基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 176 | テクノファ

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私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認定を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしたのです。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。
今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
文化のさまざまな側面が変革されることが求められているときには何が必要か?
私の経験から言うと,アセスメントのプロセスは通常,文化のほとんどが変革プロセスを支援することをあきらかにする。しかし文化の側面が障壁となることもあり,文化そのものの変革プログラムが必要となることもあり得る。たとえばアルファパワー社の従業員は,環境災害を見つけ,解決することを求められた。これは文化の変革と認識され,そこでは従業員が違った自己イメージと,自分たちの基本的な職務がどのようなものであるかについて別の種類の理解を持つように求められた。

もし新しく求められた行動にサブグループの規範を変えることが含まれる場合,しかも経営陣がそのサブグループに対してほとんどコントロールを及ぼすことができない場合には,さまざまな手段を用いた長期にわたる変革プロセスが必要となるかも知れない。たとえばアルファパワー社のケースでは,その究極的なゴールにおいては,従業員がお互いをモニターし合いながら,もし安全や環境を脅やかす災害が発見された場合にはお互い同士を報告することが求められた。しかしこのゴールは,労働組合のサブカルチャーが抱く,「同僚同士はお互いを裏切ってはならない」とする深部の前提認識に抵触した。しかしこの企業の究極的なゴールは,すべての従業員がこの分野で完全に責任を負い,同僚によって示された危険な行動は決して隠さないという点で従業員に依存するというものであった。この結果,労働組合の参加を巡って築かれた長期にわたる変革プログラムおよび褒賞と規律の両面を含む変革が必要となったのだ。

サブカルチャーの一部の側面の変革を含むこのようなプログラムでは長年にわたる,さまざまな強力な努力が必要とされる。そこでは「文化の変革」を宣言するだけでは全く意味がない。変革リーダーは,新しい行動がどのようなものかを具体的に説明し,さらに彼らの行動の直接的なコントロール下にある文化の側面と,サブカルチャーに属するメンバーの行動に変革を必要とする文化の側面を明確に区分するまで文化の変革を開始することは叶わない。

組織のなかでこのようなプロセスがどのように進むかについてはさまざまな変数が含まれる(この点については次章で詳しく紹介する)。たとえばさまざまなサブカルチャーが包含される,マクロカルチャー(たとえば国)の前提認識が,危機またはビジネス上の問題と定義されるものに影響を及ぼすという文化の前提認識が,もしほかのビジネスプロセスが解決されれば,文化そのものは一切変革する必要がないということをあきらかにすることも起こってくる。文化変革ゴールはそれを成功のうちに達成するために何年もかかるといったさまざまな変数や条件が含まれているのだ。したがってこれらの多岐にわたる課題を敢えて一般化せずに,次章で私はこれまで私が関わってきた。それ故何が起こったかを理解できているいくつかの短いケースとひとつの長いケースを紹介したいと考えている。文章で書かれたケースは解釈することが難しい。何故なら,ほかの著者やコンサルタントがストーリーを語る際に私と同様な定義をどの程度使っているのかを理解できないからだ。たとえばガースナーのIBMの回復における彼の貢献について,IBMにおいて大規模な文化の変革が達成されたと称賛されることが多い。しかし彼の記述をさらに注意深く読むと,彼はIBMの経営陣に,彼らがIBMのルーツ,すなわち効果的なセールスとマーケテイング文化に立ち戻る必要があることを認識させたケースとして読み取ることができる(Gerstner,2002)。つまり経営陣は道を踏みはずし,倣慢に振る舞っていた状況で,実はその文化には強味が伴っていることが再認識された。したがって読者が次章のケースを読み進めるとき,組織変革は決して文化変革そのものでないことが多く,たかだか文化の一部の側面の変革であることが多いという事実をしっかり認識して頂きたい。

本章の要約と結論
文化のアセスメントによっていくつかの結論が導きだされる。
・文化は,個人とグループに対する面接プロセスを通じたさまざまな手段で評価することが可能だ。しかしグループによる診断のほうが,妥当性と効率性の側面ではるかにすぐれた方法と言える。このようなアセスメントは組織内の人材によってほぼ半日で効果的に実施することが可能だ。

・文化のアセスメントは,組織の問題や課題と結びつけて考えられない限り,ほとんど価値が認められない。言い換えると,文化そのものを評価してもあいまいな理解しか得られず,そのうえ退屈で,無用のものと感じられる。一方組織が目的,新しい戦略,解決すべき問題,あるいは変革の計画を持っている場合には,いかに文化がそれらの課題に影響を及ぼしているかを理解することは有用であるだけでなく,必要なものとなる。その課題は組織の効果性に関係があるだけに留まらず,できるだけ具体的に記述されていなければならない。文化そのものが課題,あるいは問題であると単純に決めつけることはできない。むしろ文化は,いかに組織が業績を上げるかという側面に影響を及ぼす存在であり,したがって当初のフォーカスはつねに業績を向上させることが目的であるという点に当てられるべきなのだ。

・アセスメントプロセスはまず文化に伴う前提認識をあきらかにしなければならない。そのあとこれらの前提認識を,組織が実施しようとしている目標に対して,強味となっているのか,制約するものとなっているかという視点からアセスメントを進めなければならない。組織のほとんどの変革努力のなかで文化を変革するために,その制約条件を除去する方法よりも,文化の強味を伸ばす方法のほうがはるかに簡単に実施できる。

・いかなる文化アセスメントプロセスにおいてもサブカルチャーの存在に注目しておかなければならない。また組織が成し遂げようとしていることに対するこれらのサブカルチャーの働きの程度をたしかめるためにサブカルチャーに対する別個のアセスメントを実施することも考慮にいれておくべきだ。

・文化のアセスメントを価値あるものにするためには,前提認識のレベルにま385で踏み込むことが求められる。クライアントのシステムが前提認識のレベルに到達できないときには,つねに現れてくる,信奉された価値観と観察された行動上の人工の産物,すなわち現実の姿との間に生ずる差異をきちんと説明することができない。

本章で紹介した10のステップを踏むグループプロセスはきわめて短時間のうちに終わらせることができることに注目すべきだ。数時間のうちにグループは,彼らの主要な前提認識がどのようなものかをおおむね理解できる。ファシリテーター自身はその文化を理解するに至らないかも知れないけれども,彼が専門の研究者でない限り,それはあまり問題とはならない。というのはそのグループが自分たちの作った変革計画にもとづいて前進することが可能になったからである。もし外部のコンサルタント/リサーチャーにとってその文化をさらに詳しく説明できることが重要な場合には,付加的な観察,参加者の観察,さらに進んだグループのアセスメントが必要となり,その結果完全な絵姿が描けるようになる。

次章では組織変革プロセスにおける文化が果たす役割を解明する,いくつかの具体例を紹介する。そこでこのアセスメントプロセスが変革プログラムの全体に支援を提供できるポイントを併せて説明する。
(つづく)平林

-基礎編・理論編

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