キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について説明していますが、今回は労働者の雇用、労働契約に関連する知識、資料などについて、前回の採用・選考時の労働者を雇用する時のルールの続きから説明します。
(3)採用選考時に配慮すべき事項
次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、cを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
a. 本人に責任のない事項の把握
・本籍・出生地に関すること(「戸籍謄(抄)本や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
b. 本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
c. 採用選考の方法
・身元調査などの実施 (「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
4 募集・採用における障害者への差別禁止と合理的配慮の提供について
平成28年4月より、事業主は労働者の募集及び採用において、障害者であることを理由に差別することが禁止されています(障害者雇用促進法第34条)。また、障害者から必要な配慮の申出等を受けた場合は、合理的な配慮の提供が義務付けられています(障害者雇用促進法第36条の2)。
厚生労働省ホームページ障害者差別の禁止について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html
とそのリンク先の資料から引用説明します。
障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(概要)
(1)基本的な考え方
・対象となる事業主の範囲は、すべての事業主。
・対象となる障害者の範囲: 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者。( 障害者手帳所持者に限定されることはありません)
・障害者であることを理由とする差別(直接差別)を禁止。
車いす、補助犬その他の支援器具などの利用、介助者の付き添いなどの利用を理由とする不当な不利益取扱いを含む。
・事業主や同じ職場で働く者が、障害特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要。
(2)差別の禁止
・事業主が適切に対処することができるように、募集・採用、賃金、配置、昇進、降格、教育訓練などの各項目について、差別に当たるとみなされる具体的な禁止事項が明記されています。
このホームページのリンク先の資料には、上記の具体的な禁止事項として明記されている例として、募集・採用の項目についての禁止事項について次のように書かれています。
募集・採用
イ 障害者であることを理由として、障害者を募集又は採用の対象から排除すること。
ロ 募集又は採用に当たって、障害者に対してのみ不利な条件を付すこと。
ハ 採用の基準を満たす者の中から障害者でない者を優先して採用すること。
ただし、次の措置を講ずることは、障害者であることを理由とする差別に該当しない。
・積極的差別是正措置として、障害者を有利に取り扱うこと。
・合理的配慮を提供し、労働能力などを適正に評価した結果、異なる取扱いを行うこと。
・合理的配慮の措置を講ずること。
など
■卒業・修了予定者の就職・採用活動
内閣官房のホームページ
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shushoku_katsudou_yousei/index.html
より引用説明します。
就職・採用活動に関する要請
我が国の持続的な発展のためには、若者の人材育成が必要不可欠であり、学生が学業に専念し、安心して就職活動に取り組める環境をつくることが重要です。
学生の就職・採用活動日程については、2017年まで(1)日本経済団体連合会による「採用選考に関する指針」の策定、(2)就職問題懇談会による「申合せ」、(3)関係省庁(内閣官房、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省)による経済団体等への「要請」というプロセスにより毎年度定められてきましたが、2018年10月、経団連は今後「採用選考に関する指針」を策定しない方針を表明しました。以来、政府において、学生が学修時間等を確保しながら安心して就職活動に取り組むことができるよう、毎年度、関係省庁連絡会議を開催し、当該年度の大学2年次に属する学生等の「就職・採用活動日程に関する考え方」をとりまとめ、就活・採用活動日程をはじめとする事項を遵守するよう経済団体等へ要請しています。
直近に出された「2023 年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」は
https://www.iess.ccsv.okayama-u.ac.jp/koudai-shien/wp-content/uploads/sites/5/2021/12/career20211129.pdf
において確認できます。
(つづく)A.K