実践編・応用編

我が国の合計特殊出生率 | テクノファ

投稿日:2022年2月16日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。

● 現下の政策課題への対応
〇 子どもを産み育てやすい環境づくり
■ 少子社会の現状
我が国の合計特殊出生率は、2005(平成17)年に1.26となり、その後、緩やかな上昇傾向にありましたが、ここ数年微減傾向となっており、2020(令和2)年も1.34と依然として低い水準にあり、長期的な少子化の傾向が継続しています。
(人口ピラミッドの変化)
また、2017(平成29)年に発表された国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、現在の傾向が続けば、2065年には、我が国の人口は8,808万人となり、1年間に生まれる子どもの数が現在の半分程度の約56万人となり、高齢化率は約38%に達するという厳しい見通しが示されています。

(50歳時の未婚割合の推移)
さらに、ライフスタイルが従来とは異なるものになってきています。例えば、2040年には50歳時の未婚割合が男性で約29%、女性では約19%になるものと見込まれています。」

(共働き等世帯数の年次推移)
ほか、共働き世帯と専業主婦世帯(男性雇用者と無業の妻からなる世帯)とを比べると、1997(平成9)年には既に前者の数が後者の数を上回っている状況にも配慮する必要があります。
こうした状況に加え、多くの国民が結婚したい、子どもを産み育てたい、結婚した後も子どもを育てながら働きたいと希望しているにもかかわらず、その希望がかなえられず、結果として少子化が進んでしまっているものと考えられることなどから、国民が希望する結婚や出産を実現できる環境を整備することが重要となります。

〇 総合的な子育て支援の推進
■ 子ども・子育て支援新制度
2012(平成24)年8月に成立した子ども・子育て関連三法(「子ども・子育て支援法」、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」、「子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)に基づく子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)は、社会保障・税一体改革の一項目として、消費税率の引上げによる財源の一部を得て実施されるものであり、2015(平成27)年4月から施行されました。

(子ども・子育て支援の新制度について)
新制度では、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に、幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進することとしています。具体的には、①認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設、②認定こども園制度の改善、③地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ることとしています。

実施主体は基礎自治体である市町村であり、地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしています。

2015年4月の新制度の施行と併せ、内閣府に子ども・子育て本部が発足した。子ども・子育て本部は、内閣府特命担当大臣を本部長とし、行政各部の施策の統一を図る観点から少子化対策や子育て支援施策の企画立案・総合調整を行うとともに、子ども・子育て支援法に基づく給付等や児童手当など子育て支援に係る財政支援の一元的な実施等を担うほか、認定こども園制度を文部科学省、厚生労働省と共管しています。

(子ども・子育て支援の「量的拡充」と「質の向上」項目)
新制度では、消費税率の引上げによる社会保障の充実の財源のうち、0.7兆円程度を子ども・子育て支援に充てることとされており、また、これを含め1兆円超程度の財源を確保し、子ども・子育て支援新制度に基づく幼児教育・保育・地域の子育て支援の更なる充実を図ることとしています。

2020(令和2)年度においても、子ども・子育て支援は、社会保障の充実において優先的に取り組む施策と位置付けられ、市町村の事業計画等を踏まえた「量的拡充」に対応するとともに、0.7兆円程度の範囲で実施する「質の向上」に係る事項を引き続き全て実施するために必要な予算が計上されたところであります。

さらに、2021(令和3)年度においても、引き続き、消費税財源以外の財源で実施する「質の向上」項目のうち、保育士の2%の処遇改善等の実施に必要な予算が計上されています。

■ 全ての子育て家庭への支援
子ども・子育て支援新制度においては、教育・保育施設を利用する子どもの家庭だけでなく、全ての子育て家庭を対象に地域のニーズに応じた多様な子育て支援を充実させることとしています。このことから、
①子育て家庭や妊産婦が、教育・保育施設や地域子ども・ 子育て支援事業、保健・医療・福祉等の関係機関を円滑に利用できるよう、身近な場所での相談や情報提供、助言等必要な支援をするとともに、関係機関との連絡調整、連携・協働の体制づくり等を行う「利用者支援事業」や、
②子育て家庭等の負担感・不安感を軽減するため、子育て親子が気軽に集い、交流することができ、子育てに関する相談・援助を行う場の提供や、地域の子育て関連情報の提供、子育て及び子育て支援に関する講習を行う「地域子育て支援拠点事業」、
③家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳幼児について、主として昼間において、認定こども園、幼稚園、保育所、地域子育て支援拠点その他の場所において、一時的に預かり、必要な保護を行う「一時預かり事業」、
④乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の保護者を会員として、児童の預かり等の援助を受けることを希望する者と当該援助を行うことを希望する者との相互援助活動に関する連絡、調整を行う「ファミリー・サポート・センター事業」、
⑤保護者の疾病等の理由により家庭において養育を受けることが一時的に困難となった児童について、児童養護施等や里親等への委託により、必要な保護を行う「子育て短期支援事業」
等を「地域子ども・子育て支援事業」として子ども・子育て支援法に位置付け、財政支援を強化して、その拡充を図ることとしています。

このほか、障害児支援については、重度の障害等により外出が著しく困難な障害児に対する支援である居宅訪問型児童発達支援の新設や、医療的ケアを要する障害児(以下「医療的ケア児」という。)が適切な支援を受けられるよう、自治体において保健・医療・福祉等の連携促進に努めることなどを「児童福祉法」に規定し、障害児支援のニーズの多様化へのきめ細やかな対応をすることとしており、保育所等においても医療的ケア児を受け入れるためのモデル事業を2017(平成29)年度から実施し、2021(令和3)年度からはこれを一般事業化した上で、「医療的ケア児保育支援事業」として実施しています。

■ 幼児教育・保育の無償化
「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月8日閣議決定)等の決定に基づき、これまで段階的に推進してきた取組みを一気に加速し、幼児教育・保育の無償化を実現するため、2019(平成31)年通常国会(第198回国会)において、「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律」(令和元年法律第7号)が成立しました。これを受けて、令和元(2019)年10月の消費税率引上げによる財源を活用することにより、同年10月から3歳から5歳までの子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園、保育所、認定こども園等の費用が無償化されました。これは、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換するものであります。

なお、20歳代や30歳代の若い世代が理想の子供数を持たない理由は、「子育てや教育にお金がかかり過ぎるから」が最大の理由となっており、幼児教育・保育の無償化をはじめとする負担軽減措置を講じることは、重要な少子化対策の一つとなるものです。また、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり、子供たちに質の高い幼児 教育の機会を保障することは極めて重要であります。
また、就学前の障害児の発達支援についても併せて無償化する措置を講じています。

〇 待機児童の解消などに向けた取組み
■ 待機児童解消に向けた保育の充実と総合的な放課後児童対策の推進

2020(令和2)年4月1日時点の待機児童数は、12,439人となり、前年から約4,300 人減少し、待機児童数調査開始以来最少の調査結果となったものの、女性就業率は年々上昇し、それに伴い、保育の利用申込者数も増加していることから、引き続き待機児童の解消は喫緊の課題となっています。厚生労働省では、2021(令和3)年度以降については、25歳から44歳の女性の就業率の更なる上昇に対応するため、2020年12月に取りまとめた「新子育て安心プラン」に基づき、2021年度から2024(令和6)年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備するほか、
①地域の特性に応じた支援、
②魅力向上を通じた保育士の確保、
③地域のあらゆる子育て資源の活用を柱とする各種施策を推進することにより、できるだけ早く待機児童の解消を目指すこととしています。

2016(平成28)年度から実施している企業主導型保育事業については、2016年度から2019(令和元)年度までに約86,000人の受け皿を確保し、2020年度は新たに約2万人分新規募集を行いました。また、預かり保育への補助の充実等により、幼稚園における待機 児童の受入れを推進しています。

保育の受け皿拡大と合わせて重要な課題である保育人材の確保については、処遇改善や 新規の資格取得、就業継続、離職者の再就職といった支援に総合的に取り組むこととしています。特に、民間の保育士等の処遇改善については、2019年度に実施した「新しい経済政策パッケージ」に基づく1%の処遇改善などの取組みにより、2013(平成25)年度か ら2021年度までの9年間で合計約14%(月額約4万4千円)の改善を実現しました。また、 2017(平成29)年度からは、技能・経験に応じたキャリアアップの仕組みを構築し、経験年数がおおむね7年以上の中堅職員に対して月額4万円、経験年数がおおむね3年以上の職員に対して月額5千円の処遇改善を実施しています。

また、共働き家庭など留守家庭における小学生の児童に対しては、学校の余裕教室等を 活用し、放課後に適切な遊びと生活の場を与えて、その健全な育成を図ることを目的とする放課後児童クラブを実施しています。2020年7月1日時点では、放課後児童クラブ数は 全国で2万6,625か所、登録児童数は131万1,008人になっている一方で、利用できな かった児童(待機児童)数は1万5,995人となっています。2018年(平成30)9月14日には、文部科学省と厚生労働省が共同で、「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、「新・放課後子ども総合プラン」を策定しました。

「新・放課後子ども総合プラン」では、2021年度末までに約25万人分を整備し、待機 児童解消を目指し、その後も女性就業率の上昇を踏まえ2023(令和5)年度末までに計約30万人分の受け皿を整備します。また、全ての小学校区で、放課後児童クラブと放課後子供教室を一体的に又は連携して実施し、うち小学校内で一体型として1万箇所以上で実施することを目指しています。

そして、放課後児童クラブの役割を、基本的な生活習慣づけや異年齢児童等との関わりを通して、自主性、社会性を身につけられる場として位置づけ、今後、放課後児童クラブでこうした役割を徹底し、子どもの自主性、社会性等のより一層の向上を図ります。

2021年度予算では、「新・放課後子ども総合プラン」の目標達成に向けて、引き続き、放課後児童支援員等の処遇改善事業等により質の向上を図るとともに、施設整備費の補助率のかさ上げなどを実施し、放課後児童クラブの受入児童数の拡大を図ることとしています。
(つづく)Y.H

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