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使用者が労働者に労働条件を明示する | テクノファ

投稿日:2022年5月3日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について説明していますが、今回は労働者の雇用、労働契約に関連する知識、資料などについて、前回の続きから説明します。

■人を雇うときのルール
厚生労働省のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/koyou_rule.html
より引用説明します。

1 労働契約の締結
(1)労働条件の明示
労働契約を結ぶときには、使用者が労働者に労働条件を明示することが必要です。さらに、特に重要な次の項目については、口約束だけではなく、きちんと書面を交付する必要があります(労働基準法第15条)。
・契約はいつまでか(労働契約の期間に関すること)(労働契約を締結するときに、期間を定める場合と、期間を定めない場合があります。一般的に、正社員は長期雇用を前提として特に期間を定めず、アルバイトやパートタイマーなど短時間労働者は期間の定めがあることが多い)
・期間の定めがある契約の更新についての決まり(更新があるかどうか、更新する場合の判断のしかたなど)
・どこでどんな仕事をするのか(仕事をする場所、仕事の内容)
・仕事の時間や休みはどうなっているのか(仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、就業時転換〔交替制〕勤務のローテーションなど)
・賃金をどのように支払うのか(賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期)
・辞めるときのきまり(退職に関すること(解雇の事由を含む))

これら以外の労働契約の内容についても、労働者と使用者はできる限り書面で確認する必要があると定められています(労働契約法第4条第2項)。

(2)労働契約の禁止事項
労働法では、労働者が不当に会社に拘束されることのないように、労働契約を結ぶときに、会社が契約に盛り込んではならないことも定められています。次のような事項についてです。
[1]労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせることや、その額をあらかじめ決めておくこと(労働基準法第16条)
たとえば、「1年未満で会社を退職したときは、ペナルティとして罰金10万円」「会社の備品を壊したら1万円」などとあらかじめ決めてはなりません。これはあらかじめ賠償額について定めておくことを禁止するもので、労働者が故意や不注意で、現実に会社に損害を与えてしまった場合に損害賠償請求を免れるという訳ではありません。
[2]労働することを条件として労働者にお金を前貸しし、毎月の給料から一方的に天引きする形で返済させること(労働基準法第17条)
労働者が会社からの借金のために、辞めたくても辞められなくなるのを防止するためのものです。
[3]労働者に強制的に会社にお金を積み立てさせること(労働基準法第18条)
社員旅行費など労働者の福祉のためでも、強制的に積み立てさせることは、その理由に関係なく禁止されています。ただし、社内預金制度がある場合など、労働者の意思に基づいて、会社に賃金の一部を委託することは一定の要件のもと許されています。

(3)採用内定について
採用内定により労働契約が成立したと認められる場合には、採用内定取消しは解雇に当たるとされています。したがって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上認められない場合は、採用内定取消しは無効となります(労働契約法第16条)。
内定取消しが認められる場合には、通常の解雇と同様、労働基準法第20条(解雇の予告)、第22条(退職時等の証明)などの規定が適用されますので、使用者は解雇予告など解雇手続きを適正に行う必要があります。採用内定者が内定取消しの理由について証明書を請求した場合には、速やかにこれを交付する必要があります。

2 就業規則
常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法第89条)
就業規則に必ず記載しなければならない事項(労働基準法第89条)
・始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務の場合の就業時転換に関する事項
・賃金に関する事項
・退職に関する事項
就業規則の作成・変更をする際には必ず労働者側の意見を聴かなければなりません(労働基準法第90条)
就業規則の内容は法令や労働協約に反してはなりません(労働基準法第92条、労働契約法第13条)

3 労働保険
(1)雇用保険
雇用保険は、労働者が失業した場合に、生活の安定と就職の促進のための失業等給付を行う保険制度です。事業所規模にかかわらず、①1週間の所定労働時間が20時間以上で②31日以上の雇用見込がある人を雇い入れた場合は適用対象となります。雇用保険制度への加入は事業主の義務であり、労働者は自分が雇用保険制度へ加入しているかどうか、ハローワークに問い合わせることも可能です。保険料は労働者と事業主の双方が負担します。
(2)労災保険
労災保険は、労働者の業務が原因でけが、病気、死亡(業務災害)した場合や、また通勤の途中の事故などの場合(通勤災害)に、国が事業主に代わって給付を行う公的な制度です。
労働基準法では、労働者が仕事で病気やけがをしたときには、使用者が療養費を負担し、その病気やけがのため労働者が働けないときは、休業補償を行うことを義務づけています(労働基準法第75、76条)。しかし、事業主に余裕がなかったり、大きな事故が起きたりした場合には、迅速な補償ができないかもしれません。そこで、労働災害が起きたときに労働者が確実な補償を受けられるように、労災保険制度を設けています。基本的に労働者を一人でも雇用する会社には適用され、保険料は全額事業主が負担します。パートやアルバイトも含むすべての労働者が対象です。
(つづく)A.K

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