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採用における年齢制限の禁止 | テクノファ

投稿日:2022年5月1日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、前回までは社会保険、社会福祉、公的扶助など社会保障制度について説明しました。今回は労働者の雇用、労働契約に関連する知識、資料などについて説明します。

労働者を雇用する時のルール
■採用・選考時のルール
厚生労働省のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/saiyou_senkou_rule.html
より引用説明します。

1 募集・採用における年齢制限の禁止について
厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/topics/tp070831-1.htmlより引用。

労働者に、より均等に働く機会が与えられるよう、雇用対策法が改正され、平成19年10月から、事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないこととされ、年齢制限の禁止が義務化されました。求人票には年齢不問としながらも年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定する行為、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変える行為はこの法律の規定に反します。原則として、求人年齢は不問としなければなりません。

原則として募集・採用における年齢制限は禁止されていますが、合理的な理由があって、例外的に年齢制限が認められる場合を厚生労働省令で下記のように定めています。
例外事由(雇用対策法施行規則第1条の3第1項)
1号 定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
2号 労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合
3号のイ 長期勤務によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
3号のロ 技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
3号のハ 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合
3号のニ 60歳以上の高年齢者又は特定の年齢層の雇用を促進する施策の対象となる者に限定して募集・採用をする場合
また例外事由の一つに(令和5年3月31日までの措置)就職氷河期世代(35歳以上55歳未満)の不安定就労者・無業者があります。

2 募集・採用における性別による差別の禁止について
事業主は、労働者の募集・採用において性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないとされています(男女雇用機会均等法第5条)。

3 公正な採用選考について
厚生労働省では、就職の機会均等を確保するために、応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考を実施するよう要請し厚生労働省のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm
に、公正な採用選考の基本を下記のように挙げています。

公正な採用選考の基本
(1)採用選考の基本的な考え方・・・
ア 採用選考に当たっては
・ 応募者の基本的人権を尊重すること
・ 応募者の適性・能力に基づいて行うこと

の2点を基本的な考え方として実施することが大切です。
イ 公正な採用選考を行う基本は
・ 応募者に広く門戸を開くこと言いかえれば、雇用条件・採用基準に合った全ての人が応募できる原則を確立すること
・ 応募者の適性・能力に基づいて行うこと、つまり、応募者のもつ適性・能力が求人職種の職務を遂行できるかどうかを基準として採用選考を行うことです。就職の機会均等とは、誰でも自由に自分の適性・能力に応じて職業を選べることですが、このためには、雇用する側が公正な採用選考を行うことが必要です。

(2) 公正な採用選考を行うためには・・・・
ア 公正な採用選考を行うことは、家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないということです。
そのため、応募者の適性・能力に関係のない事柄について、応募用紙に記入させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要です。これらの事項は採用基準としないつもりでも、把握すれば結果としてどうしても採否決定に影響を与えることになってしまい、就職差別につながるおそれがあります。

イ なお、個人情報保護の観点からも、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められません。

ウ 『応募用紙』については、新規中卒者は「職業相談票(乙)、新規高卒者は「全国高等学校統一応募書類を用いることとされています。また、新規大卒者は「新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例又は、「厚生労働省履歴書様式例、その他の求職者は「厚生労働省履歴書様式例を用いるようにし、事業主が独自に応募用紙やエントリーシートの項目・様式を設定する場合は、適性と能力に関係のない事項を含めないよう留意が必要です。

エ 『面接』を行う場合についても、職務遂行のために必要となる適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目や評価基準を決めておき、適性と能力に関係のない事項を尋ねないよう留意が必要です。

また、応募者の基本的人権を尊重する姿勢、応募者の潜在的な可能性を見いだす姿勢で臨み、できるだけ客観的かつ公平な評価を行う必要があります。

オ 障害者、難病のある人、LGBT等性的マイノリティの人など特定の人を排除しないことが必要です。特定の人を排除してしまうというのは、そこに予断と偏見が大きく作用しているからです。当事者が不当な取り扱いを受けることのないよう理解をする必要があります。
(つづく)A.K

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