新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。
(2)介護ロボット
生産年齢人口が減少していく一方、介護ニー ズが増大していく中で、介護人材の確保は喫緊の課題であり、介護職員の負担軽減を図りつつ質の高いサービスを効率的に提供することが求められています。
厚生労働省においては、経済産業省と連携し、移動介助や見守りなど重点的に開発等の支を行う分野を定め、介護ロボットの実用化や 普及の促進に取り組んでおり、2017(平成29)年10月には、この重点分野の再検証を行い、転倒を予防する装着型の移動支援機器や排泄を予測してトイレへ誘導する機器などを新たな支援対象として追加しました。
また、「介護ロボット開発等加速化事業」を2016(平成28)年度から実施し、介護現場のニーズを介護ロボットの開発内容に反映させることに併せ、効果的な介護技術を構築するなど、各段階で必要な支援を行ってきたところであり、2020(令和2)年度は①介護施設等(ニーズ側)・開発企業等(シーズ側)の一元的な相談窓口の設置、②リビングラボのネットワークの構築、③介護現場における実証フィールドを整備しました。2021(令和3)年度は上記のプラットフォームについて相談窓口・リビングラボの増設を行い、継続して取り組むことにより介護ロボットの開発・普及を加速化します。
更に、2021年度介護報酬改定においては、テクノロジーの活用により介護サービスの質の向上及び業務効率化を推進していく観点から、見守り機器やインカム等の使用、安全体制の確保や職員の負担軽減等を要件に、介護老人福祉施設における夜勤職員配置加算や夜間の人員配置基準(従来型)の見直し等を行いました。引き続き、施行後の状況を把握・検証するとともに、実証データの収集に努めながら、必要な対応や、介護サービスの質や職員の負担に配慮しつつ、更なる生産性向上の方策について、検討していきます。
(3)介護事業所のICT化
介護事業所におけるICT化を全国的に普及促進するには、データ連携を行うための フォーマットの統一が重要であることから、ICTを活用した介護事業所と医療機関間の 情報連携を推進するため、入退院時のデータ連携標準仕様に加え、訪問看護事業所が有する看護情報のデータ連携に必要な標準仕様を作成しました。
また、2019(令和元)年度には、介護分野におけるICT化を支援するため、介護事業所が介護ソフトやタブレットを導入する際の費用の一部を助成する事業を開始し、2020(令和2)年度からは、補助上限額の引き上げや補助率の柔軟化など、助成内容の拡充を行っています。
(4)介護分野の文書負担軽減
少子高齢化に伴い介護の需要が増大する一方で、人的制約が高まる中、介護分野の文書の作成等に関する負担軽減は、介護事業者にとっても自治体にとっても重要な課題であり、2019年(令和元年)8月に設置した「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」や「介護給付費分科会」において、文書負担軽減について検討を行きました。
2020(令和2)年度においては、行政が求める文書の押印の廃止や簡素化・標準化等の負担軽減策の検討を行ったほか、利用者等への説明・同意や諸記録の保存・交付等について電磁的な対応を原則認めることとする省令改正等を行いました。 引き続き、介護現場の負担軽減に向け、文書の簡素化・標準化等の負担軽減策の検討等を行っていきます。
5 介護報酬改定
(1)2019(令和元)年度介護報酬改定
2019年度の介護報酬改定においては、介護職員の処遇改善について、これまで累次にわたる取組みに加え、2019年10月からは、「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月8日閣議決定)に基づき、満年度で公費1000億円を投じ、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を実施しています。また、2019年10月に実 施された消費税率10%への引上げに伴い、介護サービス施設・事業所に消費税に係る実質的な負担が生じないよう、介護報酬への上乗せ等を行いました。
(2)2021(令和3)年度介護報酬改定
2021年度の介護報酬改定について、全体の改定率は、介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しつつ、物価動向による物件費への影響など介護事業者の経営を巡る状況等を踏まえ、2021年9月末までの6ヶ月間の特例的な対応を含め、0.70%となりました。
また、改定にあたっては、感染症や災害への対応力強化や地域包括ケアシステムの推進、自立支援・重度化防止の推進、介護人材の確保・介護現場の革新、制度の安定性・持続可能性の確保等の視点を踏まえ、運営基準や単位数、要件等について見直しを行いました。
第5節 福祉・介護人材の確保対策
政府においては、一億総活躍社会の実現を目指し、その重要な政策の柱として、「介護離職ゼロ」を掲げ、介護施設等の整備と併せ、必要な介護人材の確保についても、就業促進、職場環境の改善による離職の防止、外国人材の受入れ環境整備などに総合的に取り組んでいくこととしています。
このため、処遇改善に加えて、
①介護分野への高齢者など介護の未経験者の参入を促すための「入門的研修」の普及や、介護福祉士資格の取得を目指す留学生など外国人材の受入環境の整備等による多様な人材の活用
②ICTや介護ロボットを活用した生産性向上の推進による業務負担の軽減や職場環境の改善などによる働きやすい環境の整備
③介護の仕事の魅力発信など介護人材確保に総合的に取り組んでいます。
また、全国の主要なハローワークに設置する「人材確保対策コーナー」において、医療・福祉分野等のきめ細かな職業相談・職業紹介、求人者に対する求人充足に向けての助言・指導等を行うとともに、「人材確保対策コーナー」を設置していないハローワークにおいても、医療・福祉分野等の職業相談・職業紹介、求人情報の提供及び「人材確保対策コーナー」の利用勧奨等の支援を実施しています。
さらに、各都道府県に設置されている「福祉人材センター」において、離職した介護福祉士等からの届出情報をもとに、求職者になる前の段階からニーズに沿った求人情報の提供等の支援を推進するとともに、当該センターに配属された専門員が求人事務所と求職者双方のニーズを的確に把握した上で、マッチングによる円滑な人材参入・定着支援、職業 相談、職業紹介等を推進しています。
ハロートレーニング(公的職業訓練)においては、人材確保に課題を抱える建設分野、保育分野等に加え介護分野において必要とされる人材の確保に資する訓練を実施しています。
一方、介護労働者は、賃金、労働時間、身体的な負担、精神的な負担に対する不安や不満に端的に示されるように厳しい労働環境にあります。2019(令和元)年度介護労働実態調査によると、労働条件・仕事の負担についての悩み、不安、不満等(複数回答)として、「人手が足りない」が55.7%で最も多く、次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」が 39.8%、「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」が29.5%、「有給休暇が取りにくい」が27.6%の順に多くあげられているなど、特に雇用管理の面で解決すべき課題が多いです。そのため、介護労働者の身体的負担軽減に資する介護福祉機器(移動用リフト等)を新たに導入し適切な運用を行うことにより労働者の離職率を低下させた事業主に対する助成措置や、介護労働安定センターによる事業所の雇用管理改善に関する相談援助等により、介護労働者の雇用管理の改善を図っています。
(つづく)I.K