実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 140 | テクノファ

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新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。

〇 多様な働き方を支えるセーフティネット
● 非正規雇用労働者への支援
新型コロナ感染拡大の防止のため、経済活動の多くを縮小・停止する措置がとられたことで経済は大きく落ち込み、その結果、これまで増加傾向にあった就業者数は大幅に減少するに至りました。また、2020(令和2)年4~5月の緊急事態宣言の解除後も、断続的な飲食店等に対する休業要請や感染不安による外出・外食自粛などは続き、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業等の特定の分野に深刻な影響を及ぼしています。その結果、非正規雇用労働者を中心に就業者数の減少や労働時間の減少、これらを通じた収入の減少などが生じています。
非正規雇用労働者をはじめ今回の感染拡大により影響を受けた労働者を支援するため、 雇用調整助成金の特例措置や、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に出向元と出向先の双方の事業主に対して助成する産業雇用安定助成金の創設による雇用維持の支援に加え、ハローワークにおける非正規雇用労働者等に対する相談支援体制の強化や、新型コロナウイルス感染症の影響による離職者(シフト減で実質的に離職状態にある者を含む)を試行的に雇用する事業主へのトライアル雇用助成金などにより、雇用の安定のための支援が行われてきています。

■ 新たな雇用・訓練パッケージ
加えて、2021(令和3)年2月12日に取りまとめられた「新たな雇用・訓練パッケー ジ」においては、大企業労働者の中でも、休業手当を受け取りづらい、シフト制等の勤務形態で働く労働者*24が休業手当を受け取れない場合に、特例的に新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の対象とすることとされました。同年3月16日に取りまとめられた「非正規雇用労働者等に対する緊急支援策」においては、小学校休業等対応助成金について、企業が申請を行わない場合に、保護者は直接支給を申請できる仕組みを導入することになっています。
*23  授業料以外の教育費(教科書費、教材費、学用品費等)負担を軽減するため、高校生等がいる低所得世帯を対象に支援を行う制度。 都道府県が行う給付金事業に対して、国がその経費の一部を補助。
*24  労働契約上、労働日が明確でない者(シフト制、日々雇用、登録型派遣)

(非正規雇用労働者のセーフティネットの在り方を引き続き検討していく必要がある)
非正規雇用労働者については、近年、同一企業・団体における正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消(同一労働同一賃金)をはじめ、有期労働契約を反復更新している場合の無期労働契約への転換ルール*25の適用など、様々なセーフティネットが整備されてきています。
確かに、前述のとおり新型コロナ感染拡大の中で非正規雇用労働者を取り巻く環境は厳しい状況にありますが、毎月勤労統計調査の令和2年分結果確報においては、パートタイム労働者の夏冬の賞与や期末手当等の一時金などの特別給与が増加しており、同一労働同一賃金の施行などが効果を上げていることがうかがわれます。
また、今回の新型コロナウイルス感染症の対策として、既存の制度の拡充や特例措置の創設により、非正規雇用労働者を対象に各種の支援が行われました。
例えば、雇用調整助成金は、従来、雇用保険の被保険者(ただし、雇用期間6か月未満の労働者等は対象外)が休業となった場合、事業主から支払われた休業手当等が助成の対象となる仕組みですが、今般の特例措置においては、対象外とされている雇用期間6か月未満の労働者を雇用調整助成金の対象とするだけでなく、週の労働時間が20時間未満の学生アルバイトなど雇用保険の被保険者以外の労働者に対しても、新たに国費を財源とした緊急雇用安定助成金制度を創設することによって、支援が行われました。また、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金は、雇用保険の被保険者以外の労働者も対象として創設されました。さらに、国民健康保険に加入する被保険者である被用者を対象に傷病手当金を支給する場合に国が特例的に財政支援を行うこととされました。
これらは、新型コロナ感染拡大防止を目的とした緊急対応としての特例措置でありますが、 今後、同様のリスクに対して、どう対応していくことが適当なのかを含めて、今回の支援策の効果等を評価・検証しつつ、考えていく必要があろうかと思います。

(非正規雇用労働者のステップアップを支援する必要もある)
今般の新型コロナウイルス感染症による雇用への影響を見ると、非正規雇用労働者の中でも、特にパート・アルバイトで働く者の雇用が失われやすい状況にあることが確認されました。今後、こうした形態で働く労働者が望む場合には、職業能力や就職意欲の向上を図り、ステップアップとなる仕事への再就職や転職に結び付ける支援を行っていくことが重要です。
例えば、今般の新型コロナウイルス感染症への雇用対策の一環として、シフト制で働く者等に対する職業訓練受講給付金の収入要件の特例措置*26や、求職者支援訓練や公共職業訓練における訓練期間や訓練内容の多様化・柔軟化など、仕事と訓練受講を両立しやすい環境整備が図られましたが、こうした環境整備とともに、今般設置された「コロナ対応ステップアップ相談窓口」の活用も含め、求職者一人一人の状況に応じた支援を行っていく必要があります。
*25  同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより無期労働契約に転換する制度。
*26  訓練受講期間中に訓練受講者に対して月額10万円支給する職業訓練受講給付金は、月の収入が8万円以下であることを支給の要件としているが、シフト制で働く者等について、月12万円以下に引き上げる特例措置を導入。

■ フリーランス
(副業としている者を含め、約460万人がフリーランスとして働いている)
事業主と労働契約を締結するのではなく、個人の自由な意思に基づく業務委託契約等を締結して業務を行ういわゆるフリーランスは、2020(令和2)年2~3月に内閣官房が実施した調査*27によれば、本業としている者が214万人、副業としている者が248万人、 計462万人と試算されています。さらに、近年、インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負い、個人で働く就業形態(ギグ・エコノミー)の拡大により、プラットフォームを経由して仕事を受注する働き方も増加が指摘されています。
また、前述の内閣官房の調査においては、フリーランスという働き方を選択した理由を尋ねているが、「自分の仕事のスタイルで働きたいため」と回答した者が約6割、「働く時間や場所を自由とするため」が約4割となっているほか、7割以上が「仕事上の人間関係」、「就業環境(働く時間や場所など)」、「プライベートとの両立」、「達成感や充足感」に満足している一方、フリーランスとして働く障壁として「収入が少ない・安定しない」と回答した者が約6割に上っています。

(新型コロナ感染拡大の影響はフリーランスにも及び、各国で経済支援が実施された) OECDの分析によれば、新型コロナウイルス感染症の影響下において、プラットフォーム が仲介する仕事が自粛期間中の新しいニーズに応えた新しい仕事やビジネスを開始する機会 (食事や医薬品の宅配など)を生んだ一方、新型コロナ感染拡大によって、プラットフォームを介する仕事の脆弱性も浮き彫りにし、各国において、フリーランスを含む個人事業主などに対する経済支援が実施されることとなったと指摘しています*28。
我が国においても、新型コロナ感染拡大により特に大きな影響を受けた事業者に対して支給された持続化給付金について、フリーランスを含む個人事業主も支給対象とされました。また、感染防止のために政府が小学校等の臨時休業等を求めるにあたり、個人で仕事をする保護者についても、一定の要件*29を満たす場合には、支援金(小学校休業等対応支援金)が支給されることとなりました。

(フリーランスとして安心して働ける環境の整備として、ガイドラインの策定や労災保険の特別加入制度の見直しが行われた)
前述の内閣官房の調査によれば、事業者から業務委託を受けて仕事を行うフリーランスのうち、業務の内容や遂行方法について具体的な指示を受けている者が4割程度いるほか、取引条件の明示や報酬の支払いに関するトラブルが生じている実態が明らかになりました。
こうした調査結果も踏まえ、成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)等において、政府として一体的に、保護のルールの整備を行うこととされ、2021(令和3)年3月に、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律や下請代金支払遅延等防止法、労働関係法令の適用関係を明らかにするとともに、それぞれの法令に基づく問題行為を明確化するため、実効性があり、一覧性のあるガイドラインが、内閣官房、公正取引委員会、*27 内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」(2020年5月)で明らかにされましら。同調査においてはフリーランスを「①自身で事業等を営んでいる,②従業員を雇用していない,③実店舗を持たない,④農林漁業従事者ではない」と定義しています。

(フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン)
中小企業庁、厚生労働省の連名で策定されたガイドラインは、今後、フリーランスや事業者にしっかりとガイドの内容が届くよう、周知に努めていく必要があります。
また、厚生労働省では、2020年11月より、関係省庁と連携し、フリーランスと発注事業者等との間にトラブルが生じたときにワンストップで相談できる相談窓口(フリーラ ンス・トラブル110番)を設置し、フリーランスに対する相談対応等を開始したところ であります。今後、相談窓口の周知に努め、トラブルの防止や解決を図っていくこととしています。
*28「OECD Employment Outlook 2020」
*29 小学校休業等対応支援金の要件として、業務委託契約等に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われており、発注者から業務内容、 業務を行う場所・日時などについて一定の指定を受けていること等とされている。

労働者災害補償保険は、労働者の労働災害に対する保護を目的とするものであり、労働基準法上の労働者でない者については対象外とされていますが、業務の実態、災害の発生状況等からみて労働者に準じて保護することが適切な者については、特別加入が認められていまうす。前述の「成長戦略実行計画」において、「フリーランスとして働く人の保護のため、 労働者災害補償保険の更なる活用を図るための特別加入制度の対象拡大等について検討する」とされたことを踏まえ、労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会において議論された結果、2021年4月1日より、「芸能関係作業従事者」、「アニメーション制作作業従事者」、「柔道整復師」、「創業支援等措置に基づく事業を行う高年齢者」の4業種について、 新たに特別加入制度の対象に加えられることとなりました。

(個人の働き方が多様化し、柔軟な働き方が広がる中で、フリーランスのセーフティネットの在り方について、実態・実情に応じて幅広い視点から考えることが求められている)
個人の働き方が多様化し、フリーランスを含めた柔軟な働き方が広がっています。また、フリーランスと一口に言っても、独立・自由な自営スタイルの働き方もあれば、いわゆる雇用類似の働き方もあり、その実態・実情に応じた施策が求められています。 諸外国においても、新型コロナ感染拡大前から、フリーランスなど雇用によらない働き方で働く就業者について、法的地位をめぐる訴訟や、法的保護の在り方に関する議論がなされてきています。今後、諸外国における動向も踏まえつつ、フリーランスの実態・実情に合ったセーフティネットの在り方などについて、幅広い視点から考えることが求められています。
(つづく)Y.H

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