実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 157 | テクノファ

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新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。

(2)その他メンタルヘルス対策の推進
2006(平成18)年に策定された「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、メンタルヘルスケアの基本的な実施方法を示し、この指針に即した取組みが行われるよう事業者に対し指導を行っています。取組み方策が分からないなどの理由から取組みが遅れている事業場に対しては、全国の産業保健総合支援センターで、事業者からの相談に応じるとともに、個別事業場を訪問して助言を行うことなどにより、メンタルヘルス不調の未然防止から休業者の職場復帰に至るまでの総合的なメンタルヘルス対策導入についての支援を行っています。

また、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」において、事業者、産業保健スタッフ、労働者やその家族に対して、メンタルヘルスに関する最新情報や、事業場のメンタルヘルス対策の取組み事例等やセルフケアの方法等の様々な情報を提供しているほか、労働者からの電話・メール相談を実施しています。

(3)過重労働による健康障害を防止するための面接指導等の推進
過重労働による健康障害防止対策については、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(2002(平成14)年2月策定、2016(平成28)年改正)により、事業者が講ずべき措置について指導等を行ってきました。その中で、労働者の健康管理に関する措置として、労働安全衛生法第66条の8及び第66条の9の規定等に基づき、長時間労働を行った労働者への医師による面接指導等及び面接指導の結果に基づく就業上の措置等の実施の徹底を図ってきました。

また、2019(平成31)年4月施行の改正労働安全衛生法関係法令により、事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならないこととされ、時間外・休日労働時間が80時間を超え、かつ、申出のあった労働者、労働基準法による時間外労働の上限規制が適用されない研究開発業務に従事する労働者又は高度プロフェッショナル制度が適用され、かつ、長時間労働を行った労働者に対して、面接指導を実施しなければならないこととされました。加えて、同年4月1日には、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」について、長時間にわたる時間外・休日労働の実行ある抑制を図り、本対策をより一層推進するため、これらの改正内容を踏まえた所要の見直しを行いました。さらに、2020(令和 2)年4月より、これらの改正内容が中小企業事業主にも適用されたことから、同年4月1日には、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」についても所要の見直しを行いました。

その他「『過労死等ゼロ』緊急対策」に基づき、精神障害に関する労災支給決定が行われた事業場に対して、メンタルヘルス対策を主眼とする個別指導を実施するとともに、企業が、傘下事業場において、おおむね3年程度の期間に、精神障害に関する労災支給決定が2件以上行われた場合には、当該企業の本社事業場に対して、メンタルヘルス対策を主眼とする個別指導を実施し、全社的なメンタルヘルス対策の取組みについて指導を行っています。

(4)産業保健活動の促進
企業や地域での産業保健活動は、近年、メンタルヘルス不調や過重労働等による健康障害が課題となっている中、これらの予防や早期の対応を行う上で一層重要な役割を担うものであります。そのため、2019(平成31)年4月施行の改正労働安全衛生法関係法令により、産業医の権限を具体化するなど、産業医・産業保健機能の強化が行われました。また、各都道府県労働局では、事業者に対し、産業医等の適切な選任、衛生委員会の活動の活性化等について指導等を行うとともに、全国の産業保健総合支援センターにおいて、産業医等の産業保健関係者からの専門的相談対応、研修等を実施しています。

また、産業保健体制が不十分な労働者数50人未満の小規模事業場に対する支援として、産業保健総合支援センターの地域窓口(地域産業保健センター)において、健康診断の結果に関する相談、長時間労働者に対する面接指導、脳・心臓疾患のリスクの高い労働者に対する保健指導、メンタルヘルス不調者への相談指導等を実施しています。

さらに、独立行政法人労働者健康安全機構にて、小規模事業場におけるストレスチェックの実施などに対して費用を助成しているほか、ストレスチェック実施後の集団分析を踏まえた職場環境改善計画の実施、心の健康づくり計画の作成・実施、小規模事業場における産業医の要件を備えた医師の選任に対する助成を行っています。

(5)受動喫煙防止対策の推進
職場における受動喫煙防止対策については、労働安全衛生法により、2015(平成27)年6月から労働者の健康の保持増進のための措置という位置付けで、事業者及び事業場の実情に応じた適切な受動喫煙防止措置の実施が事業者の努力義務とされ、職場における一層の取組みが求められています。また、2018(平成30)年7月に成立した改正健康増進法により、受動喫煙を防止するための取組みが義務化され、2020(令和2)年4月1日に全面施行されました。

こうした事業者の受動喫煙防止の取組みへの支援として、中小企業事業主を対象にした喫煙室の設置の費用の助成のほか、専門家による電話相談や説明会などを実施しています。

(6)職業性疾病等の予防対策
粉塵障害防止対策については、2018(平成30)年度から開始した「第9次粉塵ん障害防止総合対策」により、新たな重点事項として「呼吸用保護具の使用の徹底及び適正な使用の推進」及び「じん肺健康診断の着実な実施」等を位置付け、計画的な指導を実施するなど、対策の推進を図っています。また、2018年度、ずい道等で粉塵ん作業に従事する労働者を対象に、健康情報等を一元的に保管するシステムを構築しました。

粉塵作業を行う坑内作業については、その作業環境を将来にわたってよりよいものとする観点から、粉塵源に関する措置や換気装置等による換気の実施の充実などを内容として、粉塵障害予防規則等を改正し、また事業者が実施すべき事項と関係する法令の規定のうち重要なものを一体的に示すため、「ずい道等建設工事における粉塵対策に関するガイドライン」についても改正し、原則2021(令和3)年4月1日から施行されます。

熱中症の予防対策については、WBGT値(暑さ指数)の活用や熱への順化、自覚症状 によらない水分・塩分の定期的な摂取、健康診断結果に基づく対応等について指導等を 行っています。また、2017(平成29)年から、「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施し、関係省庁や労働災害防止団体などとの連携の上、横断的な熱中症予防対策の推進を図っています。

振動障害の防止対策については、チェーンソー等の振動工具の振動加速度のレベルに応じて、振動に暴露される時間を抑制すること等を内容とした、「チェーンソー取扱い作業指針」や「チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」の周知等を行っています。

腰痛予防対策については、2013(平成25)年6月に改正した「職場における腰痛予防対策指針」に基づく対策を推進しています。

電離放射線による障害防止対策については、眼の水晶体の等価線量限度を引き下げる等の電離放射線障害防止規則の一部を改正する省令が2021年4月1日から施行されることを踏まえ、特にその影響を受ける医療分野については、被ばく量低減のための器具の購入に対する補助とともに、被ばく量の低減計画の作成を含む放射線管理のための研修を行いました。

(7)職場における新型コロナウイルス感染症への感染予防と健康管理の強化
職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止については、事業者が対策に取り組む方針を定め、全ての労働者にこれを伝え、趣旨を踏まえて感染拡大防止に向けた労働者一人ひとりの行動変容を促すことが重要であります。このため厚生労働省では、各関係団体において作成された「業種ごとの感染拡大予防ガイドライン」等の実践による労働者が安全かつ安心して働ける環境づくり等について、累次にわたって労使関係団体を通じた協力要請を行いました。

また、各都道府県労働局に「新型コロナウイルス感染拡大防止対策コーナー」を設置し、事業主や労働者からの相談等に対応するとともに、局及び労働基準監督署の幹部や職員が事業主や事業場担当者と接する機会を活用し、感染予防のための事業場で特に留意すべき事項「取組の5つのポイント」の取組状況の確認や「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」を活用した感染防止対策への取組要請等を併せて行いました。

4.化学物質、石綿による健康障害の防止
(1)職場における化学物質管理
化学物質は、製造業や建設業等で使用されるほか、サービス業等においても広く使用されるなど、産業や日常生活において不可欠な存在であります。他方、化学物質を不適切に取り扱うと働く人の安全や健康を損なうこととなります。このため労働安全衛生法令では、化学物質のうち特に危険有害な123物質を、局所排気装置等の換気対策、作業環境中の有害な物質の気中濃度の測定、健康診断、保護具の使用等の規制対象とし、また、674の化学物質について、譲渡、提供する際の容器等へのラベル表示、安全データシートによる危険有害性情報の伝達を求めるとともに、その使用に際してのリスクアセスメントの実施等を事業者に求めています。

近年、胆管がんや膀胱がんなどといった化学物質による健康障害が発生し、社会的に注目を集めています。厚生労働省では、管轄する労働局・労働基準監督署と協力し、また、(独)労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の調査を通じて原因物質の推定と対策 の検討を進め、順次健康障害防止対策に係る指導や要請を行っています。

作業環境測定を行う必要がある作業場について、化学物質の管理や有害業務の状況等を踏まえ、一部の特定化学物質、鉛及び有機溶剤業務については、従来のものに加え、作業に従事する労働者の身体に装着する試料採取機器を用いる作業環境測定ができるよう作業環境測定法施行規則等を改正し、2021(令和3)年4月1日から施行されます。

溶接ヒューム及び塩基性酸化マンガンについては、労働者に神経障害等の健康障害を及ぼすおそれがあることが明らかになったことから、労働者への化学物質へのばく露防止措置や健康管理を推進するため、労働安全衛生法施行令及び特定化学物質障害予防規則を改正し、特定化学物質(管理第二類物質)として位置づけ、発散防止抑制措置、作業環境測 定等の実施、作業主任者の選任、健康診断の実施等の措置、また金属アーク溶接等作業については溶接ヒュームの濃度の測定、測定結果に基づく有効な呼吸用保護具の使用、呼吸用保護具の適切な装着確認等の措置を義務付け、原則2021年4月1日から施行されました。

また、ベンジルアルコールを含有する塗膜剥離材を使用した際の中毒事案が多発したことを踏まえ、2021年1月に、ベンジルアルコールを1%以上含有する製品を譲渡、提供する際の容器等へのラベル表示、安全データシート(SDS)による危険性・有害性等の情報伝達及び使用に際してのリスクアセスメントの実施を義務付けがされました。

(2)リスク評価に基づく化学物質管理
産業現場で使用される化学物質は数万種類に及び、毎年1,000物質程度の新規化学物質が製造又は輸入され、厚生労働省に届けられています。これらのうち危険有害性情報を有することが国の内外で確認された化学物質については、厚生労働省による化学物質のリスク評価制度の下、事業場における使用実態を調査し、必要が認められた場合には労働安全衛生法令の対象とすることにより事業者にばく露防止措置を求めています。
このリスク評価制度が創設された2006(平成18)年以降、これまでに29物質が特定化学物質障害予防規則の対象に追加されています。

(3)石綿(アスベスト)対策の適切な実施
石綿*25製品については、2006(平成18)年9月から、輸入や国内での製造等を禁止しており、代替化が困難であったため製造等禁止の措置を猶予していた一部の特殊な製品についても、2012(平成24)年3月には代替化が完了し、製造等は全面的に禁止されています。
一方で、石綿の製造等禁止前に建てられた建築物に今も多くの石綿建材が残っています。こうした石綿使用建築物の解体や改修が進んでおり、今後その量がピークを迎えることから、建築物の解体等の作業に従事する労働者の石綿ばく露の防止は、一層重要な課題となっています。このようなことから、石綿含有有無の事前調査・分析調査を行う者の要件化、事前調査結果の労働基準監督署への届出制度の新設等を内容とする石綿障害予防規則等の一部を改正する省令を2020(令和2)年7月以降に公布したところであります。 また、2020年11月以降、相次いで0.1%を超えて石綿を含有する製品が流通する事案が発生したことを踏まえ、改めて輸入事業者、販売事業者等に石綿含有製品の輸入、譲渡、提供等の禁止の徹底のための措置及び流通が確認された場合の対応を指導しています。 また、大阪泉南アスベスト訴訟において、2014(平成26)年10月に、石綿工場の元労働者の健康被害について国の損害賠償責任を一部認める最高裁判決が言い渡されたことを受け、厚生労働大臣談話を発表し、国の損害賠償責任が認められた方々と同様の状況にあった方々について、同判決に照らして訴訟上の和解の途を探ることとしており、その周知を図っています。
*25 石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状珪酸塩鉱物で、そのばく露により、主に石綿肺、肺がん、中皮腫のような健康障害 を生ずるおそれがある。
(つづく)平林

-実践編・応用編

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