の縮小・停止の影響は、失業給付の受給要件を満たさない労働者や、フリーランスを含む個人事業主など、各国における通常の失業給付や雇用維持制度の対象とならない者にも広く及ぶこととなりました*11。各国で実施された経済的支援については、新たな制度の創設、既存制度の拡充などにより、これらの者に対しても支援を実施する対応がとられました。日本においても、雇用調整助成金について、雇用保険被保険者でない労働者も含め大幅な拡充を行うとともに、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金が創設されました。

また、我が国では持続化給付金等が実施されたが、各国においても、フリーランスを含む個人事業主など雇用契約によらない事業活動を行う者に対し、売上減などに関する資金援助や家賃支援などの経済的支援が実施されました。
さらに、各国では、2020年3~5月頃のロックダウンに伴い、異例の長期にわたる学 校等の閉鎖が実施されたため、自宅で子どもの世話をするために就業が困難となる事態が発生しました。これに対し、我が国で小学校休業等対応助成金・支援金が創設されたように、各国においても、保護者に対する経済的支援が実施されました。
*11「OECD Employment Outlook 2020」では、「非典型雇用の労働者、例えば個人事業主や臨時的雇用、パートタイム雇用の従属 被用者は雇用喪失と所得喪失に直面する確率が高い。欧州OECD諸国では封じ込め策の影響を最も受けた産業における雇用の40%をこれらの労働者が占めている。」と言及している。

(各国の完全失業率)
失業給付の取組みをより強化した国では、失業率が上昇した一方、我が国のように雇用 維持の取組みをより強化した国では失業率の上昇が抑えられました。前述のとおり、主要国のうち、日本をはじめ、イギリス、フランス、ドイツなどでは、 雇用維持のための制度を新設・拡充することにより、企業の雇用維持を支援した一方、アメリカでは、失業給付等の受給者に対する給付額の上乗せ措置が講じられました。

(各国の完全失業率の変化)
この結果、日本、イギリス、フランス、ドイツにおける完全失業率の上昇は、経済活動の縮小・停止後も比較的低く抑えられていますが、アメリカやカナダでは2020年春に完全失業率が急増することとなりました。感染拡大前の2020年2月の完全失業率と、同年12月までの各国の完全失業率の変化を見ても、その違いは明らかです。OECDは、アメリカやカナダ以外の大半のOECD諸国で失業者が大幅に増加しなかったことに対して、雇用維持政策が果たした役割が大きいと分析しています*12。
*12「OECD Employment Outlook 2020」

■ 生活支援に関する諸外国の施策
(多くの国で、低所得世帯や子育て世帯を対象とした生活支援や、住居の喪失を防ぐための施策が実施された)
新型コロナ感染拡大の中で、生活支援のために実施された施策を見てみると、主要国の多くで、低所得世帯や子育て世帯を対象として、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により困窮に陥ることを防ぐための支援が実施されました。
また、多くの国において、失業や収入の減少等に伴い住居を喪失することがないよう、 住宅支援策も実施されています。日本は休業等により収入が減少し、離職・廃業と同程度の状況にある者等に対し、住居確保給付金の支給が行われたほか、アメリカやイギリスでは、住宅ローンの支払い猶予や、家賃滞納を理由とした家主による立ち退き要請禁止、ドイツやフランスでは、一定要件を満たす低所得者に対する家賃の支給・補助などが行われました。

(生活支援にかかる諸外国の施策)
国民一般への支援が行われたアメリカと日本との比較をします。日本では、口座情報の把握が課題となりました。 アメリカと日本では、国民一般への支援として、大規模な給付が実施されました。アメリカでは、3回にわたって給付が行われたが*13、所得が増えるにつれて徐々に減額される措置が講じられています*14。これに対し、日本では、支給の迅速性を優先して、所得制限なしに1人当たり10万円の特別定額給付金が支給されました。
両国の支給において、大きく異なるのは給付の方法でした。アメリカでは、一定の収入がある場合、給与所得者を含む全ての納税者が原則確定申告を行うこととされていることから、これらの給付は、確定申告情報に基づき、税の徴収機関である内国歳入庁により実施されました。この場合、受給権者による申請は不要で、受給権者の税の還付金口座に自動的に振込がなされるか、還付金口座の登録がない場合には、小切手の送付が行われました*15。

一方、日本では、市区町村が、申請書等を住民基本台帳に記録された受給権者に送付し、これに対し、すべての受給権者が書類の返送かマイナンバーカードによる申請を求められました。日本の場合、災害や感染症などの緊急時の給付金等の支給に利用できる口座情報を管理している機関が存在しないことから、特別定額給付金の受給権者の口座情報を登録してもらう必要があったためです。
こうした状況も踏まえ、2021(令和3)年の通常国会に、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施を図ることを目的として、公的給付の授受に利用することができる預貯金口座をあらかじめ登録し、個人番号を利用して管理することを可能とする法案*16がデジタル改革関連法案の一部として提出され、成立しています。
*13 支給額は、1回目:成人1人当たり最大1,200ドル(約13.2万円)、非成人500ドル(約5.5万円)、2回目:1人当たり最大600ドル(約6.6万円)、3回目:1人当たり最大1,400ドル(約15.4万円)。1ドル=110円で計算。
*14 世帯構成によって減額基準が異なり、例えば、単身の場合、1回目の給付では年収7万5千ドル(約825万円)を超えると減額され、年収9万9千ドル(約1,089万円)で支給額がゼロになる。
*15 なお、確定申告を実施していない者は、口座情報等を内国歳入庁へ登録する必要がある。
*16 公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(令和3年法律第38号)

〇 新型コロナウイルス感染症の感染拡大と社会保障
今回の新型コロナ感染拡大により、私たちの暮らしと仕事には様々な影響が生じ、それらに対処するため、社会保障分野においても様々な措置が講じられたが、一方でその過程を通じて、新たに浮き彫りとなってきた課題もあります。
ここでは、国民の暮らしや仕事との関連で、今回のこれまでの経験から見えてきた以下の5つの課題について整理していきます。

(新型コロナウイルス感染症の感染拡大により顕在化してきた5つの課題)
1 危機に強い医療・福祉現場
2 社会保障におけるデジタル技術の実装化
3 多様な働き方を支えるセーフティネット
4 性差によって負担に偏りが生じない社会づくり
5 孤独・孤立を防ぎ、つながり・支え合うための新たなアプローチ
これらは、いずれも、今回の新型コロナ感染拡大以前から存在していた課題ではありますが、今般の事態を受けて顕在化し、対応の加速化が求められることとなったものです。また、相互に関連する課題であり、それぞれの課題への対応が進むことによって、暮らしと 仕事を支えるセーフティネットの重層化につながることが期待されます。

■ 危機に強い医療・福祉現場
今般の新型コロナウイルス感染症への対応を通じて、感染症の感染拡大期やクラスター発生時の医療福祉人材の確保、病床や医療機器・材料等の確保の困難さが浮き彫りとなりました。このことは、今後いつ発生するか分からない新たな感染症などの健康危機や、大規模な災害などを念頭に置いた平時からの備えの必要性を改めて強く示したものと言えるでしょう。

□ 新型コロナ感染拡大による医療提供体制への影響
(陽性者数及び入院治療を要する者の数)
感染拡大に伴い、入院治療等を要する者も増加しました。新型コロナ感染拡大により、感染者の増加に伴い入院治療等を要する者も増加したのです。特に、2020(令和2)年秋から冬にかけて、1日当たりの陽性者数(新規感染者数)は過去最大の7,844人(2021(令和3)年1月8日)に達し、入院治療等を要する者も1日当たり最大で71,129人(同月18日)まで増加しました。
(つづく)平林良人

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