実践編・応用編

昔ながらの中華そばを食べたい | テクノファ

投稿日:2022年5月14日 更新日:

このコーナーは、活躍しているキャリアコンサルタントの皆さんからの近況や情報などを発信いたしています。今回はキャリアコンサルタントのS.Sさんからの便りです。

私は昔からラーメンが大好きで、「美味しい店があるよ」と聞けば、たとえ遠くとも食べるためだけにわざわざ出かけて行ったりするほどだ。
ただ、ここ数年は年齢のせいか脂っこいものや味が濃い類のものには食傷気味で、どちらかと言えばサッパリして薄味のものを好むようになってきている。だが、いかに薄味であってもダシが効いていないものは失格だ。というわけで、最近は「昔ながらの中華そば」が食べたいと強く思うようになった。

ラーメンは既に日本独自の食文化として定着しており、ラーメンだけでテレビの特番が組まれるほどの人気となっている。
各店とも独自の味を目指し、様々な工夫を凝らしながら「味」の追求に命を賭けていると言っても過言ではない。だが、そういった真剣な姿勢や熱意は買うが、いかんせん過ぎたるは及ばざるが如しの格言にもあるように、どれもこれも凝り過ぎていて本来の「美味さの追求」から外れてしまい、最初にガツンとくる味もすぐに飽きられてしまう。

リピート客が来なくては、一巡したら廃業となってしまうだろう。凝れば凝るほど、そもそも「求められる味」とはどのようなものなのかが判らなくなってきつつあるような気がする。僕としては、もはや背油で混濁したスープなどいらないし、それこそ奇を衒った変なトッピングや山のように具を乗せたものなどは既に次回候補から外している。

要するに「話題性を狙っただけで中身のないラーメン」など、もはや食べたいと思わなくなったのだ。むろん化学調味料などは論外である。そこで、初心に戻って・・というわけではないのだが、「昔から在った中華そば」・・という流れである。意外にも蕎麦屋のメニューの隅っこに載っている「中華そば」こそが美味しかったりする。

意外と言っては失礼だが、どちらかといえば本業である「蕎麦」ではなく、お客さんの要望に応えるためにサブ的に用意してあるメニューだと思うのだが、シイタケや昆布、または鰹節といった「めんつゆ」を作る材料で仕上げられた中華スープは、シンプルながらも深い味わいがあって美味しいのだ。

いきなり冒頭からラーメンの話など始めてどういうつもりだ!とお叱りを受けそうだが、意外にもこのことは人間関係性にも共通することではないだろうか・・と思えたのである。というのは、年齢のせいかもしれないが、こと人間関係においてもラーメンと同様に、ゴテゴテしたものではなく、回りくどいものでもなく、変な誇張もなく、できるだけ単刀直入でシンプルなやりとりを望むように変化してきている気がする。

言い訳的な釈明や立場を考慮に入れた弁明などをできるだけ排除し、少ない言葉ではあっても変に飾らず「そのままを伝えること&変に勘ぐることなく相手の言葉を信じること」を目指そうと思うようになったといえば理解して戴けるだろうか・・思ったということだけで、実践できているか否かは別のことではあるが、いろいろと言葉を飾ることや変に言い方を考えて脚色したりすることが、まさに「伝わること」の邪魔をしているのではないか・・と思い始めている。

つまり、人と人との関係がなかなか深まらない最大の要因は「遠慮」であったり、余計な「配慮」であったり、いらぬ「気遣い」ではないかと思うのだ。もしかしたら、意外にも「コミュニケーションスキル」こそが、他者との関係に溝を作り、なかなか距離が埋まらないといった結果を生み出す「余計なもの」なのかもしれない。社会構成的な言い方を借りれば、複雑な関係とは複雑なイメージや余計な言葉のやりとりによって生み出されていると言えなくもない。

「本質」を言葉で表現しようとするならば、語彙力や豊富なボキャブラリーを用いて・・となりがちだが、意識化が不充分なまま急いで言語化すること自体に無理があるのかもしれない。沈黙も大切である。かと言って何も語らなければ、相手が待ち切れずに去ってしまうこともある。「対話とは、他者と自分との違いを確認し合うプロセスである。」・・これはM・ブーバーの言葉だが、先人たちが残した古い書籍を読むにしても、トーク番組で語る評論家の言葉を聴くにしても、目の前の相手と向き合うにしても、いずれの場においても、そこに自分の「思い込み」や通念としての「普通」、または既成の概念を持ちこんでしまえば、彼らの主張は全く聴こえないだろうし、こちらの意図も伝わることはないだろう。互いの違いに違和感が浮上するような意外性にこそ価値があるのである。

それも、僕が勤務する教育現場でも、企業体でも、役場でも、医療現場でも、なにかといえば「チームが一丸となって事に臨むことが肝要だ!」と口を揃えるが、本当の意味でのチームビルディングとは深い信頼関係が土台になっていなくてはならない。信頼関係とは、互いの間に「違い」があることが大前提であるのだから、遠慮など無用であり、煩わしい配慮など省き、気遣う必要などない状況に在って、両者が安心して自己開示できる関係のことである。

などとラーメンの汁を啜りながら思いつくまま思考することを楽しんでいたら、ダシに使われている昆布やシイタケ、鰹節や煮干しなど、混然一体と溶け合っていた味のひとつひとつが感じられ、うん・・対人コミュニケーションも、決してテクニックやスキルなどによって築かれるものではないよな・・それじゃインチキだ!などと勝手に納得してしまった。
(つづく)K.I

-実践編・応用編

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