基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 139 | テクノファ

投稿日:2022年2月1日 更新日:

私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認証を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしたのです。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。

今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。
本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生はシャイン博士が2006年来日した時の立役者(JCC:日本キャリア・カウンセリング研究会が招待した、彼と娘さんが来日した)で、東京、大阪でシャインが講演をする際にいつも同席し、そればかりか新幹線で京都案内までされて、ごくごく親しく彼の人柄に触れた日本人でありました。

横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索していきたいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
〇サーベイはどのようなときに使うべきか
組織文化の測定手段としてサーベイを用いるときに発生するいくつかの問題を明らかにした。とは言え,サーベイの活用が有効であり,適切であるときもある。以下に紹介しよう。
・文化のある特定の次元が業績の一部の要素にシステマティックに関連しているか否かを検証する:この目的のためには,われわれは数多くの文化を研究し,さらに該当する文化の次元と各社の業績とを比較する方法が必要となる。本格的なエスノグラフィー(民族誌学)にもとづく調査は非現実的であり,費用も掛かり過ぎるので,われわれは測定したい抽象的な次元の運用のための定義で妥協し,標準化されたインタビュー,観察のためのチェックリスト,あるいは各組織ごとのレイティングや得点を得るためのサーベイを設計する。得られたスコアは,数多くの組織で使われている業績評価のさまざまな指標と比較され,その相関が検討される(Corlett & Pearson,2003;Denison,1990;Denison & Mishra,1995;Cooke & Szumal,1993)。

・特定の組織に対して,その組織の文化の深い分析を促すために文化のプロフィールを提供する:ここでの考え方は,測定された次元ごとの得点はその文化の絶対的な測定結果ではなく,「社員がその組織をどのように認識しているか」という観点に立って提示される,というものだ。さらにこれらの社員の認識は,その組織の業績向上に向けての改善努力に刺激を与えることができる。これらの改善を促すためにサーベイには,「あなたは現在の組織をどのように認識しているか」という問いだけでなく,「将来あなたの組織はどうあって欲しいか」という問いも含めるべきなのだ。前に述べた例に戻ると,そこでは社員は戦略の目的の次元で現在の組織に低得点を与え,しかし将来においては高得点を望むというように回答していた。このような方法でサーベイを活用する際には,結果を示すプロフィールをその組織の文化ととらえるのではなく,サーベイ以外の方法を通して文化を読み解く努力によってフォローアップすることが重要となる。

・合併,買収,ジョイントベンチャーに備えて選択した次元ごとに組織間の比較を行う:もしわれわれが比較すべき次元についてかなりの理解を備えており,かつ社員がこのサーベイを真剣に受け止め,正直に答えてくれることを期待できれば,このサーベイは有効なものになる。

・われわれがその存在を予測しているサブカルチャーは,このサーベイが解き明かす前もって選ばれた次元において,客観的に区別され,定義されるか否かをテストする:第4章の「3つの一般的なサブカルチャー」の節で述べた ように,もしエンジニアリングのサブカルチャーとオペレーター(現業従事者)のサブカルチャーが異なった前提認識を保持していると考えられる場合,この仮設を検証するためのサーベイを設計することが可能だ(もちろんわれわれが適切なサンプルを確保でき,また正直な回答が得られることが前提であるが)。

・マネジメントが追求したいと考えている重要な次元において社員を教育する:たとえばその組織の将来がある戦略に対するコンセンサスとコミットメントに掛かっている場合,かつて検証したサーベイ内の質問が,現状の認識をテストし,さらにその戦略に対するコミットメントを築くことを目的とした変革プログラムを開始するための手段となり得る。

上記のいずれのケースにおいても,サーベイの実施によって何らかのネガティブ(後向きの)な結果が生じないか否かを注意深く検討する,さらにある意思決定を契約するか否かを決定する際に適切な人たちが参加しているか否かをしっかりたしかめる,という基本原則が適用されなければならない。この条件を満たしたあと,理論的なカテゴリーにもとづき,サーベイデータによって「測定」される,いくつかの類型法の検討に進むことが可能となる。

〇権威と親密についての前提認識にフォーカスした類型
組織とはつまるところ,人々が共通の目的に向けて協力してことを進めることの結果として成り立っている。したがって個人と組織の間の基本的関係は,類型を築く際のもっとも基本的な文化の次元ととらえることができる。というのは権威と親密に関する前提認識を分析する際の重要なカテゴリーを提供してくれるからだ。ここでもっとも普遍的な理論のひとつは,エツィオーニ(Etzioni,1975)が提唱した,どの社会にも存在する組織の3つのタイプの基本的な区分である。

・威圧的組織(coercive organization):各個人は基本的に物理的ないし経験的な理由で組織に捕らわれている。ルールは権威筋から強制され,各個人はつねにルールに従うことが強要される。たとえば刑務所,軍隊のアカデミーや部隊,精神病棟,宗教上の訓練機関,戦時の捕虜キャンプ,カルト集団等々である。このような組織で生まれる文化では通常,専制的な権威に対する防衛手段として強力なカウンター(反対)文化が形成される。

・功利主義的組織(utilitarina organization):各個人は「公平な日給に見合う労働」を提供する。したがって,その組織の業績にとって不可欠なルールは遵守する。具体的にはビジネス組織のすべてを含む。この種の組織のほとんどで発見されるように,社員が権威筋からの搾取から自らを守るために,カウンター文化の規範を作り出す。

・規範的組織(normative organization):各個人は,組織のゴールと自分のゴールが基本的に合致していることから,自らのコミットしたこと(遂行の責任)を遂行し,権威筋を正当なものとして認める。基本的には教会,政党,ボランタリー組織,病院,学校等が含まれる。

威圧的組織における権威は専制的かつ絶対的であり,功利主義システム,つまり典型的ビジネス組織においては,権威は交渉によって成り立つ関係とも言える。つまり社員は,地位の高い人たちがその地位を獲得するために用いてきた方法を受け入れることが想定されているという意味での権威なのだ。規範的システムでは権威はよりインフォーマルであり,より個人の満足によるものとなる。つまり社員またはメンバーはその処遇に満足ができなければ,その組織を去ることができる。

この種の類型化は重要だ。というのは組織のタイプは,世界中に存在するマクロカルチャーのほとんどを代替することになるからだ。たとえばパワーの距離が大きい文化では,その権威は威圧的になるだろうと想定される。しかしその組織がビジネス企業である場合には,そのマネジメント構造において,より功利主義的な交渉にもとづく権威へのプレッシャーが高まることが考えられる。グローバル化に伴う大きな問題のひとつは,西欧式の功利主義的なマネジメントスタイルが,さらに威圧的傾向が強いマクロカルチャーでは全く機能しないという問題だ。さらに悪いことに,西欧のマネジャーたちは,その権威システムは正しいものだと信じ込み,どの文化もほかの文化よりも一層すぐれているということはない,という事実を忘れ去っている点だ。アジアやラテン系の諸国では,原則的に組織が威圧的でない限り,さらに広範なマクロカルチャーの規範に合致する形で権威構造がマネジメントと社員の両方によって承認されていない限り,ビジネス企業は効果的に運営できないのだ。

同僚との関係や親密さに関する前提認識もこの類型によって説明することができる。威圧的システムでは,権威に対する防衛手段として仲間との緊密な関係が築かれる。たとえば強力なカウンター文化を築く,さらには労働組合やそのほかの自己防衛グループが形成される。また功利主義的システムでは,仲間との関係は職場グループを巡って形成され,多くの場合マネジメントが活用しているインセンティブ(刺激給)のシステムを反映する。一般的に上記のシステムは職務業績を巡って築かれているので,あまり緊密な関係はタスクに対する明確なフォーカスを乱す怖れがあるという仮定にもとづいて,このような緊密な関係が歓迎されないことも起こり得る。規範的システムでは諸関係はタスクを中心に,その組織を支援する形で形成される。このような認識では,一般的により緊密な関係が好ましいものと思慮されている。つまり各メンバーが組織のゴールに向けてモティベーションとコミットメントを高めることを支援すると考えられている。この理由からビジネス企業の一部は,社員を組織のミッションに参画させ,さらにより緊密な関係を促すことによって規範的組織を築くことに努める。たとえば多くの「パートナー」によって構成されている法律事務所やサービス組織といったプロフェッショナル組織では,功利主義と規範的組織の一部の要素を結びつけることに努力している(Jones,1983;Shrivastava,1983;Greiner & Poulfelt,2005)。

この類型に伴う価値は,功利主義的なビジネス組織という広範なカテゴリーから,刑務所や精神病棟といった威圧的な全体主義的組織,さらに学校,病院,非営利団体といった規範的組織をわれわれが区分することを可能にしてくれる点だ(Goffman,1961)。しかしここでの困難は,ある特定の組織内に,上記の3つの権威システムのさまざまな種類が混在して機能していることもある点だ。その結果,その特定の組織の独自性を把握するために上記の3つ以外の次元に頼らざるを得なくなる。組織内の権威の多様性に対応するために数々の類型が提案されている。これらは具体的にどのように権威が活用され,さらに組織内でどの程度の参画が期待されているかにフォーカスが当てられている。たとえば次のような類型だ。(1)専制的,(2)父権的,(3)支援的,民主的,(4)参画的,パワー共有,(5)権限委譲的,(6)権限放棄的(単にタスクと責任を委譲するに留らず,パワーとコントロールをも委譲)である(Bass,1981,1985;Harbison & Myers,1959;Likert,1967;Vroom & Yetton,1973)。

これらの組織の類型法では,愛情,親密,同僚との関係よりは,攻撃性,パワー,コントロールの側面を取り上げることが多い。ここでは数々の類型は,人間の本性や活動に関わる底流の前提認識のうえに築かれていることを意味する。たとえばX理論,つまり人間は本来信頼できないという前提認識を抱いているマネジャーは自動的に専制的マネジメントスタイルに頼り,そのスタイルにこだわり続ける。一方Y理論,つまり人間はやる気を燃やし,仕事を達成したいと願うという前提認識を抱いているマネジャーは,タスクからの要求に沿ってマネジメントスタイルを選択し,臨機応変に自分の行動を変える。一部のタスクでは専制的な権威が要求されるし(たとえば軍隊のミッション達成のような場合),ほかのタスクでは完全な権限委譲が求められる(たとえば部下がすべての情報を保持しているような場合)(McGregor,1960;Schein,1975)。

参画の「適切な」レベルや権威の活用に関してマネジャーたちが参画する論争では,彼らが接している部下たちの特性について彼らが生みだした前提認識が反映される。たとえば文化の前提認識として参画と意見反映を検討する場合,そのリーダーはより専制的であるべきか,逆に参画を促すべきかについての決定は,特定のグループの,特定の脈絡のなかで作られた前提認識から大きく影響を受ける。つまり,つねに正しいリーダーシップのスタイルを見つけようとする試みには間違いなく失敗が待ちうけている。何故なら文化は国ごとに,産業ごとに,職業ごとに,ある組織の歴史の時点ごとに,さらにもっとも重要な点として達成すべき現実のタスクごとに大いに異なるからだ。
(つづく)平林

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタント養成講座 73 | テクノファ

横山哲夫先生の思想の系譜 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるという鋭い分析のもと数多くの研究成果を出されてきております。 今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。 本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生 …

キャリアコンサルタント養成講座 193 | テクノファ

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。 今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。 本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索したいと …

キャリアコンサルタント養成講座 134 | テクノファ

私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認証を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしたのです。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多 …

キャリアコンサルタント養成講座 153 | テクノファ

横山哲夫先生の思想の系譜 横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は満3年になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に16年もの間先生の思想に基づいたキャリアコンサルタント養成講座を開催し続けさせていただきました。 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現の …

キャリアコンサルタント養成講座 207 | テクノファ

私は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認定を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしました。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を …