基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 178 | テクノファ

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私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認定を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしました。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。
今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索したいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
このケースで学ぶべきポイント
このケースでは,文化を分析し,文化に伴う前提認識をマネジすることに関して次のような重要なポイントが指摘できる。
・外部のファシリテーターからの助力を受けてシニア経営グループは,特定のビジネス上の問題に関連する主要な前提認識を分析することが可能であった。このケースでは,より中央集権的な,共通の価値観や理念を全社的に推し進めるべきか否かの問題であった。

・文化の分析からは,参加者によって判断される,特定のビジネス上の問題に強く関わっている,いくつかの前提認識が解明された。しかし人工の産物にあきらかに現れている文化に伴う,そのほかの側面は,参加者によって適切でないと判断された。どの文化もほとんどすべてを包含する前提認識を備えていることから,アセスメント手法を通じて,参加者が文化のどの側面が適切であるのかについて優先順位をつけ,発見することができるようにするこ とが重要であった。

・このケースではビジネス上の問題の解決に,全く文化の変革が必要とされなかった。実際にこのグループは文化上のもっとも重要な前提認識のひとつを再確認したのだ。しかし同時にグループは将来のアクションとしていくつかの新しい優先順位も決定した。つまり,いくつかのビジネス分野に共通のポリシーや実践の方法を開発することと,一方で各事業部門ごとに強力なリーダーシップを築くという双方向のアクションであった。多くの場合,本当に求められていることは,必ずしも文化の変革ではなくて,ある特定の文化の関係のなかに含まれるビジネスのプラクティス(実践の方向)の変革であることも多いのだ。

例3:米国陸軍エンジニア部門 ― ミッションの再評価
このケースではきわめて異なった種類のある組織における文化分析のプロセスを紹介する。私は1986年に,米国陸軍のエンジニア部門の長期戦略計画プロセスの一環として,その部門の文化の分析を依頼された。そこでの問題意識は,彼らのミッションが変化しており,その将来の財源がどうなるかについて不安が生じていた点に求められた。25人ほどのシニアマネジャー(軍人と民間人を含む)が出席し,この部門の文化について,次の諸点を分析する目的が掲げられていた。(1)急速に変化する環境に対し適応性を保つ,(2)その文化に強味と誇りの源泉として保たれている側面を保全する,(3)組織の進化を現実的にマネジする。出席したマネジャーは,この部門の基本的なミッションが過去数十年の間に変化しており,その存続は自部門の強味と弱味を正しく再評価することに懸っていることをよく理解していた。

われわれは10ステップのアセスメントの段階を忠実にたどって,議論を通じて次のようなテーマを選びだし,さらにそのグループが実際にそれぞれの側面でどのような経験を持ってきたかにもとづいて,主要な価値観を基本的な考え方として要約した。
・われわれのミッションは,河川コントロール,ダム,橋等に伴う問題を見かけ上でなく,実質的に解決することである。しかし環境に対するわれわれの反応においてはその特定のプロジェクトの範囲内でできる限り,審美的な要求にも応えるものでなければならない。

・われわれはつねに危機に対応し,それが可能なように組織化を進める。

・われわれは伝統を重んじ,自らの領域を守り続ける。しかし冒険主義(新しい試み)の価値も認める。

・権限分散を進め,意思決定は現場において行われることを期待する。しかし同時に地域担当エンジニアの役割を通じて現場を厳格にコントロールすることを目指す。

・数字を重視し,コスト効果性の分析を通じて運用する。クオリティーは測定が困難である場合もあるからだ。

・われわれには失敗が許されないのでリスクは極力排除する。したがって入念過ぎるデザインを嫌わず,つねに安全で,確立されたテクノロジーのみを活用する。

・つねにプロフェッショナルとしてのインテグリティー(統合性)を保ち,必要であれば「No」と言う。

・公共からの批判は最小限に留めるよう努める。

・外部の現象に反応できるように努める。しかし同時にわれわれの独立性とプロフェッショナルとしてのインテグリティーの保全に努める。

・われわれは米国以外のプロジェクトの実行を通じて,外国のポリシーの実施機関となることも奨励される。

このグループは,河川コントロールという伝統的なミッションはおおむね達成されているが,下院における変化を続ける政策のなかで,どのようなプロジェクトが今後も予算を確保し続けるのかが予測しにくくなっている,という問題を導きだした。財政上のプレッシャーが高まり,数多くのプロジェクトが地方自治体とのコスト分担の形に移行していくなかで,その協力が不可欠となる側面において対応できるか否かに確信が持てなくなっていたのだ。文化に関する討議をへて,将来どのようなことが起こってくるかについて有効な視点が浮かび上がってきたけれども,将来においてどのような具体的な戦略を追求すべきかについては確たる見通しはなかった。

このケースから学ぶべきポイント
このケースもほかのケースと同様に,このグループを文化の諸側面を診断する方向に導くことができるということを証明している。またこのエクササイズが,戦略的にどのようなことが可能かを明確にする際に有効な手段となり得ることも示している。さらに文化のアセスメントは,たとえそれが当初の目的に含まれていたとしても,必ずしも文化の変革に結びつくものでないことも併せて示唆している。

例4:アップルコンピューター ― 長期的プランニングのプロセスの一部としての文化アセスメント
アップル社(Apple)は1991年に,人材マネジメントの課題にフォーカスして,長期的プラニング・プロセスの一環として文化のアセスメントを実施することを決断した。ここでは,5年先にこの企業はどこまで大きくなっているか,どのような人材が必要となるのか,異なったサイズのシナリオに応じてどこに本社を置くべきか,が検討されることとなった。数人のラインマネジャーと数人の人材マネジメント部門のスタッフによって構成された10人規模のワーキンググループが組織された。このグループには,いかにアップルの文化がその成長に影響を及ぼし,さらに将来にアップルに引きつけられる人材の内容にどのようなインパクトを与えるかを解明するタスクが割り当てられた。人材マネジメント担当の副社長が私の文化に関わる仕事を知っていたために,このワーキンググループにコンサルタントとして参加して欲しいと依頼してきた。そして彼自身はグループの長の役割を担った。

最初の計画では,会社への報告会議が6か月後に迫っていることから,まずプラニングに関する課題を明確にしたうえで,詳しい作業はほかのコミティーに割り振るというものであった。このうちのひとつのグループにはアップル文化の将来の成長へのインパクトを分析する課題が割りつけられた。私の役割はこの作業を組織化することをたすけ,さらにこのグループが効果的に文化を学習する方法を教え,併せて文化サブコミティーに対してこの作業を通じてコンサルテーションを提供することであった。
(つづく)平林

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