実践編・応用編

感染拡大を見据えた医療体制整備の再構築 | テクノファ

投稿日:2021年12月30日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。

(今後の感染拡大を見据えた医療体制整備の再構築について)
一度目の緊急事態宣言を踏まえ、病床確保計画の策定による医療提供体制の整備を推進する必要があります。2020年5月に一度目の緊急事態宣言が解除された後、再び感染が大きく拡大する局面を見据え、医療提供体制の再構築を行うため、同年6月、厚生労働省から各都道府県に対し、病床確保計画の策定や体制整備のための支援策の積極的な活用が要請されました。 同計画は、新型コロナウイルス感染症に関する医療とそれ以外の医療との両立を図るため、各都道府県が、実績を踏まえた新たな患者推計を基に、時間軸を考慮した感染状況のフェーズごとの即応病床(計画)数等を医療機関と調整しながら設定するものであり、感染拡大期にはこの計画に沿って段階的に病床を確保することを目的とするものです。
同年8月には、各都道府県の計画が取りまとめられて公表され、各都道府県においては、計画に沿った病床確保への取組みが進められました。

(新型コロナに係る診療報酬・病床確保料の引上げ経緯)
医療機関を支援するため様々な措置がとられてきました。医療機関において、新型コロナウイルス感染症患者の受入れが円滑に行われるよう、受入病床の確保等を図るため、患者を受け入れるために確保した病床や、そのために休止にした病床に対し、病床確保料による補助が行われました。また、入院を要する患者に必要な感染予防策を講じた上で実施される診療を評価するため、中等症患者について救急医療管理 加算3倍又は5倍、重症患者について特定集中治療室管理料等を3倍算定できることとするなど、様々な診療報酬上の特例措置が講じられました。

(独立行政法人福祉医療機構による無利子・無担保等の優遇融資)
このほか、新型 コロナウイルス感染症により収入が減少し、経営状況の悪化により事業継続に支障が生じている医療機関等に対しては、独立行政法人福祉医療機構による無利子・無担保等の優遇融資が実施されました。

(新型コロナウイルス対応支援資金の推移)
さらに、こうした融資が実施される までの資金繰り対策として、2020年6月下旬の4月診療分の診療報酬等の支払時に、5 月診療分診療報酬等の概算前払を可能としました*17。
*17 概算前払の額は、2019(令和元)年12月~2020年2月診療分の平均診療報酬等支払額から同年4月診療分の診療報酬等支払額を 減じた額に10/8を乗じた額。概算前払された診療報酬等については、同年7月下旬に支払われる5月診療分診療報酬等の支払時に減額 調整され、減額調整しきれない場合は不足分を支払うこととされた。

(2020年夏以降の病床占有率の状況)
2020年秋から冬にかけて感染が拡大し、二度目の緊急事態宣言が発出される事態になりました。 前述のように病床確保計画が策定され、各地域の実情に応じて医療提供体制の整備が図られてきたが、2020年10月末以降、新規感染者数が大きく増加したことに伴い、入院者数もこれまでにない水準で増加した結果、全国総計で病床占有率が50%を超えるなど病床占有率が上昇し、医療提供体制がひっ迫する地域が生じる事態となりました。こうした感染状況や医療提供体制・公衆衛生体制に対する負荷の状況に鑑み、2021年1月には、二度目の緊急事態宣言が発出されることとなりました。

(感染拡大に伴う入院患者増加に対応するための医療提供体制パッケージ)
病床確保のための支援策については、2020年2月の緊急対応策(第1弾)の段階から様々な支援策が講じられてきましたが、同年秋から冬にかけての深刻なひっ迫状況を踏まえ、12月末に、確保病床の最大限の活用や更なる病床確保に向けて総合的な支援を行う医療提供体制パッケージが取りまとめられました。

(更なる病床確保のための新型コロナ患者の入院受入医療機関への緊急支援 (+加算措置の追加)及び後方支援病床の確保について)
具体的には、更なる病床確保のための緊急支援として、1床当たり最大1,500万円の補助(緊急事態宣言の発出に伴い最大450万円の加算も措置)を行うとともに、後方支援病床を確保するために、同年12月から翌年1月にかけて診療報酬の更なる特例的な対応も行われました。
こうした取組みによって、2月以降、確保病床数が増加し、緊急事態宣言の発出などに より、それまで急増していた新規感染者数が減少に転じ、病床のひっ迫状況は少しずつ改善していきました。

(新たな感染拡大への対応)
2021年3月下旬には緊急事態宣言は解除されたが、2020年秋から冬にかけて感染拡大時の経験も踏まえ感染者数が大幅に増加(例えば同年の冬の1日当たり最大感染者数の2倍程度)した場合を想定し、適切に入院患者等に対応できるよう、各都道府県に対し更なる病床確保などについて要請が出されました。併せて、医療従事者の確保をはじめ実際の患者受入れまでに要する時間等も考慮しながら、病床確保計画がより実効性のあるものとなるよう見直しが要請されました。
また、診療報酬に関しては、全ての医療機関で感染防止対策のコスト増が生じていることを踏まえ、2021年4月から、初診・再診で1回当たり5点(50円)、入院では1日当たり10点(100円)等を通常の診療報酬に上乗せする臨時特例措置が講じられることとなりました。
2021年4月に入り、再び新規感染者数の増加傾向が見られるようになっており、一部の地域では病床使用率が急上昇する事態が生じ、三度目の緊急事態宣言が発出されることとなり、懸命の対応が続けられています。

(新型コロナ患者受入可能医療機関と受入実績)
患者の受入れは、病床規模が大きい医療機関を中心に、地域の事情に応じて行われました。
ここで、医療機関における新型コロナウイルス感染症患者の受入れの状況について見てみたいと思います。2021年1月末時点で、全医療機関のうち、新型コロナウイルス感染症患者の受入れが可能とされた医療機関34%、実際に受入実績があった医療機関は29%となっています。

(病床規模別の新型コロナ患者受入可能医療機関と受入実績)
新型コロナウイルス感染症患者の受入れの中心となる急性期病棟を有する医療機関について見てみると、医療機関の病床規模が大きいほど、受入可能医療機関の割合も、実際の受入実績の割合も大きくなっています。特に300床以上の医療機関では約 9割以上が受入可能医療機関となっており、そのほとんど全ての医療機関で実際に受入実績がありました。病床規模の大きい医療機関では、設備も整っており、感染管理や人材配置の面でも対応しやすかったことなどの事情がうかがえます。

(100床あたりの常勤換算医療従事者別の新型コロナ患者受入可能医療機関)
医療従事者の配置状況と新型コロナウイルス感染症患者受入可能医療機関の関係を見たものだが、100床当たり常勤換算医療従事者数が多いほど受入可能とする医療機関の割合が高くなっています。この点からも、受入可能医療機関の確保に当たっては、医療従事者の手厚い配置がポイントの一つであることがわかります。

(公立・公的等・民間別の新型コロナ患者受入医療機関数及び受入実 績の割合)
設置主体別(公立・公的等・民間の別)に受入実績を見ると、公立では405医療機関(58%)、公的等では565医療機関(75%)、民間では474医療機関(17%)となっており、公立・公的等の割合が高いことが分かります。

(病院数)
前述のように新型コロナウイルス感染症患者の受入れは、設備が整っており、人的にも対応しやすい病床規模の大きい医療機関が中心となっていますが、病床規模が大きい病院には公立等が多く、他方、200床未満の病院には民間の割合が高いことがいえます。こうした事情が公立・公的等の受入割合が民間と比較して高くなっている背景にあると考えられます。

(地域医療構想区域の人口規模別、公立・公的等・民間別の新型コロナ患者受入実 績のある医療機関数)
なお、地域医療構想の構想区域の人口規模別で見てみると、受入実績のある医療機関数は、20万人未満の区域では公立が、20万人以上100万人未満の区域では公的等が最も多くなっているが、100万人以上の区域では民間が最も多い結果となっており、人口100 万人以上の区域では民間の果たした役割が大きかったことがわかります。

(医療従事者等の不足に対応するため、様々な支援策が実施された)
新型コロナウイルス感染症患者の受入れのため、人材が不足する医療機関に対しては、日本看護協会の調整による潜在看護師の活用や、全国知事会を通じた看護師の広域派遣、重症者が多い地域に対する専門医の派遣など、様々な取組みが行われました。クラスター発生時などには、ゾーニングや検体採取などの技能を有する医療従事者、疫学専門家とともに、DMAT*18やDPAT*19が派遣され、救急医療や精神科医療の提供のほか、必要物資の調整や搬送調整などの支援が行われました。 このほか、医療機関に勤務する医師や看護師が新型コロナウイルス感染症に感染した場合の代替要員の派遣や、学校の臨時休業により病院内保育所が追加的に学童保育を実施するための財政的支援が行われました。また、医療従事者等の子どもについて、保育所等における預かりの配慮の徹底を要請するなど、出勤できなくなる者を減らすための措置が講じられました。

(医療のお仕事 Key-Net)
また、新型コロナウイルス感染症に対応する中、地域医療を支える医療機関の人材確保を促進するため、厚生労働省が手数料無料で運営する医療機関・保健所等の医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事 Key-Net」が開設されたほか、医療福祉分野の求人取扱件数の多いハローワークに就職支援コーディネーターを配置し、資格や経験を有しながら医療福祉分野への就職を希望していない者に求人や最新の動向を情報提供する仕組み(「医療福祉分野充足促進プロジェクト」)など、医療福祉分野におけるマッチ ング機会の拡充が図られました。
*18 医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの 現場に、急性期(おおむね48時間以内)から活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チーム。
*19 自然災害や航空機・列車事故、犯罪事件などの集団災害の後、被災地域に入り、精神科医療及び精神保健活動の支援を行う専門的 なチーム。

(IHEAT(アイ・ヒート)等による保健所の体制強化)
新型コロナ感染拡大とともに、保健所にも大きな業務負荷が発生したことから、総務省、 全国知事会、全国市長会、全国町村会、指定都市市長会の支援を得て厚生労働省により自治体間の応援派遣スキームが構築されました。また、2020年度末時点では、学会・関係団体等 から派遣可能な保健師、医師、看護師等を合計3,000人以上確保しており、国及び各都道府県でIHEAT(Infectious disease Health Emergency Assistance Team)を設置し、業務がひっ迫している都道府県内の保健所に応援派遣を行うこととしています。

(新たな感染症発生を見据えた今後の医療提供体制の構築)
今般の新型コロナ感染拡大は、感染症に対応する医療機関のみならず、広く一般の医療提供体制に多大な影響を及ぼすとともに、病床や人材の確保、地域における医療機関の役割分担・連携等に関し、地域医療の様々な課題が浮き彫りとなりました。
例えば、様々な病床確保のための支援措置が講じられたが、受入可能医療機関の確保に当たっては、各地域において、経営上の懸念等から医療機関の理解を得るために時間を要したり、いざ受入れの段階となった際に、空き病床はあっても医療従事者が確保できないなどの事例が見られました。
また、各地で感染者が急増する事態が生じた中で、既入院患者の転院先が確保できない等の理由から即座の受入れができなかったなどの事例も見られました。こうした事態を回避するため、重症患者に対応する医療機関、中等症患者に対応する医療機関、回復後の患者に対応する後方支援医療機関など、病院の機能に応じた役割分担と連携の下に、回復した患者の転院支援を行い、中等症・重症患者の受入体制を確保していくことが求められました*20。
こうした経緯も踏まえ、2020年10月から、「医療計画の見直し等に関する検討会」において、新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制の構築に向けた議論が重ねられました。同年12月に同検討会で取りまとめられた報告書では、将来、広く一般の医療連携体制にも大きな影響が及ぶ新興感染症等が発生した場合であっても、対応可能な医療機関や病床の確保等、医療提供体制に関して必要な対策が機動的に講じられるよう、基本的な事項について、あらかじめ地域の行政・医療関係者の間で議論し、必要な準備を行うことが重要であるとの観点から、医療計画の記載事項に「新興感染症等の感染拡大時における医療」を追加することが適当とされました。
(つづく)Y.H

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