基礎編・理論編

マネジされた組織変革の文化アセスメント|テクノファ

投稿日:2022年6月3日 更新日:

私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認定を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしたのです。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。
今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
第18章
マネジされた組織変革の一部としての文化アセスメント
第16章と第17章では,文化が進化し,変化するさまざまな方法を紹介した。これらの変革の多くは,ある一定の価値観や信条を備えた人材を昇進させることによって得られるリーダーシップの行動によって推進される。もしこのような活動のスピードが遅すぎる場合には,また組織がさらに迅速な変革を必要としている場合には,経営リーダーは「マネジされた変革プロセス」に目を向ける。この変革モデルは前章でも紹介したし,私の別の著書Corporate Culture Survival Guide,2nd Ed.(Schein,2009b)でも詳しく説明している。前にも指摘した通り,文化はそのような変革に関わりを持ち,ときによっては変革の直接のターゲットにもなり得る。その意味で文化を迅速にアセスする方法を開発することが必要となる。その結果変革リーダーは,文化の側面がいかに彼らを支援し,ときには妨害し,あるいは文化自体が単独で変革のターゲットになるか否かを決定することができる。

迅速な解釈多段階グループプロセス
ここで私が紹介するプロセスは,変革プロセスのリーダーたちに,彼らの文化に含まれる諸側面を迅速に分析し,解釈する方法を提供する。その結果彼らはその変革プログラムに対する文化の妥当性を評価することが可能になる。私自身この種の調査を設計したり,面接プログラムを依頼されることが多いけれども,私はつねにそれは必要でないし,望ましくもないと答えている。というのは以下に紹介するグループ面接プロセスは迅速であると同時に,妥当性も高い。何故ならこの相互交流プロセスを通じて共有される前提認識により迅速に到達できるからだ。このプロセスは,変革ゴールがすでに明確になっている変革プログラムの枠組みにおいて,もっとも有用性が高まる。ここでは文化について,変革プログラムにとって潜在的な支援をもたらすのか,阻害要因をもたらすのかをアセスすることが可能となる。変革にフォーカスしない限り,このプロセスは退屈で,方向の定まらないものになりかねない(Schein,2009b)。

もし私が文化アセスメントを実施するように求められたら,私は次のような質問をまず投げかける。「何故文化のアセスメントをするのですか?」「どのような問題を解決しようとしているのですか?」「文化という言葉をどのような意味で使っているのですか?何故文化のアセスメントが役に立つと考えているのですか?」といった質問だ。これらの質問に対する回答から,そのクライアントが抱いている変革の計画の方向があきらかになってくる。クライアントに変革の方向を明確に理解してもらうことがまず第1にきわめて重要だ。クライアントが具体的な言葉で,望まれる「新しい仕事の進め方」がどのようなものかを理解してはじめて,文化のアセスメントを迅速に実施に移せるのだ(Schein,2009b)。

アセスメントのプロセスに含まれる重要な内容は,まず組織内のひとつ,またはいくつかの代表的なグループを招き,組織文化とそのサブカルチャーをどう考えるべきかについてのモデルを提供し,そのあと彼らに主要な人工の産物(artifacts),信奉された価値観(espoused values),共有された,暗黙の前提認識(shared tacit assumptions)はどんなものかを尋ねるというものだ。このプロセスでは,促進者,記録係,必要に応じては疑問を投げかけたり,場を刺激したりする役割を担う外部の人材も活用する。組織の経営陣のメンバーが促進者として参加することも可能であるけれども,この場合は,この人物が招かれたグループの直接の上司ではないこと,さらにいかに文化が機能しているのかを理解していることが求められる。この種のアセスメントは次のような重要な前提認識を満たしていなければならない。

・文化は共有された前提認識のセットである。それ故,グループというセッティングで直接的なデータを収集する方法が個別のインタビューを行う方法よりも適切であり,妥当性も高いのだ。
・文化に含まれる前提認識の前後関係における意味はその文化に属するメンバーのみが完璧に理解できる。したがってメンバーの理解を促す手段を生むことのほうが,研究者やコンサルタントがその理解を得ることよりも一層重要なのだ。
・組織が直面している具体的な課題に対して文化のあらゆる側面が関わっているわけではない。文化のあらゆる側面について文化全体を調査しようとする試みは非現実的であると同時に不適切なものとなる。
・組織の内部の人材は,文化を作り上げている共有された,暗黙の前提認識を理解し,明確にすることができる。しかしこのプロセスでは外部の人材からの支援を必要とする。したがって支援者/コンサルタントは,主にプロセス・コンサルティングのモデルにもとづいて協力すべきであり,あるグループの文化の内容に関する専門家になることは極力避けるべきだ(Schein,1999a,2009a)。
・文化の前提認識の一部は,その組織の変革ゴールの達成,あるいは現状の問題の解決を支援していると認識されるのに対して,ほかの部分は制約要因, または阻害要因として認識されている。したがってグループのメンバーは,彼らが文化の諸前提認識をこのふたつのカテゴリーに分類することをたすけるプロセスが提供されることが重要だ。
・文化のアセスメントを促した問題を解決するための組織の実践の変革は,通常既存の文化の前提認識にもとづいて新しい方法を導くことによって達成可能だ。言い換えると,文化の解釈のプロセスは,新しい方法は既存の文化から導かれることが多いだけでなく,導きだされるべきだということをあきらかにする。
・もし文化の変革が必要であるということが判明したとしても,これらの変革がその文化の全体を巻き込むことはまずあり得ない。ほとんどの場合,文化に含まれるひとつか,ふたつの前提認識の変革に留まる。きわめて稀なケースで,基本的なパラダイムの変革が求められる。その場合にはその組織に対して,何年にもわたる大規模な変革プロセスが要求される。

ステップ1:経営陣からのコミットメントを確保する
文化の前提認識を分析し,その組織の変革プログラムに対する妥当性を評価することは,その組織の歴史にとって重要なインターベンション(介入)ととらえるべきであり,したがって,その組織の公式のリーダーたちから完全な理解と合意が得られたあと実施に踏み切るべきだ。ということは,その組織のリーダーが何故このアセスメントを望んでいるのかをたしかめることに留まらず,これから開始されるグループのミーティングに対する完璧なコミットメントを得るためのプロセスや潜在的な影響についても十分に考えておくべきなのだ。

ステップ2:自己評価を進めるグループを選ぶ
企業文化を代表するグループをどのように選ぶかを決定することが,公式のリーダーたちと協力して仕事を進めるファシリテーターにとっての次のステップとなる。この選択に用いられる基準は,解決すべき問題の具体的な内容に影響を受ける。グループはある部門ごと,あるいはランクごとに同質の人材を集めることもできるし,組織を斜めに切って,意図的に異質の人材を集めることもできる。ひとつのグループは3人という小規模から30人の大規模な形で作ることができる。またいくつかの顕著なサブグループが存在していると考えられる場合には,このプロセスをいくつかの違ったグループで繰り返して実施することもできるし,あるいは異なったグループからサンプルを選んでミーティングに参加してもらい,本当に想定された差が存在するのか否かをテストすることも可能だ。

またグループ内のメンバーの構成は,その組織における信頼とオープンさのレベルについてのクライアントの経営陣の認識からも影響を受ける。とくにミーティングにおける議論を乱す可能性のあるシニア人材をミーティングに含めるべきか否かの決定の際には,トップ経営陣の考え方が重要になってくる。一方ミーティングでは議論をオープンにすることが望ましいので,ランクのレベルを混ぜないほうがよいのかも知れない。またもう一方では,グループのミーティングで生まれてくる前提認識が階層レベルを越えて共有される程度を高めることも重要なので,ここではさまざまなランクのグループを混ぜる考え方が支持される。さまざまな垣根を越えた信頼とオープンさの程度そのものがその文化の特徴を示すことになるので,異質の人材が混ざったグループでまずスタートし,そのあとグループにコミュニケーションの一部の領域が異質な人材が混ざっているために阻害されているのか,いないのかの程度を実際に経験してもらうとよいだろう。また権威の関係や親密のレベルは本来的に文化の領域に属するものなので,インサイダーを招いてグループを選んでいくプロセスは,それ自体で文化の重要な側面を明示することになる。したがってコンサルタント/ファシリテーターは,クライアント組織のメンバーとの交流の機会を,このプラニングのプロセスを通じて診断データとして活用すべきだ。

グループが形成されたあと,公式のリーダーがグループに対してこのミーティングの目的を告げ,ファシリテーターとの会話をレビューし,ミーティングに出席するように選ばれた理由を全員に説明すべきである。文化のアセスメントを実施するためにミーティングに招かれた,というだけの説明ではあいまいすぎる。参加者は,どのような変革プログラムに取り組んでいるのか,また経営リーダーもこのアセスメントのプロセスにコミットしているのか否かについての事実も説明されなければならない。さらにリーダーは,オープンさと率直さが求められていること,文化それ自体は良くも,悪くもない中立の存在であることを強調すべきだ。
(つづく)平林

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