実践編・応用編

都道府県医療計画におけるPDCAサイクル推進|テクノファ

投稿日:2022年7月6日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。

(2)都道府県医療計画におけるPDCAサイクル推進
都道府県は、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために、国の定める基本方針に即し、地域の実情を踏まえつつ、「医療計画」を策定しています。
医療計画においては、五疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞*1、糖尿病、精神疾患)・五事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含みます。))及び在宅医療のそれぞれについて、医療資源・医療連携等に関する現状を把握し、課題の抽出、数値目標の設定、医療連携体制の構築のための具体的な施策等の策定を行い、その進捗状況等を評価し、見直しを行うことでPDCAサイクルを推進することとしています。

2020(令和2)年1月から発生した新型コロナウイルス感染症への対応において、感染症患者の入院体制の確保等を進めるに当たり、広く一般の医療提供体制に大きな影響が生じました。こうした状況を受けて、同年10月から、「医療計画の見直し等に関する検討会」において、新型コロナウイルス感染症対応を踏まえた今後の医療提供体制の構築に向けた議論が重ねられ、同年12月に同検討会で取りまとめられた報告書では、新興感染症等の感染拡大時に、対応可能な医療機関や病床の確保等、医療提供体制に関して必要な対策が機動的に講じられるよう、基本的な事項について、あらかじめ地域の行政・医療関係者の間で議論し、必要な準備を行うことが重要であるとの観点から、医療計画の記載事項に「新興感染症等の感染拡大時における医療」を追加することが適当とされたところであり、これに対応するための医療法改正法案を2021(令和3)年2月2日に第204回通常国会へ提出し、5月21日に成立しました(令和3年法律第49号)。
*1 第7次医療計画では、「心筋梗塞等の心血管疾患」という表現に変更しました。

(3)地域医療連携推進法人の認定状況
地域医療連携推進法人制度の概要として、以下のことが挙げられています。
・医療機関相互間の機能分担及び業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢としての、新たな法人の認定制度
・複数の医療機関等が法人に参画することにより、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保すること。

「『日本再興戦略』改訂2014」(平成26年6月24日閣議決定)等を受けて、「医療法人の事業展開等に関する検討会」(2013(平成25)年11月~2015(平成27)年2月)において、地域医療連携推進法人制度の創設について議論され、2015年2月に取りまとめが行われました。これらの議論を踏まえて、「医療法の一部を改正する法律案」が同年4月に国会に提出され、同年9月に成立し公布されました。

地域医療連携推進法人制度は、医療機関相互間の機能の分担や業務の連携を推進することを目的とし、地域医療構想を達成するための一つの選択肢として創設されたものであります。統一的な医療連携推進方針(病院等の連携推進の方針。以下「方針」といいます。)を決定し、医療連携推進業務等を実施する一般社団法人のうち医療法上の非営利性の確保等の基準を満たすものを都道府県知事が認定します。方針はホームページで公表することとされているほか、方針に記載された内容の実施状況について、法人内に設置する、地域の関係者で構成される地域医療連携推進評議会において評価することとなっており、地域の関係者の意見が法人の運営に反映される仕組みとなっています。2017(平成29)年4月から制度が施行され、2021(令和3)年4月1日現在、全国で25法人が認定を受けています*2。地方公共団体等の公的主体が中心となっているものや、大学病院や医療法人等の民間主体が中心となっているものなど地域により様々であるが、医療従事者の共同研修の実施や医薬品等の共同購入の調整等といった業務が多くの法人で実施されているなど、それぞれの地域事情に応じた連携の推進が図られています。
*2 認定された地域医療連携推進法人に関する各都道府県のホームページへのリンク集 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/ bunya/0000177753.htm

(4)地域医療体制の整備
1 救急医療
救急医療は、国民が安心して暮らしていく上で欠かすことのできないものです。このため、1977(昭和52)年度から、初期救急、入院を要する救急 (二次救急)、救命救急(三次救急)の救急医療体制を体系的に整備してきました。

しかし、救急利用の増加に救急医療体制が十分に対応できず、救急患者が円滑に受け入れられない事案が発生しています。このような状況を改善するため、2020(令和2)年度予算において、 ①重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる救命救急センターに対する支援、②地域に設置されているメディカルコントロール協議会に医師を配置するとともに、長時間搬送先が決まらない救急患者を一時的であっても受け入れる二次救急医療機関の確保に対する支援、③急性期を脱した救急患者の円滑な転床・転院を促進するためのコーディネーターの配置に対する支援等を行いました。

また、消防と医療の連携を強化し、救急患者の搬送・受入れがより円滑に行われるように、各都道府県において、救急患者の搬送及び医療機関による当該救急患者の受入れを迅速かつ適切に実施するための基準を策定し、これに基づいて救急患者の搬送・受入れが行われているところです。さらに、ドクターヘリを用いた救急医療提供体制を全国的に整備するため、補助事業を行っており、2021(令和3)年3月末現在、43道府県で53機のドクターヘリが運用されています。

2 小児医療
小児医療は、少子化が進行する中で、子どもたちの生命を守り、また保護者の育児面における安心の確保を図る観点から、その体制の整備が重要です。このため、休日・夜間における小児の症状等に関する保護者等の不安解消等のため、小児の保護者等に対し小児科医等が、全国同一の短縮番号#8000により、電話で助言等を行う「子ども医療電話相談事業(#8000事業)」を全47都道府県で実施しており、引き続き地域医療介護総合確保基金を活用して支援を行うこととしています。#8000相談実績(平成16年度~平成30年度比較)も年々上昇しています。
また、小児初期救急センター、小児救急医療拠点病院、小児救命救急センター等の小児の救急医療を担う医療機関等の体制整備に対する支援等を行っています。

3 周産期医療
周産期医療については、国民が安心して子どもを産み育てることができる環境の実現に向け、各都道府県において、地域の実情に応じた周産期医療体制を計画的に整備しています*3。リスクの高い妊産婦や新生児等に高度な医療が適切に提供されるよう、周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターを整備し、地域の分娩施設との連携を確保すること等により、周産期医療体制の充実・強化を進めています。これに対し、厚生労働省においては、①周産期母子医療センターの母体・胎児集中治療室 (MFICU*4)、新生児集中治療室(NICU*5)に対する支援、②NICU等の長期入院児の 在宅移行へのトレーニング等を行う地域療育支援施設を設置する医療機関に対する支援、 ③在宅に移行した小児をいつでも一時的に受け入れる医療機関に対する支援を行っているほか、④2016(平成28)年度から、災害時に都道府県が小児・周産期医療に係る保健医療活動の総合調整を適切かつ円滑に行えるよう支援する「災害時小児周産期リエゾン」の養成を目的とした研修を実施しています。また、2018年度には、災害時小児周産期リエゾンの運用、活動内容等の基本的な事項について定めた「災害時小児周産期リエゾン活動要領」を作成し、周知しました。さらに、2016年度から、分娩取扱施設が少ない地域において、新規に分娩取扱施設を開設する場合等への施設整備費用支援事業、2017(平成29)年度から、設備整備費用支援事業及び、地域の医療機関に産科医を派遣する病院等への支援事業を実施しています。加えて、2020年度からは、妊婦が安心安全に受診できる医療提供体制を整備するため、産科及び産婦人科以外の診療科の医師に対する研修の実施や医師が妊婦の診療について必要な情報を得られる相談窓口の設置に対する財政支援を行っています。
*4  MFICU:「Maternal Fetal Intensive Care Unit」の略。
*5  NICU:「Neonatal Intensive Care Unit」の略。

4 災害医療
地震等の災害時における医療対策として、阪神・淡路大震災の教訓をいかし、災害発生時の医療拠点となる災害拠点病院の整備(2021年4月1日現在 759か所)、災害派遣医療チーム(DMAT*6)の養成等を進めてきました(2021年4月1日現在1,747チームが研修修了)。また、東日本大震災や平成28年熊本地震の経験を踏まえ、災害発生時に必要となる都道府県の総合調整機能やコーディネート機能の確保等の整備に取り組んできました。また、災害拠点病院においては、DMATの保有をはじめ、施設の耐震化や自家発電機、衛星(携帯)電話の保有、3日分の食料、水、医薬品等及び3日分程度の自家発電機用燃料の備蓄等の整備に加え、被災後、早期に診療機能を回復できるよう業務継続計画(BCP)の策定及び当該計画に基づく研修・訓練を実施すること等の取り組みについても災害拠点病院の指定要件として含めるよう、改正を行ってきました。また、「日本DMAT活動要領」に基づき、2014(平成26)年度より、統括DMATをサポートする要員を確保する観点から、DMAT事務局、DMAT都道府県調整本部等での本部業務や、病院支援、情報収集等を担うサポートを専門とするロジスティック担当者からなる専属チームの養成を行っています。

令和2年7月豪雨においては、熊本県内外からDMATが約1か月の間に117チーム派 遣され、被災者に迅速な医療提供を行うとともに、浸水により搬送が必要となった患者等(約180名)について搬送調整等を行いました。また、DMATロジスティックチームとして74名が派遣され、熊本県保健医療調整本部等において本部業務などを行うなどの支援を行いました。

東日本大震災時に多数の心のケアチームが被災地に派遣された経験を踏まえ、集団災害発生時における精神保健医療への需要拡大に対応するため、災害派遣精神医療チーム (DPAT*7)の養成を進めてきました。2018(平成30)年3月に一部改正された「災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領」に基づき、効率的な派遣システムの構築・運用のため、DPAT事務局の整備や、専門的な研修・訓練によるDPATの全国における養成等を行っています。加えて、東日本大震災や平成28年熊本地震において、被災した精神科病院からの患者受入や精神症状の安定化等について、災害拠点病院のみでは対応が困難であったことを踏まえ、災害時における精神科医療を提供する上で中心的な役割を担う災害拠点精神科病院の整備を進めています。

近年、被災後、早期に診療機能を回復するために業務継続計画(BCP)の考え方に基づいた災害対策マニュアルの策定の重要性が改めて指摘されており、これらを踏まえて2017年度からBCP策定の促進を目的とした研修を実施し、これまでに770医療機関、1,397名が受講しています(2021年4月1日現在)。 また、災害時に様々な救護班の派遣調整業務等を行う地域の医師等(災害医療コーディネーター)の養成については、災害時に地域単位の細やかな医療ニーズ等に対応するために、都道府県単位に加えて、地域単位で実施する研修を支援しています。
*6 DMAT:「Disaster Medical Assistance Team」の略。

災害拠点病院等において、原則4名の医師・看護師等により構成され、災害発生後直ちに被災地に入り、被災地内におけるトリアージや救命処置、被災地内の病院の支援等を行うものです。出動の際には、独立行政法人 国立病院機構本部DMAT事務局が、DMAT派遣の要請等について厚生労働省の本部機能を果たし、活動全般についての取組みを行うとともに、被災地域の各都道府県下に、DMAT都道府県調整本部が設置され、管内等で活動する全てのDMATの指揮及び調整、消防等関 連機関との連携及び調整等を行います。その際、一定の研修を修了したDMAT隊員である統括DMATが、責任者としてDMATの指揮、調整等を行います。

*7 DPAT:「Disaster Psychiatric Assistance Team」の略。
自然災害や犯罪事件・航空機・列車事故等の集団災害が発生した場合、被災地域の精神保健医療機能が一時的に低下し、さらに災害ストレス等により新たに精神的問題が生じる等、精神保健医療への需要が拡大します。このような場合に、被災地域の精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制との連携、各種関係機関等とのマネージメント、専門性の高い精神科医療の提供と精神保健活動の支援活動を行うために、都道府県及び政令指定都市(以下「都道府県等」といいます。)によって組織される、専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームがDPATです。
(つづく)K.I

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