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経営不振により解雇せざるを得ない場合 | テクノファ

投稿日:2022年5月22日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について説明していますが、今回は労働者の雇用、労働契約に関連する知識、資料などについて、前回の続きから説明します。

3 整理解雇
使用者が、不況や経営不振などの理由により、解雇せざるを得ない場合に人員削減のために行う解雇を整理解雇といいます。これは使用者側の事情による解雇ですから、次の事項に照らして整理解雇が有効かどうか厳しく判断されます。
・人員削減の必要性
人員削減措置の実施が不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること
・解雇回避の努力
配置転換、希望退職者の募集など他の手段によって解雇回避のために努力したこと
・人選の合理性
整理解雇の対象者を決める基準が客観的、合理的で、その運用も公正であること
・解雇手続の妥当性
労働組合または労働者に対して、解雇の必要性とその時期、規模・方法について納得を得るために説明を行うこと

4 退職勧奨について
解雇と間違えやすいものに退職勧奨があります。退職勧奨とは、使用者が労働者に対し「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、退職を勧めることをいいます。これは、労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります。
労働者が自由意思により、退職勧奨に応じる場合は問題となりませんが、使用者による労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる場合があります。
なお、退職勧奨に応じて退職した場合には、自己都合による退職とはなりません。
5 相当数の離職者発生の場合の届出など(再就職援助計画、大量雇用変動の届出等)
事業主は事業規模の縮小などにより一定期間内に相当数の離職者が発生する場合、ハローワークへの届出などの義務を負うことになります。
■労働条件に関する情報
厚生労働省の情報発信サイト「確かめよう労働条件」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/
が開設されています。
厚生労働省は2014年11月に賃金や労働時間といった労働条件に関する情報発信を行うポータルサイト「確かめよう 労働条件」を開設しました。
若者の「使い捨て」が疑われる企業が社会問題となるなかで多数の相談が寄せられ、その時に多く寄せられた長時間労働や賃金不払残業などの相談内容にも対応するため、労働時間や割増賃金等の労働条件や労務管理に関する情報を広く発信するためにサイトを開設しました。
このサイトでは、労働条件や労務管理に関するQ&Aを、労働者やその家族向け、事業主や企業の労務管理を担当している人向けに分けて掲載するなど、閲覧者が利用しやすいように情報を掲載しています。
●雇用の支援策
■事業主の方のための雇用関係助成金
厚生労働省が提供する助成金は、雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上などに役立つものが多数あります。
厚生労働省のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
からリンク先の各種助成金サイトを検索することができます。
また「令和3年度雇用・労働分野の助成金のご案内パンフレット」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf
により令和3年度の雇用関係助成金、労働条件等関係助成金の概略を見ることができます。
●雇用に関する法律
■労働契約法
厚生労働省のホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/roudoukeiyaku01/index.html
とそのリンク先の資料を引用して説明します。
就業形態の多様化に伴い、労働者の労働条件が個別に決定・変更されるようになり、個別労働紛争が増加しました。この紛争の解決の手段としては、裁判制度のほかに、平成13年から個別労働紛争解決制度が、平成18年から労働審判制度が施行されるなど、手続面での整備は進みましたがこのような紛争を解決するための労働契約についての民事的なルールをまとめた法律はありませんでした。
このような中で、平成20年3月(2008)から「労働契約法」が施行され、労働契約についての基本的なルールが明示されました。また「労働契約法の一部を改正する法律」が平成24年8月10日に公布され、順次施行されています。
■労働契約法のポイント
厚生労働省のホームページ 労働契約法について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/roudoukeiyaku01/index.html
厚生労働省のホームページ労働契約法のポイント
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/080218-1.html
厚生労働省のホームページ 労働契約法の改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/index.html
以上の各サイトより引用説明します。
労働契約法における「労働者」とは
使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けている場合には、「労働者」として労働契約法の対象になります。(第2条第1項)
「請負」や「委任」という形式をとっていても、実態として、使用者の指揮・命令のもとに働き、その報酬として賃金を受けていれば、「労働者」になります。
■労働契約の基本ルール
〇労働契約の締結や変更に当たっては、労使の対等の立場における合意によるのが原則です。(第3条第1項)
〇 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、均衡を考慮することが重要です。(第3条第2項)
〇 労働者と使用者は、労働契約の締結や変更に当たっては、仕事と生活の調和に配慮することが重要です。(第3条第3項)
〇 労働者と使用者は、信義に従い誠実に行動しなければならず、権利を濫用してはなりません。(第3条第4項・第5項)
〇 使用者は、労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにする。(第4条第1項)
〇 労働者と使用者は、労働契約の内容(有期労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面で確認する。(第4条第2項) 〇 使用者は、労働者の生命や身体などの安全が確保されるように配慮する。(第5条)
(つづく)A.K

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