新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。
4 2021(令和3)年度薬価改定
「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(平成28年12月20日内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、財務大臣、厚生労働大臣決定)において「市場実勢価格を適時に薬価に反映して国民負担を抑制するために、全品を対象として、毎年薬価調査を行い、その結果に基づき薬価改定を行います。そのため、(中略)価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う。」 とされており、また、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)においては「2021年度の薬価改定については、骨太方針2018等の内容に新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して、十分に検討し、決定する」こととされました。
これらを踏まえて、「毎年薬価改定の実現について」(令和2年12月17日内閣官房長官、財務大臣、厚生労働大臣合意)において、毎年薬価改定の初年度である令和3年度薬価改定について、令和2年薬価調査に基づき、以下のとおり実施することとされました。
改定の対象範囲については、国民負担軽減の観点からできる限り広くすることが適当である状況のもとにおいて、平均乖離率8%の0.5倍~0.75倍の中間である0.625倍(乖離率5.0%)を超える、価格乖離の大きな品目を対象とすることとされました。
また、新型コロナウイルス感染症による影響を勘案し、令和2年薬価調査の平均乖離率が、同じく改定半年後に実施した平成30年薬価調査の平均乖離率を0.8%上回ったことを考慮して、これを「新型コロナウイルス感染症による影響」と見なした上で、「新型コロナウイルス感染症特例」として薬価の削減幅を0.8%分緩和することとされました。
第4節 地域包括ケアシステムの構築と安心で質の高い介護保険制度
1 介護保険制度の現状と目指す姿
2000(平成12)年4月に社会全体で高齢者介護を支える仕組みとして創設された介護保険制度は今年で22年目を迎えた。
介護サービスの利用者は在宅サービスを中心に着実に増加し、2000年4月には149万人であったサービス利用者数は、2020(令和2)年4月には494万人と、約3.3倍になっており、介護保険制度は着実に社会に定着してきています。
高齢化がさらに進展し、「団塊の世代」の全員が75歳以上となる2025(令和7)年の日本では、およそ5.5人に1人が75歳以上高齢者となり、認知症の高齢者の割合や、世帯主が高齢者の単独世帯・夫婦のみの世帯の割合が増加していくと推計されています。特に、首都圏を始めとする都市部では急速に高齢化が進むと推計されています。
そこで、このような社会構造の変化や高齢者のニーズに応えるために「地域包括ケアシステム」の実現を目指しています。「地域包括ケアシステム」とは、地域の事情に応じて高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制のことをいいます。高齢化の進展のスピードや地域資源の状況などは地域によって異なるため、それぞれの地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの構築を可能とすることが重要です。
また、介護保険制度が定着し、サービス利用者数の増加に伴い、介護費用が増大しています。介護保険制度開始当時の2000年度は3.6兆円だった介護費用は、2019(令和元)年度には10.8兆円となっており、高齢化がさらに進展し、団塊の世代の全員が75歳以上となる2025年には、介護費用は約15.3兆円*13になると推計されています。介護費用の増大に伴い、介護保険制度創設時に全国平均3,000円程度であった介護保険料は、現在約5,900円になっており、2025年には約7,200円になると見込まれています。
このような介護保険制度の状況に加えて、今後、いわゆる団塊ジュニア世代の全員が65歳以上となる2040(令和22)年には、高齢人口がピークを迎えるとともに、介護サービス需要がさらに増加・多様化し、現役世代(担い手)の減少も顕著になる中、制度のさらなる見直しを進める必要があり、社会保障審議会介護保険部会での議論等を踏まえて、「地 域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」を第201回通常国会に提出をし、2020年6月5日に成立し(令和2年法律第52号)、2021(令和3)年4月より順次施行しています。この法律には、地域の特性に応じた認知症施策や介護サービス提供体制の整備等の推進並びに医療・介護のデータ基盤の整備の推進、介護人材確保及び業務効率化の取組みの強化等を盛り込んでおり、地域共生社会の実現に向けた取組みを進めていくこととしています。これらを踏まえて、2021年度からの第8期介護保険事業計画においては、以下のような事項を盛り込んでいます。
ア 2025・2040年を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備
イ 地域共生社会の実現
ウ 介護予防・健康づくり施策の充実・推進
エ 有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化
オ 認知症施策の推進
カ 地域包括ケアシステムを支える介護人材確保及び業務効率化の取組みの強化
キ 災害や感染症対策に係る体制整備
2 地域包括ケアシステムの構築
(1)介護予防・健康づくりの推進
介護予防は、高齢者が要介護状態等になることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止を目的として行うものであります。
機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく、地域づくりなどの高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めたバランスのとれたアプローチを行うことが重要との考えに基づき、年齢や心身の状況等によって分け隔てることなく、住民主体の通いの場を充実させて、人と人とのつながりを通じて、参加者や通いの場が継続的に拡大していくような地域づくりを市町村が中心となって推進しています。
通いの場がある市町村は、62.2%(2013(平成25)年度)から95.9%(2019(令和 元)年度)となり、通いの場の箇所数は43,154か所(2013年度)から128,768か所 (2019年度)へと増加の傾向にあります。また、高齢者人口に占める参加者の割合は6.7%(2019年度)であり、都道府県別にみると地域差がある状況です。このため、厚生労働省では、全国で取組みを更に広げていく観点から、通いの場の好事例の紹介や、企業、団体、自治体等における介護予防・高齢者生活支援に資する優れた活動等の奨励・普及を目的とした表彰等を行っています。
2015(平成27)年度以降、前述のとおり通いの場の取組みを中心とした一般介護予防事業等を推進していて、一部の自治体では、その取組みの成果が現れてきています。一般介護予防事業等の取組みは、介護予防に加え、地域づくりの推進という観点からも保険者等の期待の声も大きく、また、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施の動向も踏まえて、更なる推進が期待されています。
このような状況を踏まえて、厚生労働省では、2019年5月から「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」を開催し、一般介護予防事業等の今後求められる機能や PDCAサイクルに沿った更なる推進方策等の検討を集中的に実施し、12月に取りまとめを公表しました。本取りまとめにおいては、
・通いの場の取組みを始めとする一般介護予防事業は、住民主体を基本としつつ、効果的な専門職の関与も得ながら、従来の介護保険の担当部局の取組みにとどまらず多様な関係者や事業等と連携し、充実を図ることが必要です。
・また、こうした取組みをより効果的・効率的に行うためには、PDCAサイクルに沿っ た推進が重要であり、市町村・都道府県・国がそれぞれの役割を最大限に果たすべき。とされました。同取りまとめを踏まえて、第8期介護保険事業(支援)計画の実施において、引き続き市町村における地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組みを推進しています。
(2)自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組みの推進
高齢化が進展する中で、地域包括ケアシステムを推進するとともに、制度の持続可能性を維持するためには、保険者である市町村の保険者機能を強化し、高齢者の自立支援・重度化防止に向けた取組みを推進することが重要であります。
このため、全市町村が保険者機能を発揮し、自立支援・重度化防止に取り組むよう、
①データに基づく課題分析と対応
②適切な指標による実績評価
③取組み実績に応じた市町村・都道府県に対する財政的インセンティブの付与
という仕組みを「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第52号)により制度化することとしました。
また、市町村の人員体制やノウハウの蓄積等の状況は地域によって様々であるため、厚生労働省や都道府県が積極的かつ丁寧に支援していくことが必要です。具体的には、都道府県が市町村を支援することを法律上に明記し、都道府県による市町村職員に対する研修の実施、医療職等の派遣に関する関係団体との調整等を行うこととしました。また厚生労働省は、市町村が多角的に地域課題を分析することを支援するとともに、都道府県職員に対して研修等を行い、市町村の取組みを支援していくこととしました。
さらに、財政的インセンティブの付与については、2018(平成30)年度より保険者機能強化推進交付金を創設し、2020(令和2)年度には新たに介護保険者努力支援交付金を創設しました。これらの交付金は、保険者等の様々な取組みを評価できるよう、客観的な指標を設定した上、交付を行うこととしています。各保険者等には、当該交付金を活用し、地域支援事業、市町村特別給付及び保健福祉事業等を充実し、高齢者の自立支援、重度化防止及び介護予防等に必要な取組みを進めていくことが期待されています。
(つづく)I.K