キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について説明していますが、これまで説明してきた職業能力開発に関連する厚生労働省の資料として、今回から能力開発基本調査について説明します。
能力開発基本調査は、国内の企業・事業所と労働者の能力開発の実態を明らかにし、今後の人材育成施策の在り方を検討するための基礎資料とすることを目的に、平成13年度から毎年実施されています。
主な調査事項は、1.企業調査、2.事業所調査、3.個人調査です。
例年10月から12月まで調査、5月末に結果を公表していますが、令和2年度は令和2年12月から令和3年1月まで調査、6月に結果が公表されました。
令和2年度「能力開発基本調査」の結果を厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_19368.html
より引用説明します。
■令和2年度「能力開発基本調査」調査結果のポイント
【企業調査】
1 教育訓練費用(OFF-JT費用や自己啓発支援費用)を支出した企業は49.7%(前回57.5%)。
2 事業内職業能力開発計画の作成を行っている企業は22.1%(前回22.9%)。
職業能力開発推進者の選任を行っている企業は18.8%(前回19.8%)。
3 教育訓練休暇制度を導入している企業は8.8%(前回8.5%)。
教育訓練短時間勤務制度を導入している企業は6.7%(前回6.4%)。
【事業所調査】
1 計画的なOJTについて、正社員に対して実施した事業所は56.5%(前回64.3%)、正社員以外に対して実施した事業所は22.3%(前回26.5%)
2 能力開発や人材育成に関して、何らかの問題があるとする事業所は74.9%(前回76.5%)。
3 キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行うしくみを、正社員に対して導入している事業所は37.8%(前回39.4%)、正社員以外に対して導入している事業所は24.9%(前回27.0%)。
【個人調査】
1 OFF-JTを受講した労働者は29.9%(前回35.3%)。
・雇用形態別では「正社員」(37.7%)が「正社員以外」(16.4%)より高い。
・性別では「男性」(36.5%)が「女性」(22.8%)よりも高い。
・最終学歴別では「中学・高等学校・中等教育学校」(24.2%)が最も低く、「大学院(理系)」(49.9%)が最も高い。
2 自己啓発を実施した労働者は32.1%(前回29.8%)。
・雇用形態別では「正社員」(41.4%)が「正社員以外」(16.1%)より高い。
・性別では「男性」(39.9%)が「女性」(23.6%)よりも高い。
・最終学歴別では「中学・高等学校・中等教育学校」(21.8%)が最も低く、「大学院(理系)」(67.6%)が最も高い。
■令和2年度「能力開発基本調査」調査結果の概要(調査結果の詳細報告)
1 企業調査
(1)OFF-JT及び自己啓発支援に支出した費用について
① OFF-JTまたは自己啓発支援への費用支出状況
令和2年度調査における企業の教育訓練への費用の支出状況をみると、OFF-JTまたは自己啓発支援に支出した企業は 49.7%であった。OFF-JTと自己啓発支援の両方に支出した企業は 20.2%、OFF-JTにのみ費用を支出した企業は25.1%、自己啓発支援にのみ支出した企業は 4.4%であった。一方、どちらにも支出していない企業は50.1%であった。
OFF-JTに費用を支出した企業については45.3%と、令和元年度調査と比べて減少している。3年移動平均についても、近年、同程度の水準で推移していたが、直近では低下している。
さらに、自己啓発支援に費用を支出した企業割合も24.6%と、前回(28.2%)と比べて減少しており、3年移動平均の推移についても低下している。
② OFF-JT及び自己啓発支援に支出した費用
OFF-JTに支出した費用の労働者一人当たり平均額(費用を支出している企業の平均額。以下同じ。)は0.7万円であり、前回に比べ減少している。また、3年移動平均についても、直近では低下している。 一方、自己啓発支援に支出した費用の労働者一人当たり平均額 は0.3万円であり、平成30年度調査以降、横ばいで推移している 。
(2)能力開発の実績・見込みについて
正社員に対する過去3年間(平成29年度~令和元年度)のOFF-JTに支出した費用の実績では、「増加した」(19.0%)が「減少した」(9.1%)を9.9ポイント上回っており、「実績なし」は46.7%であった。今後3年間の支出見込みでは、「増加させる予定」(18.7%)が「減少させる予定」(3.7%)を15.0ポイント上回っているものの、「実施しない予定」が52.5%と多かった。
正社員に対する過去3年間の自己啓発支援に支出した費用の実績では、「増加した」(20.2%)が「減少した」(4.3%)を15.9ポイント上回っているものの、「実績なし」も53.0%と多く、今後3年間の支出見込みについては、「実施しない予定」が54.3%と、半数以上となった。
正社員以外に対する過去3年間のOFF-JTに支出した費用の実績では、「増加した」(6.7%)が「減少した」(3.9%)を2.8ポイント上回っているものの、「実績なし」が71.7%で最多となった。今後3年間の支出見込みでは、「増加させる予定」(8.8%)が「減少させる予定」(1.6%)を7.2ポイント上回っているものの、「実施しない予定」が72.6%で最多となった。正社員以外に対する過去3年間の自己啓発支援に支出した費用の実績では、「増加した」(10.1%)が「減少した」(1.6%)を8.5ポイント上回っているものの、「実績なし」が71.7%で最多となった。今後3年間の支出見込みについても、「実施しない予定」が70.8%で最多となった。
(つづく)A.K