実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 155 | テクノファ

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新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。

2.最低賃金制度について
日本では労働者の生活の安定や労働力の質的向上、事業の公正な競争の確保に資することなどを目的として最低賃金制度を設けています。最低賃金制度は、国が法的強制力をもって賃金の最低額を定め、使用者はその金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないこととするものであります。 最低賃金には、各都道府県内の全ての使用者及び労働者に適用される地域別最低賃金(2021(令和3)年4月1日現在、適用労働者数約5,112万人)と、特定の産業の使用者及び労働者に適用される特定最低賃金(2021年4月1日現在、227件。適用労働者数約 290万人)があります。

地域別最低賃金は、毎年公労使三者からなる中央最低賃金審議会が、厚生労働大臣の諮問を受け、その年の改定額の目安の答申を行います。この目安を参考に都道府県労働局に設置された地方最低賃金審議会からの答申を受け、都道府県労働局長が改正決定を行います。

2020(令和2)年度の地域別最低賃金額の改定は、審議が行われた結果、新型コロナウイルスの影響等を踏まえ、全国加重平均で対前年度1円引上げの902円となりました(全国 の地域別最低賃金の一覧は最低賃金特設サイト*21を参照)。また、特定最低賃金の全国加重平均額は905円(2021年4月1日現在)となりました。このような最低賃金の引上げを受けて、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図っています(詳細は第2章第2節4を参照)。 また、改定された最低賃金については、リーフレット等の配布に加え、インターネットや広報媒体を活用した周知広報などにより労使を始め広く国民に周知徹底を図っています。
*21 最低賃金特設サイト https://pc.saiteichingin.info/

3.未払賃金立替払事業について
賃金は労働者の生活の原資であり、最も重要な労働条件の一つであります。しかしながら、企業が倒産して事業主に賃金支払能力がない場合には、実質的に労働者は賃金の支払を受けることができない実情にあります。 このため、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づき、企業倒産等に伴い、賃金が 支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、一定の要件の下で、未払賃金の一部を、事業主に代わって政府が立替払する「未払賃金立替払事業」を実施し、2019(令和元)年度には、1,991企業の23,992人に対して約86億円の立替払を行いました。

なお、立替払を行った企業数及び金額は、2018(平成30)年度より減少し、支給者数は増加しました。未払賃金立替払事業は、労働者とその家族の生活の安定を図るためのセーフティネットとして欠くことのできないものであるので、今後とも、事業の適切な運営に努めていきます。

4.「労災かくし」対策の推進
災害発生原因を把握し、当該事業場に対し同種災害の再発防止対策を確立させるため、労働災害が発生した場合には、事業主は災害発生状況やその原因などを記載した労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出しなければならないこととされています。 「労災かくし」とは、故意に労働者死傷病報告を提出しないこと、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出することをいいます。

「労災かくし」の排除のための対策については、労災かくしにより、必要な労災保険の申請がなされない事案について、全国健康保険協会各都道府県支部から健康保険の不支給決定者の情報を入手するといった連携等の方策により、「労災かくし」の疑いのある事案把握及び調査を行い、その存在が明らかとなった場合には、司法処分を含め厳正に対処することとしています

5.労災補償の現状
(1)労災補償の現状労働災害については、過重労働の防止や各種の安全衛生対策など、その発生の防止を最優先課題として取組みを進めているが、労働災害が発生した場合には、労働者の負傷、疾病、障害、死亡などについて迅速かつ公正な補償が不可欠です。労災保険制度は、業務上の事由、二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障 害、死亡などに対して、迅速かつ公正な保護を行うために保険給付を行う制度です。

2019(令和元)年度の労災保険給付の新規受給者数は68万7,455人であり、前年度に比べ942人の増加(0.1%増)となっています。そのうち業務災害による受給者が60万 5,228人、通勤災害による受給者が8万2,227人となっています。また、労災保険給付について、非災害発生事業場の賃金額も合算して算定するとともに、複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定することを内容に含む「雇用保険法等の一部を改正する法律」が2020(令和2)年3月に成立し、同年9月に施行されています。

(2)過労死等の労災認定
(過労死等の労災補償状況)
2019(令和元)年度の過労死等の労災補償状況については、脳・心臓疾患の請求件数は936件であり、支給決定件数は216件となっており、精神障害の請求件数は2,060件 であり、支給決定件数は509件となっています。前年度と比べ、脳・心臓疾患の請求件数は59件の増加、支給決定件数は22件の減少となっており、精神障害の請求件数は240 件の増加、支給決定件数は44件の増加となっています。 労災認定に当たっては、脳・心臓疾患の認定基準及び精神障害の認定基準に基づき、迅速かつ公正な労災補償に努めています。

(3)特別加入制度の対象拡大
労災保険は、労働基準法上の労働者以外のでない者については対象外とされています。このうち、業務の実態、災害の発生状況等からみて労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい者について、特に労災保険の加入を認める、特別加入制度が存在します。

2020(令和2)年7月閣議決定の成長戦略実行計画において「フリーランスとして働く人の保護のため、労働者災害補償保険の更なる活用を図るための特別加入制度の対象拡大等について検討する」とされたこと等を踏まえ、2021(令和3)年4月1日に以下の業種について新たに特別加入制度の対象となっています。
・「柔道整復師法」第2条に規定する柔道整復師が行う事業
・「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業
・アニメーションの制作の作業
・放送番組(広告放送を含む。)、映画、寄席、劇場等における音楽、演芸その他の芸能の提供の作業又はその演出若しくは企画の作業

(4)石綿による健康被害の補償・救済
(労災保険法に基づく石綿による肺がん、中皮腫等の労災補償状況)
(石綿健康被害救済法に基づく特別遺族給付金の請求・支給決定状況)

石綿を取り扱う作業に従事したことにより中皮腫や肺がんなどを発症した労働者などや、その遺族は、労災保険給付を受けることができます。また、2006(平成18)年2月には、「石綿による健康被害の救済に関する法律」が成立し、同年3月には、時効によって労災保険法に基づく遺族補償給付を受ける権利が消滅した者に対し「特別遺族給付金」が支給されるなどの措置が講じられました。

なお、特別遺族給付金については、2011(平成23)年8月の「石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律」により、請求期限が2022(令和4)年3月27日まで延長されるとともに、支給対象が2016(平成28)年3月26日までに死亡した労働者などの遺族であって時効によって遺族補償給付を受ける権利が消滅した者へ拡大されています*22。石綿による健康被害の補償・救済については、石綿による疾病の労災認定基準に基づき、迅速かつ公正に行うように努めています。

6.労働保険適用徴収制度
労働保険(労災保険と雇用保険の総称)の適用徴収業務は、適正な労災保険給付や雇用保険給付のみならず、労働行政全体の的確な運営を財政面から支える重要な業務であり、労働保険制度の健全な運営と費用負担の公平性を確保するため、労働保険の未手続事業一掃対策及び適正徴収に取り組んでいます。

労働保険は、農林水産の事業の一部を除き、労働者を一人でも雇用する全ての事業に適用されるため、適用事業の事業主は、保険関係の成立手続を行わなければならないが、未手続となっている事業が少なからず見受けられます。このような未手続となっている事業に対しては、都道府県労働局、労働基準監督署及びハローワークの緊密な連携や関係機関からの協力による未手続事業の把握、労働保険の手続加入勧奨活動の強化、さらに、自主的に成立手続を行わない事業主に対し職権による保険関係の成立手続を行っています。

なお、新型コロナウイルス感染症等の対応として、
①2020(令和2)年度の労働保険の年度更新期間について、従来6月1日~7月10日であったところ6月1日~8月31日に延長
②新型コロナウイルス感染症等の影響により、2020年2月以降の任意の期間において、事業等に係る収入が前年同期に比べて概ね20%以上減少している等の場合に、事業主からの申請により、労働保険料等の納付を、無担保かつ延滞金なしで1年間猶予する特例措置を実施(2020年2月1日から2021(令和3)年2月1日までに納期限が到来する労働保険料等が対象)行いました。

7.障害者虐待防止について
賃金不払等の使用者による障害者虐待の発生防止及び早期是正のため、関係機関との連携を深め、積極的な情報の共有を図り、障害者を使用する事業主に対する啓発・指導を行うとともに、そのような事案を把握した場合には、迅速かつ確実に監督指導等を行っています。

8.パワーハラスメント対策の推進
( 民事上の個別労働紛争の主な相談内容の件数の推移)
近年、都道府県労働局や労働基準監督署等に設けた総合労働相談コーナーに寄せられた職場のいじめ・嫌がらせに関する相談が増加を続ける等、職場のパワーハラスメントは社会問題として顕在化しています。

2018年(平成30年)、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において議論を行い、その結果を踏まえ、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案を、第198回通常国会に提出した。同法案は2019(令和元)年5月に成立し、同年6月に公布されました。
改正法においては、職場のパワーハラスメントを、職場において行われる、
①優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③労働者の就業環境を害するものの全てを満たすものとして定義し、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントと同様に、事業主に対して、パワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を義務付けたほか、

事業主に相談したこと等を理由とした不利益取扱いを禁止する等、セクシュアルハラスメント等の対策も強化しました。
さらに、改正法に基づく指針等について、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において議論が行われ、2020 (令和2)年1月にパワーハラスメントの防止のための指針等が告示されました。改正法及び指針は、2020年6月1日より施行されている(パワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置義務については、中小企業事業主は2022(令和4)年3月31日まで努力義務としました。

改正法が施行されたことを受け、都道府県労働局による事業主への助言・指導等を通じて法の履行確保を図るとともに、啓発用Webサイト「あかるい職場応援団」を活用し、社内研修用資料や啓発動画、裁判事例の掲載等、職場におけるハラスメントの防止・解決に向けた様々な情報を提供しています。さらに2019年度からは12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、シンポジウムの開催など、集中的な広報を行っています。これらに加えて、2022年4月1日に新たに雇用管理上の措置が義務化される中小企業事業主に対しては、2018年度から専門家による職場におけるハラスメント対策の具体的法のアドバイスや企業内研修を実施すること等により法の円滑な施行に向けて取り組んでいます。

9.個別労働紛争対策の総合的な推進
社会経済情勢の変化に伴う企業組織の再編や人事労務管理の個別化の進展等を背景として、解雇、職場におけるいじめ・嫌がらせ等について個々の労働者と事業主との間の紛争が増加傾向にあります これらの個別労働紛争について、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、2001(平成13)年10月1日から、次のような個別労働紛争解決制度が運用されています。

①全国の労働局や労働基準監督署等に総合労働相談コーナー*23を設け、労働問題に関するあらゆる相談に対応し、情報提供を行うワンストップサービスの実施
②紛争当事者に対し、紛争の問題点を指摘し、解決の方向性を示唆する都道府県労働局長による助言・指導の実施
③都道府県労働局に設置される紛争調整委員会において、紛争当事者双方の合意に向けたあっせん制度の実施
この制度の施行状況(2019(平成31)年4月~2020(令和2)年3月)は、総合労働相談コーナーにおいて受け付けた総合労働相談件数が1,188,340件、民事上の個別労働紛争に係る相談件数が279,210件、都道府県労働局長による助言・指導の申出件数が9,874件、紛争調整委員会によるあっせんの申請件数が5,187件となっています。

このように数多くの労働者、事業主に利用されているところですが、引き続き制度の周知・広報に努めるほか、個別労働紛争の迅速・適正な解決を図るべく、制度の趣旨に沿った運用に取り組んでいくこととしています。
*23 総合労働相談コーナーのご案内(厚生労働省ホームページ) https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/
(つづく)平林

-実践編・応用編

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