キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について説明していますが、今回は能力開発基本調査について、前回の続きから説明します。
実施したOFF-JTの教育訓練機関の種類については、正社員、正社員以外ともに「自社」が最も高く、正社員では78.8%、正社員以外では86.7%となっている。次いで、正社員、正社員以外ともに、「民間教育訓練機関(民間教育研修会社、民間企業主催のセミナー等)」が続き、正社員では45.3%、正社員以外では21.0%となっています。
実施したOFF-JTの内容は、「新規採用者など初任層を対象とする研修」が76.4%と最も高く、「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」( 47.4%)、「マネジメント(管理・監督能力を高める内容など)」(45.2%)と続いている。今後実施したいOFF-JTの内容については、「マネジメント(管理・監督能力を高める基礎知識)」(34.7%)、「新たに管理職となった者を対象とする研修」( 33.1%)、「新たに中堅社員となった者を対象とする研修」(32.7%)の順に高くなっています。
② 計画的なOJTの実施状況
令和2年度調査において、正社員または正社員以外に対して計画的なOJTを実施したと回答した事業所は59.4%であり、その内訳をみると、「正社員と正社員以外、両方に実施した」は19.4%、「正社員のみ実施した」は37.1%、「正社員以外のみ実施した」は2.9%であり、正社員のみに対して計画的なOJTを実施する事業所が多い結果となった。一方、「計画的なOJTを実施していない」と回答した事業所は40.2%でした。
計画的なOJTを実施した対象を職層等別にみると、正社員では「新入社員」が49.4%、「中堅社員」が34.3%、「管理職層」が20.5%となり、「正社員以外」は22.3%となっています。
正社員に対して計画的なOJTを実施した事業所は56.5%と、前回と比べて減少しており、3年移動平均の推移でみても、上昇傾向から低下方向へと転じました。
正社員以外に対して計画的なOJTを実施した事業所は22.3%と、前回に比べて減少しており、3年移動平均の推移でみても、近年は低下傾向が続いている。また、長期的には、正社員に対する割合と比較して2分の1に満たない水準で推移しています。
産業別にみると、正社員については「複合サービス事業」(95.2%)、「金融業,保険業」(93.5%)で実施率が高く、「生活関連サービス業 ,娯楽業」(40.4%)、「宿泊業,飲食サービス業」(47.9%)、「卸売業,小売業」(50.7%)などで低くなっています。
正社員以外では、「複合サービス事業」が62.3%と最も実施率が高く、そのほかは5割を下回っている。また、「建設業」(4.5%)、「情報通信業」(7.8%)が1割以下と低くなっています。
企業規模別にみると、正社員については、「30~49人」で34.6%、「50~99人」で50.1%、「100~299人」で58.5%、「300~999人」で68.2%、「1,000人以上」で77.3%と、規模が大きくなるほど実施率は高くなっている。正社員以外については、「30~49人」で13.7%、「50~99人」で14.1%、「100~299人」で16.7%、「300~999人」で31.4%、「1,000人以上」で36.9%となり、正社員同様、規模が大きくなるほど実施率は高くなっています。
(2)能力開発や人材育成について
① 能力開発や人材育成に関する問題点
能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は、74.9%となり、前回と比べてやや減少しているものの、4分の3以上の事業所で、能力開発や人材育成に関する問題があることがうかがえます 。
能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所のうち、問題点の内訳は、「指導する人材が不足している」(54.9%)が最も高く、「人材育成を行う時間がない」(49.4%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(42.6%)と続いています。
(3)労働者のキャリア形成支援について
① キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行うしくみの導入状況
正社員または正社員以外に対してキャリアコンサルティングを行うしくみを導入している事業所は38.1%であり、その内訳をみると、「正社員、正社員以外どちらもある」は22.5%、「正社員のみある」は15.1%、「正社員以外のみある」は0.5%であった。一方、「キャリアコンサルティングを行うしくみがない」とした事業所は、61.4%でした。
正社員を雇用する事業所のうち、正社員に対して キャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所は、37.8%であった。3年移動平均をみると、近年、40%台前半で推移している。一方で、正社員以外を雇用する事業所のうち、正社員以外に対してキャリアコンサルティングを行うしくみがある事業所は、24.9%と、正社員に比べると低い水準となっている。3年移動平均をみると、近年、20%台後半で推移しています。
産業別にみると、正社員では、「金融業,保険業」(80.8%)、「複合サービス事業」(79.0%)で高くなっている。正社員以外では、「複合サービス事業」(69.2%)、「金融業,保険業」(56.7%)で高くなっています。
企業規模別にみると、「1,000人以上」の割合が、正社員(61.3%)、正社員以外(42.6%)ともに最も高くなっています。
実施時期については、「労働者から求めがあった時に実施する」が、正社員(50.7%)、正社員以外(55.2%)ともに最も高く、次いで、「1年に1回、3年に1回など、定期的に実施する」(正社員50.5%、正社員以外46.9%)、「人事評価のタイミングに合わせて実施する」(正社員49.1%、正社員以外37.6%)が高くなっています。
(つづく)A.K